裁判は現実でもやり直しが認められている。その回数は2回、つまり審理は3回行われる。1回目のやり直しを求めることを控訴、2回目を上告と呼ぶ。では控訴、上告と経て裁判をやり直し、判決が確定したあとに裁判をやり直すことはもう不可能なのだろうか。教えて!gooにも「証言が虚偽であると分かった場合、裁判でどのような手続きをしたら良いですか?」というタイトルで疑問が投稿されているが、今回は裁判のやり直しについて解説する。
■上訴、控訴、上告、抗告、特別抗告とは
裁判のやり直しについて専門用語が数多く登場する。そこで今回は富士見坂法律事務所の井上義之弁護士に専門用語の解説をお願いした。
【上訴とは】
「未確定の裁判について上級裁判所に再審理を求める手続(控訴、上告、抗告等)の総称です」(井上義之弁護士)
【控訴とは】
「第一審判決に不服がある場合に上級裁判所に対して再審理を求める手続です」(井上義之弁護士)
【上告とは】
「第二審判決に不服がある場合に上級裁判所に対して再審理を求める手続です」(井上義之弁護士)
裁判をやり直す場合、同じ裁判所ではなく、判決を受けた裁判所よりも上位の裁判所(上級裁判所)で審理をすることになる。ということは上告すればまだチャンスは残されていると考えて良いのだろうか。
「常にそうとは限りません。上告できるのは、憲法違反など一定の限定された理由(民訴法312条、刑訴法405条)がある場合に限られます」(井上義之弁護士)
つまり上告理由がないと争えないということだろうか。
「上告理由がなくても、法令の解釈に関する重要な事項を含む場合、上告が受理されることもあります(民訴法318条、刑訴法406条)。しかし、受理の保証はありません」(井上義之弁護士)
■抗告、特別抗告とは
では次に抗告と特別抗告の意味を伺った。
【抗告とは】
「民事裁判と刑事裁判でやや意義は異なりますが、判決以外の、裁判所がする決定等に対する上訴です」(井上義之弁護士)
【特別抗告とは】
「通常の不服申立ができない決定等について、最高裁判所に対して行う抗告です。民事では憲法違反、刑事では憲法違反及び判例違反がある場合に限り、することができます(民訴法336条、刑訴法433条及び405条)」(井上義之弁護士)
判決に対してではなく、裁判所が下した決定や命令に対してやり直しをもとめることだという。
■差し戻し、再審とは
一度受けた判決を上級裁判所で再度審理する。これらを上訴とするならば、逆に下級裁判所に戻して審理することはあるのだろうか。あるいは上訴を経て判決が最終的に確定した後、再度審理してもらうことは可能なのだろうか。
【差し戻しとは】
「上級裁判所が未確定の原判決を改める必要があると判断した際に、原裁判所にもう一度審理させることを言います。これに対して、上級裁判所が自ら裁判することを自判と言います。上告審では、差し戻しが原則です。差し戻し審では上級裁判所の判断枠組みに拘束されます」(井上義之弁護士)
【再審とは】
「確定判決について、一定の重大な事由がある場合に、再度の審理を求める手続です(民訴法338条以下、刑訴法435条以下)。確定判決が簡単に覆ると裁判の意味がない反面、絶対に覆らないとすれば正義に反する事態もありうるので、その調和を図る趣旨で再審の制度が設けられています」(井上義之弁護士)
三審制と言って、裁判は基本的に3回まで認められている。そして判決が確定した後でも、一定の条件を満たせばやり直すことは可能だ。裁判のやり直しはしばしば大々的に報道されるが、それが一体上訴なのか、あるいは差し戻しや再審なのかを判断することができればより、その報道に対する理解は増すだろう。
専門家プロフィール:弁護士 井上義之(第一東京弁護士会) 事務所HP ブログ
依頼者の置かれている状況は様々です。詳しい事情・希望を伺った上で、個別具体的事情に応じたきめ細やかなサービスを提供することをモットーに業務遂行しております。
記事提供:ライター o4o7/株式会社MeLMAX
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