■褒め言葉には注意が必要?
誰もがよい人間関係を望んでいるのに、うまくいかないことがあるのはなぜだろう?
「よい人間関係は人によって定義が違うからです。自分がよいと思っても、相手にとってよいとは限りません。そもそも、自分にとっての『よい』でさえも一日のなかで変化しますよね」(タカミさん)
なるほど。よい人間関係のゴールが決まっていないのだから、そこにたどりつけないことが多いのにも納得できる。
「特に褒め言葉は注意が必要です。自分がよいと思う褒め言葉でも、人によって、褒められたいポイント、タイミング、場面が違います。もっといえば、褒めてほしい相手かどうかも、褒められる側によって異なります。褒める行為には褒める側の評価が入るので、人によっては『変な評価をされた』『決めつけられた』と褒め言葉が悪い人間関係の原因になることもあります。ときには、異性に対する何気ない褒め言葉が、セクハラととらえられるというトラブルもあるでしょう」(タカミさん)
自分がよいと思った言動が迷惑となる……。やはり人間関係は難しいものだ。
「人間関係の構築で大切なのは相手に合わせるスキルです。よい人間関係を構築するのももちろん大事ですが、どんな相手でも、少なくとも悪い人間関係にならないように気をつけたいですね」(タカミさん)
“よい人間関係”がハードル高く感じたら、少し発想を変え、“悪い人間関係とならない”ことを心がけるのもよいかもしれない。
■相手と接点を持つために“あえてやる”
最近はリモートワークが増えているが、オンラインで職場の同僚や上司と深く分かりあうのは難しいだろうか。
「コミュニケーションの接点(チャンネル)が多いほうがスムーズな人間関係が構築できます。その点、在宅で仕事をする場合のよい人間関係の構築は少し難しいといえるかもしれません。それにリモートワークは孤立しがちな点に注意が必要です。相手との接点を“あえて”つくるよう心がけるとよいでしょう」(タカミさん)
具体的な方法はあるだろうか。
「たとえば、チャットだけではなくてあえて電話をしてみる、些細だと思うことでもあえて報連相(報告・連絡・相談)をする、オンラインミーティングではあえてカメラをONにしてお互いに表情を見る。このような方法で相手に合わせる配慮をしながら、あえて自分から相手との接点を増やしていきましょう」(タカミさん)
確かに、声色や表情から感じ取れる相手の感情や変化があるだろう。一見、少し手間と思うようなことを「あえてやる」という姿勢が大事というわけだ。
■人間関係の構築こそ、スタートが重要
新しい環境でよいスタートを切るためのコツはあるだろうか。
「新卒での入社や転職などで新しい職場で働く場合は、仕事ができるようになることよりも、よい人間関係を構築することを優先させましょう。新しい職場で働きはじめると、早く仕事を身につけたいと思うのが自然です。しかし仕事だけに集中しないことがポイントです」(タカミさん)
“人間関係の構築も仕事の一環”と考えるとよいかもしれない。
「職種にもよりますが、仕事は自分だけで進めることが多いものです。一方、人間関係の構築は相手があることなので自分だけではできません。そのため、仕事よりも面倒で手間がかかります。ただ、そこで仕事だけに集中してしまうと人間関係の構築が難しくなってしまいます。仕事はいつでも身につけられますが、人間関係の構築は最初が肝心です」(タカミさん)
こちらも具体的な方法を知っておきたい。
「新しい職場でよいスタートを切るために、ここでもやはり“あえてやる”がキーワードです。たとえば分からないことがある場合、自分で調べるのも大事ですが、独りで抱え込まずあえて周囲に質問することからはじめてみましょう。そうすることで周囲との接点が生まれ、よい人間関係を構築できます」(タカミさん)
何かと効率が求められる時代だが、人間関係は必ずしも自分優先の効率化がベストの方法とは限らない。相手のことを考えながら、コミュニケーションの接点を多く持つように意識してみよう。
●専門家プロフィール:タカミタカシ
キャリアカウンセラー、キャリアコーチ。2008年に日本キャリア・コーチングをスタート。個人支援を専門に3,500名以上をコーチ。自己分析・キャリアデザイン・転職・昇進昇格・パワハラ改善が得意な実務家として、成果・自立につながる具体的なアドバイスと丁寧なサポートを提供できるのが強み。
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