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バレエ『春の祭典』がフランスの芸術に与えた影響とは、一体どのようなものであるのだろうか。20世紀初頭、ロシアのディアギレフがパリでバレエ・リュスを旗揚げし、19世紀までの古典的バレエに革命をもたらした。「春の祭典」初演時には、客席から怒号が飛び交うなど大きな反響があったと伝えられている。本レポートは「春の祭典」上演前後の時代におけるフランスのバレエとは何かを考察し、そしてこの作品がフランスの芸術に与えた影響について述べていく。
それまで、バレエは富を一極集中させられる絶対王政のもとで発展した、煌びやかで美しい権力の象徴であった。19世紀になると文学を題材にバレエ・ブランという非現実で幻想的なロマンチック・バレエも生み出される。つまり当時のフランスにおける「バレエ」は、文学、音楽、舞台芸術などを一つにまとめた「見せモノ」としての総合芸術であったと言えるのだ。ところが1913年、ディアギレフらによって「春の祭典」が上演される。前衛的な音楽や振り付けに加え、文学的な背景を持たないこの作品は、今までの「見せモノ」としての「バレエ」とは全く異なるものだった。フランスパリでこの作品を上演したことは非常に挑戦的であったと言えるのではないだろうか。
1917年には、「春の祭典」をきっかけに「パラード」が上演される。伊勢晃の文献によると『アポリネールが「シュルレアリスム」と定義するものは、事物の象徴でも模倣でもなく、現実そのものを表現することを意味し、現実の新しい様相を提示することにより人々に「驚き」の感覚を与えるという芸術の本質を意味するものである。』という。(伊勢晃. "アポリネールの 「エスプリ・ヌーヴォー」 とバレエ: バレエ・リュスとコクトーの 『パラード』 をめぐって." 年報・フランス研究 40 (2006): 1-14.)つまり、アポリネールにとってこれまでの「見せモノ」としての「バレエ」は芸術とは呼べず、「春の祭典」や「パラード」のように私たちに「驚き」を与えてくれるものこそが芸術であるのだ。「パラード」上演後にはブルトンがシュルレアリスムを宣言、芸術運動が起こる流れとなった。
バレエ「春の祭典」はシュルレアリスムを引き起こし、それまでのフランスにおける「バレエ」、さらには芸術そのものを解放する役割を果たした。冒頭の問いに答えると、「春の祭典」の影響はバレエやオペラにとどまらず、映画、文学、絵画などの様々なフランスの芸術をシュルレアリスムによって理想的なものから現実的なものへと導いたと言えるのだ。
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