■“タバコ臭”のニオイの元
タバコは火をつける前から特有のニオイがあるが、喫煙者が吐き出した煙は、「柿やりんごなどが腐ったようなニオイ」と例えられることもあるようだ。そんなタバコのニオイの元は何なのだろうか。
「タバコの煙の中には、数千種類の化学物質が入っていることがわかっています。ニコチンやタールの他にも、アンモニア、アルデヒド類、硫化水素など、多くの人が不快に感じる悪臭成分が数多く含まれています。なかでも、アセトアルデヒドやビニルピリジンのニオイが、一般的に“タバコ臭”と感じられるニオイの元と考えられています」(江崎さん)
不快なニオイの科学物質が入り乱れているのだから、悪臭と感じるのは不思議ではない。
■あのニオイが吸着する理由とは
煙自体のニオイだけでなく、毛髪や衣類についたニオイも不快な上、洗わない限りなかなか取り除けない。それはなぜなのだろうか。
「タバコの煙の中には、粒子として空気中に放出される成分があります。タバコに含まれる微粒子は、0.1マイクロメートル程度の大きさで、衣服の繊維の網目に入り込んだり、髪の毛に生じる静電作用により吸着してしまうことがあります。これらの成分は、一度吸着してしまうと自然に消えることがなかなか難しく、結果、不快なニオイとして残ってしまいます」(江崎さん)
“1マイクロメートル”とは1000分の1 ミリメートルのこと。0.1マイクロメートルのタバコ微粒子は、小さすぎて吸着を防止するのが難しいのだ。
■室内では消臭に努めよう
換気だけではなかなか解消できないタバコのニオイ。ニオイそのものだけでなく、毛髪や衣類、部屋の壁、カーテンなどにニオイが付着するのを防ぐためにも、消臭剤の活用も一つの手段である。
「消臭剤には、タバコ臭の元となるニオイ成分と効果的に反応する成分が配合されており、不快なニオイを化学反応によりニオイのない成分に変えてくれます。消臭効果を高めるには、ニオイの発生源となる喫煙スペースの近くや、空気の流れが悪く、ニオイがたまりやすい場所に設置するとよいでしょう」(江崎さん)
タバコの煙は、1時間以上経っても周囲の空気を汚染するとのこと。喫煙所や喫煙者の近くに、さりげなく設置すると効果が期待できそうである。それでも毛髪や衣類についてしまったタバコのニオイには、消臭効果のあるスプレーなども多種出回っているので、併用するとさらに安心だろう。
●専門家プロフィール:江崎 俊文
2013年小林製薬(株)入社。2016年より芳香消臭剤の研究開発に携わる。水洗トイレ用芳香洗浄剤「ブルーレット」や車用芳香消臭剤「クルマの消臭元」の担当を経て、現在は、「お部屋の消臭元」、「トイレの消臭元」を担当。