■他者と交わり、自分自身を受け入れる
はじめに「自己肯定感」という感覚そのものについて解説してもらった。
「文部科学省では2つの側面から捉えるよう定義されています。ひとつは『勉強やスポーツ等の競い合いなどを通じ、努力により得られる達成で育まれる自己肯定感』です」(横山さん)
他者との関わりに加え、自分自身を見つめることも大切だとか。
「もうひとつは『自らのアイデンティティに目を向け、短所を含めた自分らしさや個性を冷静に受け止めることで身に付けられる自己肯定感』です。ほかにも研究者により多くの定義がなされています」(横山さん)
それは、どのような環境で身につくのだろう。
「家庭や学校などの集団の中で、『自分らしさを安心して発揮できる場』があることがポイントです。自分自身のよい面も悪い面も包み隠さず表現できる環境の中で育っていきます」(横山さん)
自己肯定感が高い子どもの特徴を挙げてもらった。
「失敗よりも成功を強く意識し前向きにチャレンジしたり、壁にぶつかっても自分の力で立ち向かっていくことができる子どもです。『自分には価値がある』、『自分は愛されている』と自らの存在意義を前向きに受け止める感覚が育まれているからです。人と積極的に関わり、他者や環境の変化への高い受容性をもつ子も多いです。そのため良好な人間関係を築く傾向があります」(横山さん)
自分の存在を肯定できるからこそ、チャレンジ精神や他者への思いやりをもつことができるのだ。
■大人になってから高める方法
自己肯定感が低い人には、どのような特徴があるのだろうか。
「『否定されることが多かった』『褒められなかった』という経験があります。自分で選択をしたり、親に話を聞いてもらう機会が少なかった可能性が高いです。『怠けたい』といったネガティブな気持ちや、恨みや憎しみのようなマイナス感情を抑えられず自己嫌悪に陥る傾向もあります」(横山さん)
そのような人に「前向きに」、「くよくよしないで」という言葉は逆効果とのこと。では、どうすれば高められるのか。
「負の感情も含めて『これが自分だ』と、目を背けず向き合うことからはじめてみてください。自己肯定感が低い人は、他人と比較して自分を批判する傾向があります。そのような環境や人から上手に距離を取ることも効果的です。自分のマイナス面を認めるのは誰でも辛いことです。『どうして自分ばかり……』と自分自身を責めないようにしましょう」(横山さん)
本当の自分と向き合えた上で、「新しいことに無理なくチャレンジして欲しい」と横山さん。
「思い切って行動してみても、うまくいくとは限りません。しかし何事も失敗はつきものです。チャレンジすることに目を向けて、取り組み続けることが大切です。肯定的な言葉を声に出してつぶやいてみたり、気分が安らぐ音楽を聴いてみたり、マイナスな感情を信頼できる人に話してみたり……気持ちが前向きになることを見つけ、日常に取り入れてみてはいかがでしょう」(横山さん)
まずはありのままの自分を受け入れることが先決だ。その上で前を向き、少しずつ新しいことに取り組んでみてほしい。続けることができたら、今よりポジティブな自分と出逢えるかもしれない。
●専門家プロフィール:横山 人美
Keep Smiling代表。パーソナリティーコンサルタント、講演・セミナー講師。各種メディア執筆やテレビ出演など多数。前向きな発達障害とのかかわり方を始め、子育てや人間関係の悩みが楽になる心理学を伝えている。