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この度、町立保育園が新設されました。
4月から運営されるのですが、町の説明によると、通園バスには運転手のみで
保育士の同乗は考えてないとの事です。
町からの入園児への連絡には、シートベルトを必ず着用させ、バス内ではおとなしくするよう、子供をよく躾けておくようにといった内容がありました。
3歳児からの利用ですが、子供だけに不測の事態もあろうかと思います。
もし何か事故が起きた場合、町はどう対処するつもりなのかと、憤慨しております。町に保育士を同乗させるよう要望を出したいと思っておりますが、なにか言いくるめられそうな気もしています。そこで、切り札というか、法的にも義務付けられているというような事でもあれば、教えていただきたいのですが。
よろしくお願いいたします。

A 回答 (1件)

 結論的には、保育所には、通所バスに保育士を同乗させる法令上の義務はありません。

町福祉当局に対する陳情などの政治的運動によって、保育士同乗を要望してゆくほかはないと考えます。

1 保育士を同乗させる義務の存否について
 保育所は、「児童福祉施設」の一種です(児童福祉法7条)が、同法45条1項本文は、児童福祉施設の設置及び運営の基準等について、厚生労働大臣が最低基準を定めなければならない旨規定しています。そして、ここにいう最低基準として、「児童福祉施設最低基準」(最低基準、と略称します。)が定められています。

 ところで、最低基準32条は、保育所の施設の基準を詳細に規定していますが、通所バスについては何ら規定していません。また、最低基準35条は、「保育所における保育の内容は、健康状態の観察、服装等の異常の有無についての検査、自由遊び及び昼寝のほか、……健康診断を含むものとする。」と規定しています。
 そうすると、児童福祉法が予定している「保育所における保育」とは、「保育所の建物・敷地内における保育」であると解されます。
 つまり、通所バスの運行は、児童福祉法上保育士を配置すべき「保育所における保育」には含まれず、保育所があくまでも「サービス」として実施しているにすぎないわけです。このことは、通所バスの運行が、むしろ保育所の売り物の一つとされることが多いことからもご理解いただけるかと思います。

 もちろん、通所バスの運行が「サービス」であるからといって、通所バス搭乗中の事故について、保育所が何ら法的責任を負わないということではなく、事故の発生について、運転手に故意または過失があれば、保育所は、原則として、債務不履行(民法415条前段)ないし不法行為責任(同法715条1項本文、709条、710条)を免れません(*1)。

 もっとも、最低基準33条2項は、保育所におくべき保育士の数について、「……満1歳以上満3歳に満たない幼児おおむね6人につき1人以上、満3歳以上満4歳に満たない幼児おおむね20人につき1人以上……とする。」と規定し、3歳未満の幼児の場合と比較して、3歳以上の幼児については、保育士1人あたりの幼児の数を格段に緩和していることを考慮すると、法律の世界では、「3歳以上になれば、家庭でのしつけなどにより、自らの行動を制御して身の安全を守る能力をある程度身につけているはずである」と考えられている(*2)ものと解されます。
 そうすると、通所バス搭乗中の「不測の事態」により園児が負傷したとしても、それは、園児自身が「不測の事態」を自ら招いたか、これへの対処を怠ったことが一因であるとして、運転手の「過失」そのものが否定される(=事故の予見・回避可能性が否定される)か、「過失」は肯定されても大幅な過失相殺(民法418条、722条2項・交通事故でいう「過失割合」のことです。)がなされるか、いずれかとなる可能性が高いことになります。

2 対応策について
 最低基準4条1項は、「児童福祉施設は、最低基準を超えて、常に、その設備及び運営を向上させなければならない。」と規定し、最低基準14条の2第1項は、「児童福祉施設は、その行った処遇に関する入所している者又はその保護者等からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない。」と規定していますから、保護者が、保育所に、通所バスへの保育士の同乗実現を要望することは可能です(*3)。
 「私立の幼稚園や保育所では通所バスへの教諭や保育士の同乗は常識である。相応の費用負担はするので、貴園でも同乗を実現してほしい。」といった形で要望されてはいかがでしょうか。

 また、最低基準14条の2第2項は、「児童福祉施設は、その行った処遇に関し、……都道府県又は市町村から指導又は助言を受けた場合は、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。」と規定していますから、町福祉当局に保育所への指導を要望(陳情)することも一法です(*4)。
 さらに、直接請求(地方自治法74条1項)などの方法で、通所バスへの保育士同乗を義務づける旨の条例の制定を請求・要望することも考えられます(直接請求制度そのものについては、冗長になりますので、解説は割愛させていただきます。)。
 なお、もしかすると、risa39さんは、「住民投票に問えないか」とのご疑問をお持ちかもしれません。しかし、地方自治法上、特定の政策の是非を住民投票により決するという制度は採用されていませんから、まず、住民投票を実施することを認める条例が制定されてはじめて、「保育士の同乗の是非」をめぐる住民投票が実施され得ることになります。

 以上、ご期待に沿うような回答とならず、申し訳ありません。ご参考になれば幸いです。
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*1 くどいようですが、保育士を同乗させなかったこと自体が「故意または過失」となるのではありません。「運転手が当該事故の発生を予見し、かつ回避することが可能であったのに、回避措置をとらなかった」場合にのみ、運転手の「過失」が認められることになります。
*2 保育士が常時様子を観察する必要性は薄れるので、保育士の数を大幅に緩和しているわけです。
*3 もっとも、保育所は、要望を実現する法的義務は負わず、要望に誠実に対応する義務を負うにすぎません。
*4 この場合も、*3と同様、町福祉当局が要望に応じた指導を行う法的義務はありません。
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この回答へのお礼

専門的なことなので、どうやって町に話を持っていけばよいのか困っていました。詳しく教えて頂きありがとうございました。
早速、保護者が集まって、対策を話し合いたいと思います。

お礼日時:2002/02/25 08:37

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