いちばん失敗した人決定戦

いままで「脊髄」とは、脳から末梢へ行く神経(軸索)が束になったものと思っていましたが、そうではなく脳の一部のようだと聞きました。
どうなのでしょうか。神経根・馬尾神経も含めて解説していただけないでしょうか。
あるいは、わかりやすく説明してあるWebサイトがあれば教えて下さい。

A 回答 (1件)

こんにちは。


「脊髄」といいますのは機能的にも解剖学的にも「中枢神経」と位置付けられており、中枢神経系の中では最も古い組織です。解剖学で「中枢神経系」と言いますならばその機能と系統発生に基づき、まず「脳(大脳から延髄まで)」と「脊髄」の二つに大別されます。ですから、厳密には脊髄というのは中枢神経ではありますが脳の一部ではありません。ですけど、基本的にはこの両方を含めた中枢神経系を末梢神経系と区分し、場合によってはこれを「脳機能」として扱いますし、高次の脳に対して脊髄のことを「生命の脳」などと言い表すことは幾らでもあります。
脊髄は脳幹を介して終脳まで、身体の中心を真っ直ぐに貫く神経連絡路であり、ここには脳と身体広域の末梢神経を繋ぐ無数の神経線維(軸策)が集まっています。ですが、脊髄が他の末梢神経系と異なる点は、ただ単に神経線維が通っているというのではなく、この組織が「中継中枢」としての役割を果たしているということです。

例えば大脳皮質・運動野からの命令伝達は一対の神経線維束(軸策の束)が「皮質脊髄路(錐体路)」となって真っ直ぐに脊髄を下向しています。ですが、この無数の軸策はそのまま身体の筋肉と直接に繋がっているわけではなく、そのほとんどが必ず脊髄内の「運動核(前角運動細胞)」によって中継されています。また同様に、身体末端から大脳皮質・感覚野に上向する感覚神経も一旦、脊髄内の「知覚性細胞核」によって受け取られます。
このような一次細胞・二次細胞といった中継構造は脊髄を介さない他の神経系にも見られますが、ここで広義の末梢神経と異なりますのは、脊髄といいますのは身体で特定の末梢機能に対応するものではなく、ここでは様々な神経連絡が一手に扱われ、「求心性神経(入力)」も「遠心性神経(出力)」も共に目まぐるしく行き交っているということです。更に、感覚神経系からの入力を受ける「知覚性神経核」には、それを高次中枢に中継するだけではなく、同じ脊髄内の運動性神経核に出力して「脊髄反射」を発生させるという情報処理の機能も備わっています。ですから、脊髄といいますのは機能的に見るならば生得的な本能行動を司る最も古い「生命中枢」と捉えることができるわけです。
このようなものが末梢神経とは異なる脊髄の「中枢としての機能」ですね。そしてこのため、脊髄の外郭は神経線維によって囲まれた「白質」ですが、その内部は細胞体の密集する「灰白質」となっており、解剖学的にも古くから中枢神経として分類されています。

縦に長い脊髄では全部で31対の「脊髄神経」が整然と出入りしています。このようにして全身に振り分けられる末梢神経の神経線維が脊髄の出入り口でそれぞれの束になった部分を「神経根」といいます。「馬尾」といいますのは「背骨の成長」によって「椎間口」の位置が下にずれてしまうため、そこを通って出入りする神経束が脊髄の末端を中心に下向きに広がっている部分を指すものでありまして、特に「馬尾神経」という名前の脊髄神経があるというわけではありません。
脊髄から出入りする「脊髄神経」の内訳は以下の通りです。

頚神経:8対
胸神経:12対
腰神経:5対
仙骨神経:5対
尾骨神経:1対

これ以外に、脊髄を通らない「脳神経:12対」があります。このように、我々の神経系には領域や機能の区分に対して合計43対の神経線維束があり、運動神経、感覚神経、及び自律神経を含めた身体広域に及ぶ末梢連絡は、その大半が脊髄を中継して振り分けられています。
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この回答へのお礼

ご回答有り難うございました。
びっくりしました。とても複雑で発生の歴史を背負っているのですね。
いままでの私の知識がいい加減であることがわかり恥ずかしい思いです。でも、いままでTVや新聞などでこのような解説を見たことがありません。あまりに専門性が高いからでしょうか。一般の人たちはどの程度知っておられるのでしょうかと思います。

それはともかく、脊髄の働きや大切さがおよそ理解できました。
質問してよかったと感謝しています。長文を有り難うございました。

お礼日時:2007/05/24 19:54

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