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『されどわれらが日々』をお好きな方、おるいはお好きだった方、作品との出会いのエピソードや、お好きな理由、印象的な場面などを教えて下さい。

A 回答 (2件)

はい。

高校生のとき、柴田翔を愛読していました。10年の後、鳥の影なども読みましたし文学誌に連載
された作品も目を通しています。

まさか、この作品を語る場があろうとは思ってもみませんでした。だれも回答せず質問が取り消されない
ようにw とりあえずエントリーさせていただきました。

のちほど詳しく。・・ああ、今日はいい日だなぁ。
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この回答へのお礼

感謝申し上げます。

お礼日時:2014/12/11 12:10

書籍も手元になく記憶で書くことをお許し下さい。



この作品が芥川賞に選ばれた1964年、私はまだ小学校5年生でした。最初に読んだのはおそらく中学生の思春期の頃でしょう。薄いページ数の割にハードカバーで薄緑色の遺跡のレリーフがあしらわれた装丁の本を私は大学の下宿にも持ち込み、恋をするたびに読み返した思い出があります。
もう記憶も45年も前のことですから、擦り切れて他の記憶とまぎれているかもしれませんが、あえてたどれば、間違いもでてくるでしょうがお許し下さい。
最も印象に残っているのは、主人公と婚約した節子が主人公のアパートで食事をする場面。
「私、こうやっていつまでもあなたのお食事を作り続けるのかしら」
この言葉は、節子の気持ちが主人公でなく昔の恋人にあることを暗示する言葉なのですが、それに対して主人公は
「・・そうしてほしいんだよ。」
と答える
「それに、男と女が一緒に暮らすことって、それだけでかなりいいことなんだと思うよ」
とかなり、間抜けな発言をする。
このやりとりだけで、この二人の間にコミュニケーションがなりたっていないことが十分に伺い知れます。それも節子だけが悩み、主人公は意に介さず時間の流れのなかでごまかしていけるであろうと考えています。

その後節子は、主人公の元を去ります。(東北の教師になるという記憶と自殺という記憶が混在しています。)
コミュニケーションの溝は、長い「節子の手紙」で明かされます。
泣けますよね。男がひたすら節子を愛していても、人の心の溝は埋められない。
私は、節子はあの時代、あの小説を読んだ青年の心に共通の女性像として住み着いている
気がします。
「抱かれたことのない、接吻されたことさえない二十一歳! 何て醜いの!」と男の前で叫び、佐野に抱かれる。
同時期に実在した高野悦子という女子学生が残した詩と日記をまとめた
二十歳の原点という本も、節子の「物語」にオーバーラップします。

これは、作品文中にあったかどうか定かでないのですが、
主人公が節子への愛を自覚するきっかけを回想して述べるくだり
節子は自分の胸が大きくないことを気にしていて、そのことを主人公にいうと
主人公は「そんなことないよ」と否定しないで黙っている。歩きながら振り向くと
節子は後ろを向いてたたずんでいる。見るとセーターの胸のところをつまんで
幾度も引っ張っている。
それをみて主人公は抱きしめてやりたい衝動に駆られる。

佐野という友人は、おそらく主人公より男前で、少しも女に興味はなくて
純粋に革命を起こすことだけに熱中している。ともかく女な熱中する男の
姿に惚れるものだから。
ただ節子の教師であり共産党の信奉者であった佐野は、六全協以降
極左軍事冒険主義を転換し,今日の先進国型平和革命路線に踏出すことで
目標を見失う。

節子のような女性に惚れる。私が夢中になればなるほど、「私はこうやって
あなたの食事を作り続けるのかしら」という言葉が投げかけられる。
君は、まだあの男が好きなのか?
ありふれた幸せより、心を燃やす恋を求めているの?
平凡な家庭生活のなかで生活を安定させ、子供が成長し、所得も増える。
節子に似た女性は、どこかで過去に切り捨てた情熱の残滓に拘泥している。

私は、13歳の時から幾度も読んだこの物語を、自分の生き方の中でも
反芻した気がします。私の節子は、心の内に別れた男の思い出を抱えたまま
私と一緒になり、5年ばかりの蜜月の後に、子供が生まれて不仲になりました。
40歳を過ぎたあたりから、私の節子は野瀬と再会、2年ほど密会を続けて
いました。
「私はこうやってあなたに抱かれ続けるのかしら」
という節子の言葉に
「ああ。節子は俺の女だからな」

求めた心の絆とは真反対の言葉に、節子に似た女は傷つく。
手紙をかく代わりに、冬の晴れた土曜日に、不倫の事実の長い告白が始まる。

わたしのされどわれらが日々はこんなふうに終わりました。これほど私に大きな影響を与えた作品はありません。
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この回答へのお礼

御回答ありがとうございます。わたしもずいぶん長いあいだ作品から遠ざかっているので、8853954様と作品の記憶と微妙に異なっています。

いずれにしろ、時代を画した作品ですよね。再読してみようと思います。

お礼日時:2014/12/11 12:19

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