■塩味系パスタ編
塩味系パスタの中からは、日本のイタリアンレストランでも定番の「ボンゴレ ビアンコ」の作り方を教えてもらった。
「塩味系でよく知られるのは、『ボンゴレ ビアンコ(vongole bianco)』と呼ばれるアサリのパスタです。イタリアでもよく食べられているこの料理は、旨味がありあっさりと食べやすいため、日本人にも人気です」(中村さん)
アサリとパスタ、上質なオリーブオイルというシンプルな材料で作る料理だが、中村さんいわく「本当においしいボンゴレ ビアンコには中々出合えない」とのこと。
「パスタがフォークに巻き付かず汁を飛び跳ねさせながら食べる状態だと、せっかくのアサリの旨味を楽しめません。さらにしょっぱかったり、アサリが小さくて固かったり、油っこくなる要素がないのに油っこい仕上がりだったり……。アサリの旨みとは違う複雑な味がするお店もあります」(中村さん)
これらの原因には、どのようなことが考えられるのか。
「アサリは塩辛い海水とミネラルを多く含んだ旨味たっぷりの食材のため、本来なら調味料を加える必要はありません」(中村さん)
素材本来の味を引き出せばよいということのようだ。
2名分の材料、レシピを紹介してもらった。
「材料は、ショートパスタ140g、アサリ300g、シシャモ4尾、ニンニク1/5片、白ワイン30cc、ミニトマト3個、オリーブオイル8gを用意します」(中村さん)
ボンゴレ ビアンコに変化を付けたい場合は、シシャモを使うのがおすすめとか。次に作り方だ。
「フライパンに砂抜きしたアサリ、3等分したシシャモ、スライスしたニンニク、ワインを入れ蓋をして中火にかけます。アサリが開いたら水200cc、切ったトマトを加えます。アサリを皿に取り出しラップしておきます」(中村さん)
アサリを取り出した際、ラップをかけておけば乾燥せずにふっくらしたアサリを楽しむことができる。
「乾麺、オリーブオイルを加え、麺が好みの柔らかさになるまで水を足しながら煮ます。アサリとシシャモの旨味を引き出しながら作るので、塩を加えなくても絶品ですよ。麺が好みの固さになったら出来上がりです」(中村さん)
麺が仕上がったら皿に盛り付け、アサリを乗せる。好みでレモンを絞ると味が引き締まるそうだ。
■トマト系パスタ編
トマトソースのパスタといえば、トマト缶を使うのが主流では……。だが、大玉のトマトに“ひと手間”加えれば、おいしいフレッシュトマトパスタができるとのこと。
「トマトの酸味は口の中をさっぱりさせてくれますが、酸味が強すぎると旨味を感じにくくなってしまいます。皮ごとざく切りしたトマトに、粉砂糖をまぶして軽く和え、表面だけ甘みを付けると旨味をより感じるようになりますよ」(中村さん)
トマトに砂糖がなじむとは意外だ。作り方は驚くほど簡単だ。
「沸騰させたお湯に塩気がしっかりとつく程度の塩を加え、パスタを茹でます。茹で上がったパスタを冷水で冷やし、粉砂糖を和えたトマト、残ったトマトの汁、バジル、刻んだモッツァレラチーズと軽く和えれば、さっぱりとおいしい冷製フレッシュトマトパスタの出来上がりです。麺は温かいままでもおいしいです」(中村さん)
いずれも手間をかけず簡単でおいしく作れるレシピだ。中村さんは、「難しいテクニックは不要! 何もせず食材の旨味を引き出すことが料理の一番のコツかもしれません」と最後に語ってくれた。今回教わった食材の引き出し方、最低限の味付けを守ることで、旨味たっぷりのおいしいパスタを作れるようになれそうだ。
●専門家プロフィール:中村 裕美
イタリア家庭料理研究家。イタリアの家庭で食べた、塩と水とオリーブオイルだけで作った料理に感動して料理の道へ。シンプルで理にかなった一生モノの調理法が学べるオンライン料理教室「くちーなHIROイタリア料理教室」が人気。著書3冊出版。共立女子大学卒業。
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