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注文と違う料理が出てきたらお金を払わずに帰っても法的に問題ない?

注文と違う料理が出てきたらお金を払わずに帰っても法的に問題ない?街中に出てみれば、外国語を耳にしない日はないくらい日本にも、さまざまな外国人が生活している。しかしこうしたグローバルな風景は、日常に些細な問題を生じせしめている。筆者がある日、とある韓国料理店で食事をしていると、別のテーブルで店員と客が揉めていた。どうやら日本語に不慣れな店員が注文を聞き違えて、違う料理を提供してしまったようだ。客は提供後にそれに気づいて、結局お金を払わずに出て行ってしまった。料理は一応出されているが、注文と違うからお金は払わなかったということは、法的に認められる主張なのだろうか。

■法律上認められる契約の解除には、2つのステップが必要


まず冒頭で挙げられた疑問に関して、飲食店における「契約」とは何を指すのかというところから、富士見坂法律事務所の井上義之弁護士に取材し、解説してもらった。

「契約は、申込と承諾によって成立します。飲食店の例で言いますと、客がメニューを見て何を頼むかを決めて店員に声をかけ、例えば『エビフライ定食をください』と注文するのが契約の『申込』にあたります。そして、店員が『かしこまりました』と注文を受けるのが契約の『承諾』にあたり、これによって契約が成立します」(井上弁護士)

では本題に移って、申込と異なる料理(例えばアジフライ定食)が出てきた場合には、客が法的にとれる行動とはなんだろうか。

「まず、アジフライ定食では店が債務を履行したとはいえませんので、客は店に対して注文通りエビフライ定食を提供するよう求め、出てきたエビフライ定食を食べることができます。また客は、相当な期間内に料理を提供するよう求めたにもかかわらず提供がない場合、履行遅滞を理由に契約を解除することもできるでしょう。契約を解除した場合、客は代金を支払う必要がありませんし、代金を先に支払っている場合は返金を求めることができます。この場合に注意すべきなのは、法律上の条文上「相当の期間」待つ必要があり、直ちに解除できるわけではない、ということです。また、注文ミスが軽微である場合はそもそも解除が認められないこともあり得ます(改正民法541条)。もちろん、客は運ばれてきたアジフライ定食を、「まぁいいか」と納得して食べても構いません。この場合、法的には、アジフライ定食を目的物とする新たな契約が成立したと解することになります」(井上弁護士)

整理をすれば、アジフライ定食が来た時点で客の選択肢は2つある。1つは「まぁいいか」と食べてしまうこと。この場合は、アジフライ定食の契約が成立し、その代金を払うことになる。もう1つは、「違う」と言って店に作り直しを求めること。こちらの場合、さらに待って料理が出てこなければ、ここで初めて契約を解除し、お金を払わずに出ていくという選択肢が現れるわけである。すなわち契約の解除には、双方の合意以外だと、(1)債務の履行を求め、(2)相当の期間を待つという2ステップが求められる。したがって今回のように、出てきた料理に違うと文句だけつけて出ていく行為は、契約の一方的な解除として、そのために要した費用の責任を問われる可能性も出てくるだろう。

■テイクアウトなど、その場で料理の中身がわからない契約は?


お店で出される料理については以上の通りだが、テイクアウトのようにお店を離れてしまう場合や、カレーパンやパイなど中を割って開けてみないと注文通りの料理かわからない場合はどうなのだろうか。

「料理がテイクアウトするものや、中を開いてみないとわからないものなど、一度受け取ってから料理が違うとなった場合であっても、客が出来る対応は基本的には上記と異なりません。すなわち客は、(1)注文通りの品を渡すよう店に要求すること、(2)相当な期間内に料理を提供するよう求めた上で、なお提供がない場合に契約を解除すること、(3)受け取った品で納得し受領することができます。しかし、もともとの契約の履行場所が店舗である場合、一度受け取った品の返品、代金の返金処理、差額の精算等の処理は原則として店舗に赴いて行うことになろうかと思います」

やはり、こうした料理の確認に時差が生じる場合でも、料理が注文と違うというだけで一方的には契約を解除することはできないようだ。これは、一度交わした契約に誠実であることを法律が求めると同時に、契約履行の際の費用負担のようなリスクを片方だけの当事者だけに負わせないようにするためであろう。

■東京オリンピックは逆のケースを生む


ここまで店員側のミスで注文と違う料理が出てきた場合に、私たちが採れる選択肢について弁護士の解説を交えて紹介した。再来年に迫った東京オリンピックでは、これと逆の事例が頻発するかもしれない。すなわちオリンピックの影響で、多くの訪日外国人が客として様々なレストランを訪れ、日本人店員との間で注文の聞き違いのことでトラブルが起こるかもしれないということである。明日は我が身を考えれば、客も店側もお互いの「契約」に真摯に向き合う必要に迫られることになる。


専門家プロフィール:弁護士 井上義之 公式 ブログ
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