No.2ベストアンサー
- 回答日時:
手元にある角川文庫「赤い館の騎士」に、訳者の鈴木豊氏が解説を書いています。
以下「」(かっこ)内は鈴木氏の解説を引用。
その中に1845年2月にウージェーヌ・ド・ミルクールというゴシップ作家が
「小説工場、アレクサンドル・デュマ会社」という弾劾文書を発刊した事件
が取り上げられています。
「ミルクールははじめ、自分もデュマの代作者になってひと稼ぎしようと思い、
ある小説の筋を持ってデュマのところへ売り込みに行ったが採用されなかった」
次に「プレス紙」の編集長に「デュマの小説ばかり掲載するのはけしからん」と
(自分のような)「才能ある若い作家のために紙面を開放すべきだという意見を
述べた」が取り入られず失敗におわり、そこで「小説工場」のパンフレットを公刊
した。
この文書の中でミルクールは「デュマの小説、戯曲の題名をいちいち挙げて、
これはだれの代作、これは誰の代筆、と作者の名前をすべて暴露して、」います。
「ここに名を挙げられた代作者は、アドルフ・ド・ルーヴァン、アンセ、
ブールジョワ、ガイヤルデ、ジェラール・ド・ネルヴァル、テオフィル・
ゴーチエ、ポール・ムーリッス、オーギュスト・マケなどであるが、これら
のうちでも、もっともデュマのために働いたのは最後のマケで、この事件の
おりにマケからデュマに宛に書いた手紙が残っているが、この手紙によると、
マケが代作した作品は次の八つである。」
「ダルマンタルの騎士」「シルヴァニール」「三銃士」「二十年後」
「モンテクリスト伯」「女の戦争」「マルゴ女王」「メーゾン・ルージュの騎士」
「この代作についてはデュマ自身も認めているので、じゅうぶん信用に足るもの
である」
「これらの傑作がマケの代作だっったからといって、デュマが大作家ではない、
ときめつけるのは速断である。あるデュマ研究家が、マケの書いた下書きと、
のちにデュマが手を入れて発表した作品とを詳細に比較検討して発表しているが、
これを見るとマケの下書きではしごく凡庸な小説が、デュマが手を加えたことに
よって実に生き生きとした、魅力に富んだ作品に変貌している。」
「画竜点睛という言葉があるが、天才とはまさに、画竜に目を入れてただの画を
生きた竜にするものの謂であって、こうしてみればデュマも、代作者の下絵を生か
した天才としての名誉は少しも傷つくことはないであろう。」
と、このようないきさつが記されています。ご質問にあるように多くの代作者を抱
えていたようです。
デュマは三百編近い作品を残したと言われていますが、翻訳のあるものが
ほんの少しなのが残念ですね。
どんぴしゃりの答えをくださって、本当にありがとうございます。こんなに詳しく教えて頂けて、助かりました。それにしてもデュマって、スケールの大きい人物だなあと、改めて驚いてしまいました。
No.1
- 回答日時:
明確な証拠は見つかっていないようですが、あり得ない
話ではない気もします。
漫画の世界だと“分業制”は結構定着していますし、時
には複数作家によるユニットがあえて個人名を使う例も
ありますね。
特に有名なのは何と言っても「藤子不二雄」でしょう。
他には「中原裕」「室山まゆみ」「伊万里すみ子」など
が知られたところ。
また、小説の方でも「岡嶋二人」「霧島那智」…などの
例があり、中でも特筆すべきは「エラリー・クィーン」。
ちょっと変わったところでは、ローリング・ストーンズ
のメンバーが共同作曲する時の名義「ナンカー・フェル
ジ」というのもあります(基本的にはミックとキースの
どちらか一人は入る)。
当時だったらいざ知らず、現在ではそういう作業方法も
テクニックのひとつとして定着しているわけですから、
事実であればむしろ「先見の明あり!」として評価すべき
なのかも知れません。
とても参考になりました。ありがとうございました。
エンターテイメントの場合は特に協同作業の持つ意味が大きいのかも知れませんね。新しい視点をくださったことに感謝しています。
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