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小説の心理描写で、読者を登場人物の心裡に引きこむ、登場人物との一体感をねらった叙述法があります。
描出話法のように臨場効果をねらった手法ですが、日本語界での正式な名称あるいは通り名は何というのですか。

「実はな、敦賀まで、お連れ申さうと思うたのぢや。」笑ひながら、利仁は鞭を挙げて遠くの空を指さした。その鞭の下には、的皪として、午後の日を受けた近江の湖が光つてゐる。
 五位は、狼狽した。
「敦賀と申すと、あの越前の敦賀でござるかな。あの越前の――」
 【利仁が、敦賀の人、藤原有仁の女婿になつてから、多くは敦賀に住んでゐると云ふ事も、日頃から聞いてゐない事はない。が、その敦賀まで自分をつれて行く気だらうとは、今の今まで思はなかつた。第一、幾多の山河を隔ててゐる越前の国へ、この通り、僅二人の伴人をつれただけで、どうして無事に行かれよう。ましてこの頃は、往来の旅人が、盗賊の為に殺されたと云ふ噂さへ、諸方にある。】――五位は歎願するやうに、利仁の顔を見た。

A 回答 (4件)

「側写法」により特定の人物に焦点を当てた心理など情景描写を加味することで、その後の展開において読者に予感や期待、あるいは逆のどんでん返しなどへの導入や誘導を図る表現方法と見てはいかがでしょう。



田山花袋は「美文作法」において、「側からこっそり写す」という「側写法」に触れています。
三人称での「正写法」で記述された文章において、その内の特定の人物に「側面からそっと」フォーカスを当ててその表情描写や心理描写を施すことで、あたかも読者に親近感を抱かせる「接近法」と同様の効果を齎し、ひそかに筆者のペースに引き込みつつ、またも「正写法」に戻すことで、読者の受ける印象や共感を高める狙いが生きてくるのだと。

参考:永井聖剛「「無技巧」の修辞学的考察」(愛知淑徳大学論集)
http://aska-r.aasa.ac.jp/dspace/bitstream/10638/ …
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。そういった修辞法もあるんですね。
その修辞法をもとに昔の本を調べてみると、昔からいろいろな分類はあるようですね。ちょっと修辞方面の本も読んでみようと思います。

ちなみに、もう一人の回答者は私の知ってる人(もちろんネット上で)なので、我々のやり取りはお気になさらないでください。

お礼日時:2014/03/13 00:21

#2です。



>その修辞法をもとに昔の本を調べてみると、昔からいろいろな分類はあるようですね。ちょっと修辞方面の本も読んでみようと思います。
 :
それであればこれらの本などいかがでしょう。
1.
当時の「小学国語」を抜粋して、それぞれの13種の修辞法を実地に説明した有難いテキスト。
有松勘吉 [編]「修辞法の研究 : 小学国語読本巻一から巻六まで」鳥取県師範学校附属小学校教育研究会(昭和12)
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1094484
2.
日本の修辞学の第一人者の代表作
五十嵐力 著「修辞学綱要」啓文社(昭和10)
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1121764
3.
特に第3部「組織篇」は西洋修辞学をどのように日本は取り込んで行こうとしているのか、その真摯なチャレンジ精神に打たれます。
五十嵐力 著「常識修辞学 : 作文応用」文泉堂[ほか](明42.10)
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/864876
4.
英語修辞学の原典にしてスペンサーの文章哲学も圧巻。
増田藤之助 著「英語修辞学講義 : 英和比較 附・スペンサー氏文章哲学」丸善(大正3)
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/942945
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この回答へのお礼

以前回答をいただいたときから、ただの人ではないと思ってましたが、たいへんお詳しい方ですね。こういうのは図書館の職員に聞くよりその道の人のアドバイスの役に立ちますね。ありがとうございました。

お礼日時:2014/03/14 00:00

#1です。




>「いいようがない」のでしょうか?
>それとも正式にそう呼ばれているのでしょうか?

他にいいようがない、ということは、それ以外の呼び名はないということです。
学問用語がどうすれば「正式」になるのか存じませんが、デファクト・スタンダードではあります。





>『一般言語学講義』と「描出話法」の直接的な関係はあるのでしょうか?

全く何の関係もありません。
バイイがどういう人が紹介しただけです。



>「文体論を言語学の分野として整備する」なかで出て来たそうですが、
>どんな言語のどのような分野のテキストを対象としていたのでしょうか?

バイイはスイス人で、分析対象はフランス語の小説です。
描出話法 represented speech という用語を作ったのはイエスペルセンです。
デンマーク人の英語学者ですから、対象は英語の小説です。

そういう事情で、
英語畑→描出話法
仏語畑→自由間接話法
という傾向ができました。
ちなみにドイツ系では Lorck の体験話法 erlebte Rede です。

ただし、最近では英語圏でも自由間接話法の方が普通のようです。
Quirk の文法書で free indirect speech とされたからでしょう。


CiNiiで日本語論文の件数を調べてみました。

自由間接話法:74件
「中国語の自由間接話法について」
「夏目漱石『道草』における神の視点と自由間接話法」
「「物語世界の客体化」からみる自由間接話法の言語間比較」
「近代日本文学における自由間接話法の受容--田山花袋と井伏鱒二の場合」
「日本語フィクションにおける自由間接話法」など

描出話法:16件
「描出話法研究 Women in LoveにおけるHermioneの場合」
「描出話法の案内役 : 小説におけるnowについて」
「描出話法(Represented Speech)について」など

体験話法:69件
「カフカ作品における体験話法の文体的効果」
「G.パウゼヴァングの『みえない雲』における体験話法:なぜドイツ人はかくも反原発なのか? 」
「アンナ・ゼーガース『死者はいつまでも若い』の体験話法と内的独白」
「『徒然草』104段・32段の体験話法:ドイツ語訳・英語訳との比較研究」など




>>英語学畑の人は「描出話法」と呼ぶことが多いのですが
>「多い」とのことですがなぜ一定していないでしょうか?

学問の世界で、偉い人が集まって用語を決定するということがないからです。
あくまでデファクト・スタンダードなので、はやりすたりがあります。




>日本に言語学がなかったのはどうしてでしょうか?

1.学問が体系化し、科学が最初に成立したのがヨーロッパだったから。
2.サンスクリット、古典ギリシア語、ラテン語をはじめとして近縁の言語がたくさんあり、それぞれが古い文献を残していて、研究資料がたくさんあったから。



>在来の文献学は輸入学問としての文献学とちがうのでしょうか?

それほどは違いません。
古い文献を読むための学問ということです。
もちろん、言語が違うので、体系は違いますけど。

和算と数学の違いに近いかな?

この回答への補足

ありがとうございます。補足説明お願いします。


>CiNiiで日本語論文の件数を調べてみました。

ご自分で実際に手にした専門書や論文は皆無ということでよろしいでしょうか?

西欧の言語学を検索した結果なわけで、そこから外れる呼び名があったとすれば(ないと仰ってますが)、いま調べようがないわけですね?



>学問用語がどうすれば「正式」になるのか存じませんが、デファクト・スタンダードではあります。

デファクト・スタンダード は名称や通り名といかようにちがうものでしょうか?



>ドイツ系では Lorck の体験話法

ドイツ系とはドイツ語畑の日本人学者の間でということでしょうか?



>ただし、最近では英語圏でも自由間接話法の方が普通のようです。

英語畑の人たちにはまだ反映されてないのでしょうか?



>Quirk の文法書で free indirect speech とされたからでしょう。

なぜその文法書はなぜ影響力があるのでしょうか?



>全く何の関係もありません。
>バイイがどういう人が紹介しただけです。

紹介もあるのでしょうが、衒いの雰囲気づくりではないですか?
いつもの??
それはあまいいですが、なぜ読んでない本を、まったく関係がないと断言できるのでしょうか?



>バイイはスイス人で、分析対象はフランス語の小説です。
> 描出話法 represented speech という用語を作ったのはイエスペルセンです。
>デンマーク人の英語学者ですから、対象は英語の小説です。

どういった時代の小説が対象なのでしょうか?
また小説のジャンルも様々ありますが。



>学問の世界で、偉い人が集まって用語を決定するということがないからです。

どの分野もそうなのでしょうか?
「決定」はしなくても、学者間で用語の議論がないなんてことはあるのでしょうか?

英語畑なのにフランス畑の用語を用いる人は、どいういった理由からなんですか?具体的な用語使用の理由を述べてる人はいないのでしょうか?



>あくまでデファクト・スタンダードなので、はやりすたりがあります。

はやりすたりの例として、言語学の用語ではどんなものがあるのでしょうか?



>>>在来の文献学は輸入学問としての文献学とちがうのでしょうか?
上の問いかけに対して説明が漠然としていて呑み込めません。
もう一度お伺いします。

「それほどは違いません。」「それほど」ということは違いはあるんですね。どういった違いがあるのでしょう?具体的な例示をもとにお願いします。
「古い文献を読むための学問ということです」
比較的時代の新しい文献は対象にならないのでしょうか?
どこで線引きするするんですか?
「言語が違うので、体系は違いますけど」
「体系の違い」とは具体的にどんなものですか?

補足日時:2014/03/13 00:20
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ソシュールはご存じですか?


構造主義の父と呼ばれる人です。
この人の弟子にシャルル・バイイ Charles Bally という人がいます。
セシエとともにソシュールの『一般言語学講義』を編纂した人です。

このバイイは文体論を言語学の分野として整備することに努力しました。
その中で出てきた考え方の一つが自由間接話法です。
フランス語で style indirect libre あるいは discours indirect libre といいます。

これが後にイギリスに渡り、アメリカに広まり、フランス語を直訳して Free Indirect Speech、あるいは Represented Speech と呼ばれました。

その後日本にも広まりました。
フランス語学畑の人は「自由間接話法」と呼び、英語学畑の人は「描出話法」と呼ぶことが多いのですが、同じことです。

日本には万葉集や古事記などを読むための文献学(Philology)はありましたが、言語学はありませんでした。
明治以降に輸入されたのです。

言語学にしろ、文体論にしろ、物語論(Narratology)にしろ、輸入学問です。
日本語界での正式な名称あるいは通り名は「自由間接話法」あるいは「描出話法」としか、いいようがありません。

「主語」や「動詞」の日本語界での正式な名称あるいは通り名と同じで、舶来ものです。

この回答への補足

明確な回答をいただいていないようなので、補足説明お願いします。

>日本語界での正式な名称あるいは通り名は「自由間接話法」あるいは「描出話法」としか、いいようがありません。

「いいようがない」のでしょうか?それとも正式にそう呼ばれているのでしょうか?
回答者様の回答からはっきりしたことがわかりません。
なにか記載の参考書などご存じではないのでしょうか?



『一般言語学講義』と「描出話法」の直接的な関係はあるのでしょうか?

「文体論を言語学の分野として整備する」なかで出て来たそうですが、どんな言語のどのような分野のテキストを対象としていたのでしょうか?

>英語学畑の人は「描出話法」と呼ぶことが多いのですが
「多い」とのことですがなぜ一定していないでしょうか?

日本に言語学がなかったのはどうしてでしょうか?

在来の文献学は輸入学問としての文献学とちがうのでしょうか?

以上よろしくお願いします。

補足日時:2014/03/12 00:43
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