■コロナ禍で生まれた新常識
挙式のスタイルはもちろん、そこに至るまでの準備やゲストへの対応はどう変化していくのだろうか。
「この時期、結婚式は難しいと思っている人が多いですよね。しかし相談に来られた方のうち半数以上は挙行を選択しています。やはり一生に一度のお祝いごとには変わりありません。“挙げない”という選択が定着することはないのではと感じています」(中西さん)
実際に多くの都道府県で、結婚式場は「社会生活を維持する上で必要な施設」と位置付けられているという。
「弊社もそうですが、式場探しや衣装の相談にオンラインでも対応しているサービスもあります。国が定めた『新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン』に準じて対策を講じている式場が多いので、安心して参加してほしいです」(中西さん)
中西さんいわく、これまでとは違ったスタイルでの挙式も生まれているとのこと。
「式中は引き出物を椅子の下に忍ばせておくことが常識でした。コロナ禍においては、床に直接置くのは不安ですよね。そこで、引き出物の宅配サービスを採用する新郎新婦が増えています。会場は自然が多い軽井沢や箱根など、少人数でゆったり行う形式が人気です」(中西さん)
オンラインでの顔合わせや挙式も浸透しつつある。その場合、料理はゲスト宅に配送されるとか。
「お見合いのかたちも変化しています。お見合いの1回目をオンラインで実施している結婚相談サービスもあります。それにより遠距離カップルが増え、結婚式は2人の地元の中間地で行われることが増えています。式の代わりに、ドレスを着て素敵なロケーションで写真撮影をする『フォトウェディング』の需要も高まっています」(中西さん)
コロナ禍という未曽有の事態により、ブライダル業界でも今までの常識が変化しつつあるようだ。
■感染対策に力を入れる式場
挙式を行う場合の心構えはあるだろうか。式場での具体的な対策とあわせて聞いてみた。
「感染対策の詳細をしっかりと参列者に伝えるとよいでしょう。コロナ対策について招待状に記載している式場もあります」(中西さん)
情報を明確に発信し、ゲストの意思を尊重することが大切だ。
「式場では、食事中以外のマスク着用の呼び掛けや、アクリル板、アルコール消毒スプレーの設置といった基本的なことは徹底して実施されています。受付を管理するアプリや、結婚式の様子を動画配信するサービスの導入など、独自の工夫を行っている式場もあります。密になる演出を避け、握手やハグ、お酌を禁止するといった新常識も生まれてきています」(中西さん)
式に招待された、もしくは親族の立場にある場合、どのような考え方で臨むとよいのだろうか。
「もちろん感染に対する心配はあるでしょう。ですが、大切な人の晴れの日をお祝いしたいという気持ちは変わらないと思います。まずはソーシャルディスタンスの確保や、マスクの着用、消毒、検温といったゲスト自身ができる感染予防対策をきちんと行いましょう。その上で、精一杯の拍手などでお祝いの意を伝えることが、なによりの心構えだと感じます」(中西さん)
一生に一度の舞台である結婚式。事情や考え方はさまざまであるため、「今は式に参加できない」「挙式はしないでおこう」と考える人もいるだろう。一方で、式場側も最先端の技術やサービスを採用し、感染対策に力を入れている。もし開催したり参加する場合は、今回うかがった話を思い出してみてほしい。
●専門家プロフィール:ブライダルナビ
東京・大阪に店舗を持つブライダル総合案内。結婚式の段取りから挙式やハネムーンまでウェディングに関する相談・案内を行う。結婚指輪やドレス、ブライダルフォトのプランも用意。