■梅の魅力をおさらい
梅の魅力はどんなものだろう。改めて聞いた。
「酸っぱい梅干しを食べると、身体がシャキッとして元気が湧いてきますね。酸っぱさの理由は、疲労回復効果のあるクエン酸が多く含まれているから。梅干しを食べていたら疲れにくくなった、風邪をひきにくくなった、肌の調子がよくなったという声をよく聞きます」(小川さん)
熱中症対策にも、梅が一役買ってくれるそう。
「梅干しから出る液体(梅酢)にお好みで甘味を加えたものや、梅で作ったシロップを水や炭酸水で薄めて飲むと、発汗時に失われる水分や塩分を補給できます。また、冷房で体が冷えたときや風邪っぽいときは、温かいほうじ茶やお湯に梅干しを入れ、潰しながら飲むと身体が温まりますよ」(小川さん)
少しずつ日々取り入れられればよいとのこと。
■梅レシピ
気軽に取り入れられそうな、レシピを聞いた。梅は、おやつやおつまみにもアレンジ可能とか。
「甘くて柔らかな『蜂蜜梅』の作り方をご紹介します。梅100gを2〜3日室内に広げ、黄色く熟したら洗って拭いてジップ付き袋に入れて冷凍します。一晩以上経ったら塩10g、蜂蜜10gを加え常温で寝かせます。1週間後、液体を瓶などに移し(水などで割って梅ドリンクに)、梅には全体を覆う位の量の蜂蜜(10g以上)をかけます。さらに1週間常温で置いたら出来上がりです」(小川さん)
自家製梅酒に入っている梅の実をアレンジできるという。
「種を取り除き、果肉を焦がさないよう約140度で50分程度オーブンで焼いてドライフルーツに。加熱しアルコール分が飛ぶので、お子さんのおやつにもOKです」(小川さん)
酸味と塩味、旨味が含まれる梅干しを、調味料感覚で使うのも新鮮だ。
「小松菜、ほうれん草、ブロッコリーなどを梅和えにすると、爽やかな酸味が効いておいしいです。暑い時期は、梅干しと納豆、カイワレ大根をトッピングした冷やしうどんもおすすめですよ」(小川さん)
乳製品との相性がよいのも驚きだ。
「クリームチーズに乗せたり、バターに混ぜて梅風味のバタートーストにしてもおいしいです。バニラアイスに甘めの梅干しを刻んで加えると、甘酸っぱい夏のデザートに早変わりです」(小川さん)
よい意味で、梅の概念を覆されるような変わり種レシピばかりだ。
■古い梅干しほど美味しいって本当!?
梅干しは、塩分濃度により保存方法や味わいの変化が異なるという。
「塩分12〜13%以上の梅干しは、ガラス瓶などに入れ直射日光が当たらない場所で常温保存します。密閉できない容器で数年放置してしまうと、乾燥して干し梅のようになってしまうことがあるので密閉容器を選びましょう」(小川さん)
塩分11%以下のものは、カビを防ぐためにも冷蔵庫保存が安心だ。塩分18%以上であれば何十年でも保存可能とか。
「塩分18%以上の梅を漬けた直後は酸味も塩味もはっきりしていますが、1年経つとバランスがよくなります。その後、どんどん酸味が落ち着きまろやかさや旨味が出てきます。10年以上経つと酸味より甘味が際立ってくることが多いです」(小川さん)
“古い梅干しほど美味しい説”は本当か聞いてみた。
「10年以上経つと、水分が抜けて甘い干し梅のような状態になります。梅干しというカテゴリーからは少し外れるかもしれません。漬けてから2〜5年頃の梅が人気ですが、シソや梅の香りがしっかり残る1〜2年頃のものが好きという人も多く、お好みはそれぞれでしょう」(小川さん)
「市販の梅干しは製造方法もさまざまなので、表示に従って保管してください」と小川さん。自分好みの味わいを見つけるべく、さまざまな梅やレシピを試していたら、おのずと夏を元気に過ごすことができるかもしれない。
●プロフィール:小川 睦子
梅干研究家。梅干研究所所長。梅干しをこよなく愛し、梅の魅力を伝えている。著書「はじめてでもおいしくできる梅干し・梅レシピの基本」(朝日新聞出版)は梅しごとのすべてがわかるロングセラー。
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