■気をつけたい栄養バランス
まずは、高タンパク食品ブームの背景について聞いた。
「ひと昔前のダイエット方法は、摂取カロリーを減らすことに重点が置かれました。しかしここ数年は、糖質を控えてタンパク質を多く摂ることで筋肉量を維持、または増加し、脂肪をためない体作りをするトレーニング法が流行っています。そのため手軽に摂ることができる高タンパク食品として、サラダチキンやプロテインの人気が高まっています」(中村さん)
摂り過ぎのリスクはあるのか。
「サラダチキンに使われる鶏肉は、モモ肉より脂質が少ないムネ肉です。蒸し調理により余分な脂質も落ちるため、調理法でもカロリーが抑えられています。しかしタンパク質は、1日数回に分けて摂ることで効率よく吸収されるため、一度に摂り過ぎるのはおすすめできません。内臓に負担がかかる上、摂り過ぎた分は尿として排出され、脂肪としても蓄積されます」(中村さん)
では、プロテインはどうだろうか。
「素早くタンパク質が摂取できるプロテインは、トレーニング中の方などに人気です。しかし人工甘味料や香料などの添加物が含まれていることもあり、継続摂取した場合のリスクがないとはいい切れません。高タンパク食品は、自分の体調や体質、目的(体重を減らしたい、増やしたい、筋肉を増やしたいなど)に応じて、量や栄養バランスを考えて摂取して頂きたいです」(中村さん)
中村さんによると、1日のタンパク質推奨量は、成人男性約65g、成人女性約50gだそうだ。
「1日のたんぱく質推奨量を1日3回に分け、1食20g前後を目安に摂取する場合、鶏ムネ肉なら約100g(皮なし/生100gの場合、タンパク質23.3g)となります。サラダチキンのタンパク質を有効活用するためには、代謝を促すビタミンB群(ビタミン2、B6、葉酸)や、タンパク質の合成を促すビタミンC、亜鉛の補給が重要です。これらの栄養素に加え、腸内環境を整える食物繊維が豊富な野菜(その他植物性食品)を一緒に食べるとよいでしょう」(中村さん)
忙しい人も手軽に摂取できる高タンパク食品だが、食べ方にひと工夫が必要ということだ。
■おすすめのアレンジレシピ
サラダチキンやプロテインは、どのように食べるとより美味しく、栄養価を高められるだろうか。
「サラダチキンを食べる際には、ブロッコリーや小松菜、ほうれん草、春菊、水菜、ルッコラ、アスパラガス、ベビーリーフ、ミニトマト、きのこ類、ナッツ類、ごまなどを一緒に食べるとよいです。たとえば、小房に分けたブロッコリーをレンジで蒸し、適量の酢とすり白ごまをふりかけます。食べやすく割いたサラダチキンとあわせて『ブロッコリーのごま酢和え』にすると、栄養たっぷりの一品メニューになりますよ」(中村さん)
サラダチキンは、スープにもあうようだ。
「耐熱ボウルに食べやすく割いたサラダチキンと、ざく切りの小松菜、ミニトマトを入れ、かぶるくらいの水を入れて沸騰するまで温め、顆粒スープの素や麺つゆ、塩コショウなどで調味すれば、『小松菜とミニトマトのスープ』の出来上がりです」(中村さん)
プロテインは、バナナやキウイフルーツ、オートミール、豆乳、ナッツ類などとあわせると栄養バランスがよくなるとか。
「器にオートミールを入れ、豆乳などで溶いたプロテインをかけ、刻んだバナナやキウイを乗せて『プロテインシリアルボウル』にすると、食べ応えがあり満足感も得られます」(中村さん)
サラダチキンの調味液には、塩分や糖分、添加物が含まれているものが多い。表示を確認しつつ、味付けを調整すると、塩分も抑えられるだろう。ヘルシーな高タンパク食品を上手に取り入れながら、健康的な体づくりを目指してみてはいかがだろうか。
●専門家プロフィール:中村 美穂(おいしい楽しい食時間)
管理栄養士。料理家。フードコーディネーター。国際薬膳調理師。プラントベースフードアドバイザー。栄養士として乳幼児の食事作りや食育活動、子育て支援事業に携わる。2009年より料理教室を主宰。離乳食教室、食育講師のほか、書籍、雑誌、WEB記事、生協カタログ等へのレシピ提供、監修を行う。