No.4ベストアンサー
- 回答日時:
> 矢張り文学の最終目標はなぜ人は生きているのかと言う一種哲学的な問いへの答えでしょうか。
そんなことはありません。
少なくとも、「答え」ではありません。
だってだれかがもう答えを出してしまったら、それから後の人はもうだれも生きる必要がなくなるじゃないですか。
そういう「問い」がない小説は意味がない、と考えた人は昔から何人もいます。
たとえば谷崎潤一郎の『春琴抄』に対して、西田幾多郎は「人生いかに生きるべきかを描いてないからつまらない」と言ったんだそうです。
そういう人の期待に見合うような本は、たくさんあります。
ただ、そう考えない人もいます。
わたしがこの西田の話を知ったのは柳沼重剛の『西洋古典こぼればなし』という本のなかでした。柳沼は先に引用した西田の言葉につづいて、このように言っています。
「こういうことが透けて見える作品、つまり、これは何々を問題にした作品というようなことがはっきりと分かる作品にしか価値を認めないという態度は、どんな文章に出会っても内容にばかり気をとられて文章には目が留まらず、筆者の意図、あるいは問題意識というものは容易に読み取れるはずだど期待し、それらしきものをつかんだと思えばそれで安心し、もう文章などは忘れてしまっている。つまり読み捨てにするという態度であり、それは文章に対する人間の態度を浅薄にし、ということはおのずから人間そのものを浅薄にするからである。」
よく似たことをアメリカの作家、フラナリー・オコナーも言っています。
「物語は、他の方法では言えない何かを言う方法なのだ。作品の意味が何であるかを言おうとしたら、その物語の中の言葉がすべて必要である。……それは何についての物語か、とたずねる人がいたら、正当な答えはただ一つ、その物語を読めと言ってやるしかない。」(『秘儀と習俗』)
何でもアリが文学なんだ、と思ってまちがいはないと思います。
No.3
- 回答日時:
私も若い頃は貴方と同じ思い込みをしていました。
文学どころか、シリアスなドラマの映画にまで、そのような哲学的な思い込みがありました。そして、映画の中の人々の動きや心の描写を見るたびに、人生ってこんな浅いものじゃない、こんなんときに人間はあんな行動はしない、と不満を抱いていました。その点、文学はもっと深い、文学は人生を本当に語っているとの、お笑いな錯覚に陥っていたものです。私はそんな十代の中程から10年程、日本やロシアやフランスの小説を読みあさって居りました。その後だんだんと西洋の古典や日本の古典を読むようになって、ノンフィクションの、人間の本当の記録を読むようになり、文学がなんであるかがだんだんと分かるようになりました。私の独断と偏見によると、文学とはエンターテイメント、すなわち娯楽なんだと考えるようになったのです。ただし、ここでは文学を狭い意味に取って、小説と理解して書いております。
それに気が付いた切っ掛けは、少なくとも2つあります。ひとつは飛行機の中でアメリカのケビンコスナーの、トウモロコシ畑で野球をやっている映画を見ていて、そこには現実では絶対あり得ない場面の連続が出て来てて、はじめから荒唐無稽であることが分かったのですが、1時間半が楽しく過ぎて行きました。そのとき、何だ映画って娯楽なんだと、突然目から鱗が落ち、誰でも知っていることに気がついて興奮しました。その後、友人を捕まえては、ねえ映画って娯楽なのを知っている?と聞きまくり、私の家内から嗜められてしまいました。もうその質問をするのはやめなさい、貴方が馬鹿に見られてしまいますよ、と。
もう一つの機会は、フィルティの幸福論の中に書いてあったのですが、彼がスイスだったかの神学校で、将来の坊さん候補者の人たちに向かって、どういう本を読まなくてはいけないかを具体的な本の名前を幾つも挙げている部分を読んでいた時でした。彼は、小説と新聞は原則的には読むなと言っておりました。特別な例外を除いて、殆どの小説は底が浅い。また、新聞を読むと人間が嫌いになるからだそうです。
そのころ私はちょうど、モンテーニュを入り口にしてギリシャやローマの時代に書かれた歴史書に目覚め始めた頃だったので、小説を読まなくていも、いくらでも古典としての歴史書や、マキュアベリ、グッチャルディーニなどの文明論、政治論の素晴らしさに耽溺していた頃だったのです。ですから、フィルティの言うことに、簡単に従うことが出来るようになっていました。そんな、小悦を読まない状態を何年も続けたあとになって、頭が疲れたときに気晴らしに井上靖の「崑崙の玉」を読んでいたら、全体があたかも本当に在ったことをその経験者から聞いたように、いかにもノンフィクションの形で書いてあるのに、その最後のところで、その体験者の二人全員が砂漠の中で死んでしまうので、何だこれはフィクションだったのかという面白くて楽しい驚きを感じたのです。これが、2つ目の機会でした。
私は物理学者ですが、私の長年の拙い経験の中で「重要な発見や寄与は、こちらが狙ったところから出てくるものではなく、その狙いを実現するための血の涙が出るような努力の最中に、突然、思いもよらなかったような副産物として現れてくるものだ」と言うことを確信を持って言えるようになりました。
我々の埋め込まれているこの自然界の複雑さ、巧妙さ、奥深さを、現在の我々の未熟な経験や論理構成による推論で理解できるという程、人間の不遜な思い上がりはありません。フィクションとは所詮、そんな未熟な人間の頭が造り上げた虚構の世界なのだと思うようになりました。ところが、実際起こったこ個人や人類の経験をノンフィクションとして皆に報告するときには、たとえその著者の主観がいくらでもその報告の中に入り込むとは言え、その著者の頭脳では産み出せなかった、そして多分その当時のどんな人にも思い付かなかった、自然界や人間界の途轍もなく奥深い現象なり出来事なり行いが記録されている場合がしばしばあります。
ですから、文学を「小説」という狭い意味に取った場合、それは一時しのぎの娯楽と考えた方が、殆どの場合当たっていると思います。たとえドスロエフスキーのような例外的な小説が在っても、それは、人生の一端を考える入門編であり、それを遥かに超える古典がノンフィクションとして西洋にも東洋にもいくらでもあるとの独断を、それらを読んできた経験から思うようになりました。
No.2
- 回答日時:
文学は、原初的には口伝であったが、文字で書きとめられるようになり写本の形で流布するようになり、15世紀以降印刷技術が普及し、やがて活版印刷による文学作品の出版が盛んになっていきました。
現在ではインターネットに代表される電子メディア上で表現されるものもあります。文学を「純文学」とそれ以外に区分し、「文学」=「純文学」とかたくなに言う人も中にはいますが、あまり意味のあることとは思えません。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%94%E6%96%87% …
「文学」には何かしらの作者の主張は当然入りますし、そうでなければ気の抜けたビールのような読後感しかないと思います。その主張が、哲学的なことの場合もありますし、夢や希望のようなもの、まったくの娯楽性を追求したものなど様々です。どれが良くてどれが悪いとか、レベルが高い低いということもありません。それが発表された同時代人にどれだけ共感してもらえるか、また後世の人にも共感してもらえるかといったことで客観的には評価されます。誰にも読んでもらえなければ、意味がないのです。読んだ人が、途中で読むのをやめてしまうようなものではダメなのですから。一時的にブームになり、商業的に成功する作家もいますし、細く長く読み継がれる作家もいます。死後、評価される作家もいたり様々です。作家自身も、考え方は様々ですし、職業作家である以上、一般受けするテーマを題材にする場合がほとんどです。そこでは哲学というよりも現実(リアリズム)が大きなウエイトを占めることになると思います。
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