
No.6ベストアンサー
- 回答日時:
私も梨木香歩は大好きで、今まで読んだ中では『西の魔女が死んだ』が一番気に入ってます。
おばあちゃんの、なんというか人生の叡智みたいなものが、深く深く心に染みてきますよね。あの線の感動を、ということで思い出したのが、マイク・レズニック『キリンヤガ』(ハヤカワSF文庫)です。以前に某所で書評を書いた事があるので、長文ですが以下に引用します。書評中で本文を引用していますが、著作権で認められている引用の範囲内なので削除されることはない……筈。
*
西洋化された故郷ケニアを逃れ、小惑星・キリンヤガでキクユ族の古き伝統を守り暮らす人々。主人公コリバはムンドゥムグ、つまり呪術師としてこの社会の宗教・医学・文化を司っている。<保全局>の気象コントロールの下、象やライオンなど絶滅した動物を除いてケニアの風土を忠実に再現したユートピアの中で、コリバは村人の身に起きる様々な出来事の意味を明かし、子供たちに神話を授け、巻き起こるトラブルを呪術師の智恵で解決してゆく。しかし、いくつかの予兆の後で起きた宇宙船不時着事故をきっかけに、コリバの理想郷は目に見えぬ崩壊を迎えるのだった──。
ケニアの呪術師をモチーフに取り上げた作品としては、直木賞候補にもなった中島らも『ガダラの豚』が思い浮かびます。あの作品でも克明に描かれていたように、ケニアの呪術師がその社会の中で持つ力の源は「言葉」、つまり出来事の意味づけです。薬学知識を持ち神話・伝承に通暁した呪術師は、伝統社会に生きる人々に権威ある指針を与える存在です。主人公コリバもまた、権威ある言葉の力で社会を統べています。
彼は、しかし、単純に非合理的思考に凝り固まった老人として描かれているわけではありません。若い頃ヨーロッパとアメリカの大学に学んで二つの博士号を取得、先頭に立ってユートピア議会へ働きかけキリンヤガ設立認可を取得し、世代交代により地球の事を知らない者が大多数を占めるキリンヤガ社会の中で<保全局>と交信できる唯一のコンピュータを所有する、最も西洋的知識に親しんだ筈の人間なのです。
そんな彼をファンダメンタルな伝統保存に駆り立てるのは、ケニアの近代化の歴史をつぶさに見た経験から来る、「西洋文明はキクユ族を幸福にしない」という確信でした。彼は文化伝承者として、頑なにキクユの風習を守ろうとします。時には、死を待つばかりとなった病人を荒野に放置してハイエナに食べさせたり、逆子で誕生した赤子を「悪魔」として殺したりして、<保全局>との対立も生まれます。そうしたファンダメンタリズムは、彼自身からも大切なものを奪います。このオムニバスで最も美しい物語「空に触れた少女」(これを読むためだけでも本書を買う価値はありますぜ)に描かれた聡明なカマリ。呪術師の後継者として育てようとした少年ンデミ。様々な代償と引き替えに、コリバは古きキクユ族の伝統を小惑星キリンヤガに保持し続けようとします。 けれど、その試みは崩壊を免れませんでした。コリバの語る神話、つまり世界解釈には別の解釈もあり得るのだということに、一部の人々が気づき始めます。それを決定づけたのが、宇宙船不時着によって衝撃的にもたらされた科学知識の即効性でした。人々は科学を信頼し、神ンデミとその言葉を伝える者である呪術師コリバを見捨てます。二十世紀にケニアで起きた近代化と同じことが、その轍を踏むまいとして作られたユートピア・キリンヤガでも繰り返されたのです。
この作品が傑出しているのは、安易に文化伝承者コリバを正しいとも間違っているとも絶対化せず、ただひたすらに文化摩擦の有様を描き続けた点にあります。コリバが人々に与える言葉=意味、社会生活を営むための智恵は、特に物語の前半部においては非常に奥深く優れたものとして描かれます。その一方で、逆子であるというだけで赤子を殺したり、外の世界を知りたいという若者の好奇心を強圧的に摘み取ったりする行為は、私たちの目には誤ったものと映ります。矛盾を孕んだものをあるがままに保持しようとしたコリバ。彼の試みが潰えるのは、不可避の出来事だったのかも知れません。
失意のうちにキリンヤガを去る事を決意したコリバは、宇宙船が迎えに来る場所へ向かう途中で、キマンティ──コリバの神話解釈に別の解釈を見出し、神ンガイの象徴的殺害を果たしてキリンヤガに科学を受け入れる機会を与えたトリックスターともいうべき少年──と出会います。
--------(引用始まり)
「キリンヤガを出ていくの?」
「もとはキリンヤガだった場所を出ていくのだ」
「どこへ行くの? これからなにをするの?」
「どこかよそへ行って、なにかべつのことをする」わたしはあいまいにこたえた。地位を追われたムンドゥムグに行き場所などあるだろうか?
「さみしくなるね、コリバ」
「それはどうかな」
「なるよ」キマンティは本気でいっていた。「キリンヤガの歴史を子どもたちに教えるとき、あなたのことを忘れるわけにはいかないもの。──まちがっていたのはたしかだけど、あなたはやっぱり必要な存在だったんだから」
「わしはそんなふうに記憶されるのかね? 必要悪として?」
「悪いとはいってないよ。まちがってただけだ」
【マイク・レズニック『キリンヤガ』(内田昌之訳/ハヤカワSF文庫)412~413頁から引用】
--------(引用終わり)
敗残の徒として一人地球に帰還したコリバが、人生の最後に何を選ぶのか。それは是非あなたの目で確かめてください。
回答ありがとうございます。とても読み応えのありそうな作品ですね。ワクワクしてきました(^^)じっくり読ませていただきます。本を読むという楽しみがふえてうれしいです。ありがとうございました!
No.5
- 回答日時:
山本鈴美香さんの「エースをねらえ!」(マンガ)をお勧めします。
私は20歳くらいでこのマンガと出会い、それまでのスポ根ものとは全然違うスポーツを通じて人間の成長を描いたこの作品にとても入れ込みました。特に後期のエピソードにある“限界領域児童”の話は、福祉なんて全く興味がない人でも、生きることの意味を考えさせられるものだと思います。回答ありがとうございます。「エースをねらえ!」ってあの有名なテニスのやつですよね?なんとなくしかストーリーを知らないので今度読んでみます。“限界領域児童”って初めて耳にしました。是非とも読んでみたい作品です。
No.4
- 回答日時:
梨木香歩さんの作品を読んだことがないので、お好みにあうかわかりませんが・・
ちょっとホロリといえば、私の中では「川原 泉」です!
「笑う大天使」1-3巻 白泉社 などなど、たくさんの著作がありますが、どれもおすすめです。
よかったら、読んでみてください!(読破ずみだったらごめんなさい~)
私も梨木さんを探して読んでみます(^^)
回答ありがとうございます。なんか題名からしてそそられてしまいますね! いろいろな方のおすすめでホロリとできそうな本が増えてきました(^^)これから本を探して一冊づつゆっくり、じっくり読んでいきたいと思います。ありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
ちょっとふるいけど、巨匠ロバート・A・ハインライン先生の「夏への扉」はいかがでしょうか?
冬になると決まって、夏への扉を探し始める猫のピート。ピートは家にあるたくさんのドアのなかのどれかが夏に通じていると信じているみたい。恋人に裏切られたある冬の日、主人公もまた夏への扉を探し始める…
夏への扉
ハヤカワSF文庫から出ているお話で、とても面白くて最後にはジーンとなって…何度も読み返してしまっています。
回答ありがとうございます。何度も読み返してしまうような本かぁ!読むのが楽しみになってきました。内容も面白そうですね!必ず読ませていただきます。

No.2
- 回答日時:
深見さん、私も好きです。
すごく味のある漫画を描かれますよね。
最近読んだ本でじんわりよかったのが
『月の砂漠をさばさばと』という北村薫さんの本です。
新潮文庫の夏の100冊に選ばれています。
挿絵がおーなり由子さんで、童話みたいなやさしい本ですヨ。
すぐに読めてしまいますが、
なんだかあったかい気持ちになる本でした。
よかったら読んでみてくださいね。
私も梨木香歩さんの本、探してみます!
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