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一般的には、浄瑠璃発生から竹本義太夫により義太夫節が創始される以前までを「古浄瑠璃」、
義太夫節成立以降を「当代浄瑠璃」と呼ぶことが多いでしょう。
「浄瑠璃」という名称は、牛若丸と浄瑠璃姫の情事を題材にした「浄瑠璃姫物語」に由来するといわれますが、
室町時代初期には存在していたということ以外、作者や正確な成立年代不明です。
最初は物語の朗読なようなもので、やがて琵琶法師によって節付けされていきます。
琵琶法師によって語り始めたという事情から、平曲(平家物語を琵琶の弾き語りで演奏する)のようなものであったと推察されます。
三味線が日本に伝来するのは1558~69年頃ですが、これ以降三味線の伴奏で語られるようになります。
初めて三味線で浄瑠璃を語り始めたのは、沢住検校といわれます。
また、沢住検校の門弟、目貫屋長三郎が傀儡子の引田淡路掾と組んで、
浄瑠璃と人形劇を組み合わせたのが文楽人形浄瑠璃の始まりです(1595)。
沢住検校と同じ時期に、やはり三味線を使った滝野検校という人がおり、
この二人が後世に伝えた三味線伴奏の浄瑠璃が、江戸時代に様々な流派に分かれていきます。
沢住検校の系統は、薩摩浄雲という語り手から金平節、外記節が、
そして外記節から大薩摩節が生まれ、外記節と大薩摩節は長唄の中に残っていきます。
滝野検校の系統は、杉山丹後掾という語り手から肥前節が、
肥前節から半大夫節が、半大夫節から河東節が生まれます。
1657年に江戸の大火で劇場が焼失すると、浄瑠璃の中心は上方へ移り、
大阪の井上播磨掾の系統からやがて義太夫節が、山本土佐掾の系統から一中節が生まれます。
「古浄瑠璃」と「当代浄瑠璃」をどこで分けるかは、
「古浄瑠璃」という語に問題があるので、異なる考え方があります。
一般的によく言われるのは、近松門左衛門が竹本義太夫のために書いた「出世景清」という作品が、
それ以前の浄瑠璃と比較して新様式の画期的な作品であり、
義太夫自身が「当流」と名付けたこともあって、この作品を持って「当代浄瑠璃」が始まるということです。
しかしこれは、義太夫中心の考え方になるため、音楽学者の田辺尚雄は、
大阪に義太夫節、京都に一中節、江戸に河東節が現れる以前の流派を「古浄瑠璃」と呼ぶ説を取っており、
それ以降の流派を「当代浄瑠璃」としています。
古浄瑠璃の一般的な特色は、物語が非現実的かつ空想的で演劇的要素が乏しいこと、
音楽も物語の内容に忠実ではなく、旋律本位のものであったと考えられていることです。
古浄瑠璃の作品は一種の語り物、御伽草子のような読み物で、
大衆に理解されやすい叙事的、抒情的な平易で物語風な表現が多く、
戯曲といえるような内容ではありませんでした。
近松門左衛門による新しい浄瑠璃では、単なる叙述や詠嘆ではなく描写本位になり、
登場人物もその階級や品位、人柄の描き分けが重要になります。
文章についても、七五調一辺倒の韻文ではなく、大体の韻律を定めて、
あとは作曲者に自由な創作の余地を与えることを心がけるようになります。
また、古典の引用などは引き続きありましたが、当時の大衆社会の俗語、卑語、民謡などの表現も取り入れました。
構成の点では、古浄瑠璃が六段から成っていたのに対し、
当代浄瑠璃では能の五段組織に倣って五段構成が確立しました。
音楽についても、竹本義太夫は、古浄瑠璃の要素は受け継ぎながらも、
当時流行の民謡、俗謡、歌舞音曲を取り入れました。
単に叙事的、抒情的叙述による語り物の域を出なかったのが古浄瑠璃の時代で、
新しい時代のあらゆる文学的、音楽的表現を取り入れてより現実味を増し、
演劇の形を成したものが「当代浄瑠璃」ということになります。
少し古い書物ですが、黒木勘蔵の『浄瑠璃史』というものが公開されているので、参考にしてください。
(戦中の書物なので、西暦の年号が神武紀元で表記されています)
http://book.geocities.jp/ongyoku/j80/jouhou80.htm
その他に、星旭の『日本音楽の歴史と鑑賞』を参照しましたが、
代表的な参考書としては、田辺尚雄や吉川英史の日本音楽史があります。
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