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チェルニー50番の29番ですが、モルデントの練習となっています。ところが楽譜を見るとターンの練習だと思うんですが、なぜモルデントの練習というタイトルになっているんでしょうか?

「チェルニー50番の29番ですが、モルデン」の質問画像

A 回答 (1件)

装飾音の説明に限らず、現在われわれが目にする音楽理論は近代になって整理、統一されたものなので、最初からはっきりそうと決まっていたというわけではないのです。

装飾音の記号や名称、演奏法は、時代をさかのぼってみていくと非常に複雑な発展史を持っていて、時代、国によってかなり異なります。

日本では、上向きの短い装飾音を「プラルトリラー」、下向きのものを「モルデント」と呼んでいることが多いと思いますが、これはドイツ式です。「プラルトリラー」というドイツ語の用語が使われだすのは1750年ごろ、「モルデント」という名称はもっと古くからあり、記号も奏法も様々です。イタリアや英語圏では、どちらも「モルデント」の名称で呼んでいます。

英語 upper mordent/lower mordent
https://www.daviddarling.info/images_music/upper …

イタリア語 mordente superiore/mordente inferiore
https://antoniopisacane.com/wp-content/uploads/2 …

「ターン」は、現在はドイツ語で「ドッペルシュラーク(Doppelschlag)」といいますが、古い時代は「モルデント」がこの「ドッペルシュラーク」の意味で使われていて、現在のモルデントの記号も、古典派の時代にはまだトリルやターンを表す記号としての用法が混在した状態で残っています。

下は18世紀終わりの声楽に関する本ですが、138ページ最下段の「図10(Fig. 10)」に書かれているのが「ドッペルシュラーク」、ただし、音符のひとつ上の音から始まる「ターン」で、記号は「S」の左右が反転した形です。「図11(Fig. 11)」は「ツヴィッカー」という名称で、記号は現在のモルデント、音符のひとつ上の音が前打音として加わる形で、音の順番は図10の「ドッペルシュラーク」と同じです。そして、「図12 モルデント(Fig. 12 Der Mordent)」には、現代の「ターン」の記号と同じものが書かれており、その奏法も現代の「ターン」に相当します。
https://books.google.co.jp/books?id=SXf6pRo1ozMC …

上は一例で、これ以前の時代はもっといろいろな記号や奏法が混在しています。現在のような「プラルトリラー」「モルデント」「ターン」の定義が定まるのは19世紀後半だと思います。チェルニーの50の練習曲の29番の「モルデント」という表記については、グローヴ音楽辞典(旧版、1900年)に用語の混乱の例として挙げられています。

Certain modern writers have even applied the name of Mordent to the ordinary Turn, as for example Czerny, in his Study op. 740, no. 29;
https://en.wikisource.org/wiki/A_Dictionary_of_M …
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この回答へのお礼

誠にありがとうございます。お詳しいですね。すごい。前にもいろいろ教えてもらったと思います。助かります。

お礼日時:2025/02/16 07:20

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