
■用途で異なる梅の流通時期
まず、梅を購入する際のポイントをうかがった。
「市場に出回る目安は5月下旬から6月中旬頃です。その時期になるとスーパーや青果店で購入できます。地域や年によって差があるため、お店の方に店頭に並ぶ時期を確認するとよいでしょう」(小川さん)
今年は出荷時期がやや早めだという。農家から直接取り寄せて購入することも可能だ。
「品種や産地など、好みのものが選べるのは取り寄せのうれしいポイントです。農薬不使用や有機栽培にこだわるなら、自然食品店や生協などの宅配がおすすめです。インターネットでの事前予約制の場合が多いので、早めにチェックしておくとよいですよ」(小川さん)
さらに覚えておきたいのが、「流通時期により梅の用途が異なる」ということだ。
「梅酒や梅シロップ用には早い段階で収穫される『青梅』が使用されます。5月下旬から6月中旬頃が目安です。6月下旬以降は熟しはじめたものが多く出回り、梅干し用として最適です」(小川さん)
用途に応じたもの使用することで、梅レシピはよりおいしく仕上がるとのことだ。
■梅干しや梅シロップの簡単レシピ
つづいて、小川さん直伝のレシピをご紹介しよう。まずは梅干しの作り方だ。
「梅1kg、塩160g、Lサイズのファスナー付き保存袋2枚をご用意ください。梅を段ボールやザルに広げて2~3日置きます。黄色くなってよい香りがしてきたら、カビが生えていたり傷んでいるものを取り除き水洗いします」(小川さん)
ヘタが気になる場合は、竹串やつまようじでつつくように取るとよいとのこと。
「清潔なふきんで水気を拭ったら、2枚重ねにした保存袋に梅と塩を入れます。袋の空気を抜き、室内にて常温で保管してください。最初の1週間は毎日ひっくり返し、梅から出てくる水分(梅酢)を全体になじませます。約半年置くとできあがりです」(小川さん)
赤ジソの追加や天日干しの工程は、省略してもおいしく作れるとか。塩辛いようなら、さらに数ヶ月寝かせると味がなじむそうだ。つぎは梅シロップの作り方を聞いてみた。
「梅1kg(青梅でも熟した梅でも可)、砂糖1kg、密閉できるガラス瓶を使用します。水洗い、ヘタの除去、ふきんで水気を拭き取るまでは梅干し作りの工程と同じです。その後、ガラス瓶に梅と砂糖を入れ、室内で常温保管します。最初の1週間は、毎日清潔な箸でかき混ぜましょう。砂糖のかたまりをほぐす感覚で行うとよいですよ。約2週間でできあがりです。鍋で煮沸し、冷蔵保管すると品質が保てます」(小川さん)
いずれのレシピも難しい手間がなく、初心者にも挑戦しやすい。
■体にうれしい効能
最後に、梅の効能について聞いてみた。
「クエン酸がたっぷり含まれている梅は、夏バテや熱中症対策におすすめです。疲れたり体が冷えたときなどは、お湯やほうじ茶、緑茶などに梅干しを入れてみてください。潰しながら飲むと、体が温まりスッキリします。これからの暑い季節には、梅シロップや梅酢を水や炭酸水で薄めて飲むとよいですよ。爽やかな梅の風味でさっぱりとリフレッシュでき、糖分や塩分の補給にもなります」(小川さん)
日々梅干を研究している小川さんご自身も、その効果を実感しているそうだ。
「梅に携わっている仲間は皆、ほぼ毎日少量の梅干しを食べています。個人差はありますが、『疲れにくくなった』、『風邪をひかなくなった』、『肌やお腹の調子がよい』と感じている人は多いですね。うれしい効能トークで盛り上がることも多いんです」(小川さん)
おいしく健康にもよい梅レシピで、暑い夏を元気に過ごせたら一石二鳥だ。今年はおうち時間を上手に活用し、梅レシピにチャレンジしてみてはいかがだろうか。
●専門家プロフィール:小川 睦子(梅干研究所 UMEBOSHI-LABO)
梅干研究家。梅干研究所主宰。梅干し作りや梅干し研究を行いながら、魅力を伝えるべく「梅干し作り講座」などを開催。著書「はじめてでもおいしくできる梅干し・梅レシピの基本」がわかりやすいと好評。