■そもそも、どうして犬は吠えるのか?
犬は歴史的に見ても、人間にとって身近な生き物だ。忠犬という言葉があるように、飼い主に従順なイメージもある。その一方で番犬というと吠えたてる印象だ。犬はどんなときに吠えるのだろうか。
「犬はそもそも吠えることを利用して、人間と共生してきた生き物です。今になってうるさいから吠えるなと言われても、犬からしたら話が違います。例をあげると番犬として吠えることを推奨されてきた日本犬、柴犬や秋田犬などがこれにあたります。これらの犬種は警戒心や恐怖心が強く、見知らぬ犬や人が近づくと吠える場合があります」(寺内さん)
日本家屋の番犬はまさに日本犬のイメージだ。海外種の犬はどうだろう。
「狩猟犬、ビーグルやダックスフント、ジャックラッセルテリアも猟の経過を人に知らせるためのよく響く声の持ち主です。ヨークシャテリアもネズミを獲っていましたので、見えない物音や素早く動くものに対して反応して吠える場合があります。人気の小型犬、チワワ、パピヨン、ポメラニアンなどは部屋や寝室への侵入者の存在にいち早く気づき知らせるのに重宝されていました。物音やチャイム、人の気配に敏感に反応します」(寺内さん)
人の生活の助けとなるよう、場面によって吠えることが好まれていた。逆に吠えない犬種はあるのだろうか。
「フレンチブルドッグ、シーズーなど小型愛玩犬で鼻が低い短頭種の子たちは比較的吠えないことが多いです。反対にボーダーコリー、シェットランドシープドッグ、ウェルシュコーギーは牧畜犬で、大きな相手を誘導するため、吠えやすくなることもあります。これらの犬種は嬉しいときも吠えて反応するのが特徴です」(寺内さん)
犬種によっても吠える対象が違うことがわかった。
■吠えられないためにできることと、吠えられたときの対処法
では、吠えられる人には特徴があるのだろうか。
「犬は飼い主と自分に脅威がおよぶ相手と認識すると吠えたくなります。外観的には、サングラスをかけている、杖を持っている、足音が響く靴を履いている、などがあげられます。また社会化ができていないと、男性、女性、子供、など苦手の範囲が大きくなります」(寺内さん)
見た目以外にも吠えられる理由があるだろうか。
「犬を嫌いな人をかぎ分けて嫌う犬もいます。また、トラウマとして傘でいじめられたことがあれば、傘を持つ人を怖がったりすることもあります。その場合は相手を恐れ、近づかせないために吠えています」(寺内さん)
人の気持ちを察したり、人が知る余地もない、犬自身のトラウマにより吠えていることもあるのだ。では香水などのにおいはどうだろう。
「基本的にツンとくるようなにおいは苦手とされます。柑橘系、酢、湿布、かゆみ止め、整髪料、殺虫剤、香水、アルコール、胡椒、山椒、ミント、マニキュア、除光液、たばこなどを嫌うようです」(寺内さん)
気がつかないうちに、これらのにおいをまとっているかもしれない。もしも吠えられたらどうすればよいだろうか。
「コソコソ隠れていると犬は猜疑(さいぎ)心で吠えます。犬が興奮するような素早い動きもよくありません。吠えられないためには、不用意に近づかないこと、犬と目を合わさないこと、無駄な動きをしないことなどがあります。吠えられると動揺して安心させようとジェスチャーしがちですが逆効果です。もしも吠えられたら、手を体に沿うように下ろし、ゆったり立ちます。そして犬と目を合わさないようにゆっくり後ずさりし、静かにその場を離れるのが安全です」(寺内さん)
犬はささいなことに警戒心を抱き、吠える生き物なのだ。犬と上手に共存するために、今回の記事を参考にしてみてはいかがだろう。
●専門家プロフィール:寺内雄司
八王子市で犬と人の学び場ポケットを運営。家庭犬訓練士やシッター等の資格を持ちドッグトレーニング・ペットシッター・ペットホテル等、飼い主をトータルサポート。ホテルは最高の3つ星受賞。2019年家庭犬訓練競技会グループ優勝。