No.2ベストアンサー
- 回答日時:
私がボケてもツッコミを返してくれない。
寂しいです。自分でつっこんどきます。No.1回答で挙げた箇所ぐらい、ご質問者は当然知っている。知っているからこそ、「例のごとく」の例はどこに出ていた? と質問なさったのである。ご質問文でも”最初に”と強調している。
そこでお答えします。前例は出ていません。柏木が「うずくまる」ように坐ったという記述は、これが初出である。なぜ断言できるかというと、私は昔せっせと『金閣寺』を全文入力してテキストファイルの形で持っているからである。ひま人って言うな~。
丸谷才一だったと思うが、三島について「洗練のあげく衰弱した文体」と評していたような気がする。それほどまでに彫琢された文章なのだ。たくらみが張り巡らされている。三島は、初出なのにわざと「例のごとく」と書いたと思っていたほうがいいだろう。
柏木の内飜足や奇妙な歩き方は、前出である。主人公・溝口が初めて柏木と口をきいた時、柏木は校庭に坐った状態だったが、坐る動作の描写はない。「うずくま」「つくば」「蹲」「踞」「横坐」でも検索してみたが、柏木がうずくまったりつくばったり横坐りしたりするのは、これが初出である。「つくばう(蹲う)」は「うずくまる(蹲る、踞る)」の古い言い方である。
なお、ご質問文は「横座りに座った」とお書きになっている。しかし、トリビアリズムだが、三島は「坐」の字を用いている。辞書によると、もと「坐」は「すわる」、「座」は「すわる場所」の意味だそうだ。さすがに三島は使い分けている。また、昔の人は、椅子はすわるものじゃなくて「腰掛ける」ものだなどという。三島もほぼ使い分けているようだ。
それでは、「例のごとく」は三島のミスなのか。いいえ、三島をなめてもらっては困る。たくらみが張り巡らされているのだ。この箇所はその少し前の、「子供たちのボールが外れて、私たち二人の間へころがって来た。柏木は拾って返そうとして身をかがめかけた。」と呼応している。続けて引用すると、次の通り。
(引用開始)
意地の悪い興味が私に起り、一尺前にあるボールを、彼の内飜足がどんな風に活動して、彼の手につかませるかを見ようとした。無意識に私の目は彼の足のほうを見たらしい。柏木がこれを察した速さはほとんど神速と云ってよかった。彼はまだかがめたとも見えぬ身を起して私を見つめたが、その目には彼らしくもない冷静さを欠いた憎悪があった。
一人の子供がおずおずと近づき、私たちのあいだからボールを拾って逃げた。ついに柏木がこう言った。
「よし。君がそういう態度なら、俺にも考えがある。来月国へかえる前に、どうあっても、とるだけのものはとってみせる。君にもその覚悟はあるんだろうな」
(引用終り)
ひょんなことから、柏木の「身をかがめ」る動作が、金閣寺まで借金の取り立てに来る原因となる。そして取り立てた後、溝口の部屋で「うずくまるような」動作で坐った。つまり、原因時と結果時の動作が類似形になっている。「例のごとく」によって、次の(a)(b)を呼応させているのである。つまり、「例」と言ったって(a)の一例しかない。
(a) 「内飜足がどんな風に活動して」「身をかがめ」る
(b) 「うずくまるような動作でゆっくり横坐りに坐」る
呼応させて際立たせることによって、(a)(b)が、醜くさや意地の悪さの付きまとう溝口と柏木との関係の、比喩ともなっている。
さて、素直に読むと、「例のごとく……動作で」は習慣的動作を表すはずで、ご質問者もそう受け取った。また、たぶん柏木には「うずくまるような動作でゆっくり横坐りに坐」る習慣があると思われる。しかし、この作品では前出していないことが、検索により確かめられる。そもそも、三島が素直なはずがないではないか。それを言っちゃあおしまいだけど。
遅れて申し訳ありませぬ。懇切丁寧なご回答、ありがとうございます。
ともかく自分の読み落としでないことが分かり、ホッとしております。
(読み落としでない代わりに、誤読であったようですが^^;)
スッキリいたしました。
次三島作品を読む時は、三島先生の素直でない面を意識し、
細部にあまり捉われずに読もうと思います。
本当にありがとうございました!
No.1
- 回答日時:
主人公・溝口は金閣寺(鹿苑寺)の徒弟で大谷大学の学生だが、寺から出奔する。
その費用に、柏木から三千円(実質的には二千五百円)借りる。第八章。出奔は失敗して溝口は寺に戻る。溝口は金がなく、借金を返せない。柏木はあきらめず、金閣寺まで来て住職に談判し、住職から取り立てる。そのあと柏木は溝口の部屋へ寄って、「薄い座蒲団に、例のごとくうずくまるような動作でゆっくり横坐りに坐った」。
お探しのQ&Aが見つからない時は、教えて!gooで質問しましょう!
おすすめ情報
- ・漫画をレンタルでお得に読める!
- ・街中で見かけて「グッときた人」の思い出
- ・「一気に最後まで読んだ」本、教えて下さい!
- ・幼稚園時代「何組」でしたか?
- ・激凹みから立ち直る方法
- ・1つだけ過去を変えられるとしたら?
- ・【あるあるbot連動企画】あるあるbotに投稿したけど採用されなかったあるある募集
- ・【あるあるbot連動企画】フォロワー20万人のアカウントであなたのあるあるを披露してみませんか?
- ・映画のエンドロール観る派?観ない派?
- ・海外旅行から帰ってきたら、まず何を食べる?
- ・誕生日にもらった意外なもの
- ・天使と悪魔選手権
- ・ちょっと先の未来クイズ第2問
- ・【大喜利】【投稿~9/7】 ロボットの住む世界で流行ってる罰ゲームとは?
- ・推しミネラルウォーターはありますか?
- ・都道府県穴埋めゲーム
- ・この人頭いいなと思ったエピソード
- ・準・究極の選択
- ・ゆるやかでぃべーと タイムマシンを破壊すべきか。
- ・歩いた自慢大会
- ・許せない心理テスト
- ・字面がカッコいい英単語
- ・これ何て呼びますか Part2
- ・人生で一番思い出に残ってる靴
- ・ゆるやかでぃべーと すべての高校生はアルバイトをするべきだ。
- ・初めて自分の家と他人の家が違う、と意識した時
- ・単二電池
- ・チョコミントアイス
デイリーランキングこのカテゴリの人気デイリーQ&Aランキング
-
森鴎外の「舞姫」の感想を60...
-
森鴎外の「米食、脚気問題」に...
-
舞姫について
-
結婚前に美智子さまは三島由紀...
-
村上春樹は何故ノーベル賞を取...
-
三島由紀夫 『殉教』の中の理...
-
森鴎外 ペン・ネームの由来
-
日本の漫画家がノーベル文学賞...
-
バランス感覚に優れた人が多そ...
-
三島由紀夫の憂国についてです...
-
三島由紀夫 「仲間」
-
ボブ・ディランはいったい何が...
-
首吊りをしようと思っているん...
-
"I love you" をかっこよく翻訳...
-
日本文学における「近代的自我...
-
夏目漱石の「こころ」の「K」は...
-
夏目漱石の「こころ」について...
-
夏目漱石『こころ』はエゴイズ...
-
四字熟語、故事成語
-
芥川龍之介さんの「鼻」という...
マンスリーランキングこのカテゴリの人気マンスリーQ&Aランキング
-
舞姫について
-
森鴎外の「舞姫」の感想を60...
-
日本の漫画家がノーベル文学賞...
-
森鴎外 ペン・ネームの由来
-
三島由紀夫と川端康成はカップ...
-
三島由紀夫 『白鳥』の最後の一文
-
森鴎外の「舞姫」を読んだこと...
-
川端康成ってエロくないですか?
-
三島由紀夫さんの本を読んでみ...
-
森鴎外の「米食、脚気問題」に...
-
三島由紀夫の現在の知名度はど...
-
森鴎外の寒山拾得
-
田辺聖子さんの書いた森茉莉さ...
-
三島由紀夫の春の雪について質...
-
日本の作家『三島由紀夫』の生...
-
三島由紀夫
-
三島由紀夫は天才ですか?
-
筒井康隆はノーベル文学賞を受...
-
春の雪の鑑賞
-
世界で有名な日本人文学者とは?
おすすめ情報