■社会の変化で望まれる「選択的夫婦別姓」
多くの結婚を見届けてきた黒沢さんに、「選択的夫婦別姓」を求める人の意見を教えてもらった。
「婚活をしている人の中には、『夫婦別姓を選択できればもっと結婚しやすくなる』という意見が多いですね。そんな声が近年は特に増えていると感じます。女性側が希望するイメージがありますが、男性側にも賛成の声をあげる人が増加しています」(黒沢さん)
「女性が男性の姓に改める」ということが、当たり前に受け入れられなくなっているのだ。その背景には、どのような理由があるのだろう。
「大きな理由のひとつとして『女性の社会進出が進んでいる』ことがあげられます。フルタイムで働きキャリアを重ね、資産を持つ女性が増えています。名前を変えることで、さまざまな場面で変更手続きが必要となり、不都合や面倒な点が多いのです」(黒沢さん)
少子化が進んだことも、「選択的夫婦別姓」が推進される要因だとか。
「昔は『長男が家を継ぐ』という家庭がほとんどでした。しかし現在は少子化により、兄弟や姉妹がいない家庭が普通になりました。そのため女性であっても家を継ぐ必要があり、『自分の姓を残したい』というケースが増加したのです」(黒沢さん)
時代の変化により、働き方や家庭のあり方が変化している。従来の制度のままでは、改姓する側のデメリットが多いのだ。
■「選択的夫婦別姓」が結婚の後押しに?
黒沢さんによると、最高裁の判決に反し、「選択的夫婦別姓」に対し肯定的な意見の人が多いという。
「現制度にも『婿養子』や『養子縁組』というものがあり、男性が女性の姓に改めるケースがあります。しかし『選択的夫婦別姓』なら、男女ともに名前を変えなくて済みますよね。登録の煩雑さや家系の問題で結婚をちゅうちょしている人たちも、結婚に踏み出しやすくなるでしょう」(黒沢さん)
さらに、シニア世代の結婚、再婚に関してもメリットは大きいという。
「最近では『人生100年時代』ともいわれ、日本人の寿命が延びていることから、中高年の再婚も増えています。しかし、再婚して保険や年金の名義を変えるのは一苦労です。夫婦別姓が可能ならその懸念もなくなりますよね。こういった観点から、『選択的夫婦別姓』を希望する声が多くなっているのです」(黒沢さん)
現状の民法で夫婦別姓を希望する人は、「内縁関係」という選択をしなければならない。その場合、法律上では夫婦と認められず、子どもを持つことや相続などに関する多くの問題が生じてしまう。その結果、「夫婦別姓」を諦める人や、結婚自体を断念する人がいるという。「選択的夫婦別姓」は、そんな人達の問題をも解決する糸口となりうる。いろいろな場面で多様性を受け入れる必要が増えてきている昨今。この制度も時代に合わせたアップデートが求められている。
●専門家プロフィール:千葉結婚相談所 萌(めばえ)
1998年に設立され、23年間で300組以上の成婚実績を持つ結婚相談所。オンライン形式の入会やお見合いアドバイスなども行う。