■梅干しは日本独自の食文化?
そもそも海外には、梅の実を食べる習慣はあるのだろうか。
「まずは、日本国内の梅の実について紹介します。実が採れる梅には『南高梅(なんこううめ)』、『白加賀(しろかが)』、『豊後(ぶんご)』などの品種があり、その数は400種類以上といわれています。海外でそのような品種が育てられているという話は聞いたことがありません」(梅干さん)
梅干さんは主に国内向けに情報を発信しているため「海外事情にはそこまで詳しくない」と前置きをしたものの、「海外の人が梅干しを食べるという習慣は聞いたことがない」とか。何種類もの梅干しを楽しむのは、やはり日本人だけなのか……。
「私が知る限りでは、梅干しは日本独自の食文化です。似た食べ物として、ヨーロッパにはプラムがあります。プラムは『レーヌ・クロード』、『クエッチ』、『ヴィクトリア』、『サンタ・ローザ』など、1,000以上の品種があるそうです。夏になるとヨーロッパではマルシェ(市場)に赤、黄色、緑、紫などカラフルな色のプラムがずらりと並びます」(梅干さん)
分類上は梅もプラムもバラ科サクラ属の植物だ。
「プラムのなかで、特に梅の実に見た目がよく似ているのが『グリーンゲージ』という品種です。こちらは日本のように塩漬けにするのではなく、柔らかくなるまで追熟させてそのまま食べたり、ジャムやタルトにするのが主流のようです」(梅干さん)
同じ分類の植物でも、日本とヨーロッパでは楽しみ方が異なるようだ。
アジア圏での梅干し事情はどうなのだろうか。
「日本の梅はもともと中国から薬として伝わったもので、中国にも梅を食べる文化があります。ただ、日本のように塩漬けではなく、一般的には砂糖やはちみつで甘くしたり、干し梅のようにして食べているそうです」(梅干さん)
塩辛さや酸っぱさを楽しむのは日本だけのようだが、国内でも干し梅はコンビニのお菓子コーナーに並んでいる。その他にも飴やガムなどのお菓子とも相性がよく、梅の実の食材としての優秀さがうかがえる。
■プラムも梅干しにできる!?
長く海外に滞在すると、梅干しが恋しくなるという人がいるようだ。
「ヨーロッパに移住された日本の方が、梅干しを手作りしているのをSNSで見たことがあります。ヨーロッパには『南高梅』のような品種がないので、その方はプラムを梅干し作りと同じような手順で塩漬けにしていました。味は日本の梅干しとまったく同じとはいかないでしょうが、見た目はかなり近いものに仕上がっていました」(梅干さん)
なじみがないだけに、外国人が梅干しを食べるとビックリするだろう。
「そうですね。海外では和食の人気が出ていますが、梅干しはまだなじみが薄い印象です。梅干しは健康にも美容にもよいとされているので、国内はもちろん、海外でもこれからもっと人気が出てくれるといいですね」(梅干さん)
一般的な梅の実の収穫時期は 6月から7月で、これからの時期が旬とされている。梅干しだけでなく、梅酒、梅シロップづくりに挑戦し、オリジナルの風味を楽しむのもよさそうだ。皆さんもぜひ、おいしい旬の梅を味わってみてはいかがだろうか。
●専門家プロフィール:梅干梅子
梅干しが大好きで、梅マイスター、梅干しソムリエ、梅のお菓子評論家として精力的に活動。テレビやラジオなどのメディアへの出演も多数。ブログやInstagramが人気となっている。
画像提供:AdobeStock