
■高品質なオリーブオイルの選び方
オリーブオイルの売場には通常、「エキストラバージンオリーブオイル」とピュアと称される「オリーブオイル」が陳列されている。それらの違いから聞いた。
「オリーブオイルは、品質により8つにカテゴリー分けされ、『エキストラバージンオリーブオイル』は最上位です。『オリーブオイル』は第5位に該当します」(中村さん)
「オリーブオイル」は加熱用、「エキストラバージンオリーブオイル」は非加熱用と聞くが……。
「『エキストラバージンオリーブオイル』は、熱に強く抗酸化力も強いので、炒め油として十分に力を発揮し栄養も豊富です。一方の『オリーブオイル』は、製造方法からほぼ栄養面は期待できません。加熱の有無にかかわらず、前者を使うことをおすすめします」(中村さん)
選ぶときのポイントを挙げてもらった。
「オリーブオイルの研究が進み、『光』が品質を損なう原因の一つであることがわかりました。開封前のボトルでも直接光が当たるだけで劣化が早まるため、『強い光が直射していない黒い遮光ボトルのもの』を選びましょう。さらに、年に1度(秋)の生産のオリーブオイルには、1年半の賞味期限が設けられることが多いです。そのため『賞味期限が半年以上残っているもの』を選ぶとよいです」(中村さん)
上記アドバイスに留意し、店頭でもできるだけ品質の高いオリーブオイルを選びたい。
■目新しいオリーブオイルの楽しみ方
オリーブ農園では複数の品種を植えていることが多いため、品種の掛け合わせで新たな風味を作り出す楽しみもあるようだ。
「青りんごの香りがする品種と青いトマトの香りがする品種を掛け合わせると、若草の香りやチコリの香りがするなど、複雑な香りが生まれます。添加物を加えずに苦味の強い品種とデリケートな品種などを掛け合わせることで、マイルドながら骨格のある新たな風味のオリーブオイルが生まれるのです」(中村さん)
実際、ブレンドやテイスティングに携わることもある中村さんは、新たに生まれたオリーブオイルの用途を考えるだけでワクワクするそう。
「これは皆さんにもできることです。2種のオリーブオイルを自分の好きな割合で混ぜれば、強すぎる風味が和らいだり、香りに華やかさが加わったりします。バジルやローズマリーのようなハーブを加えると、数日で香りのよいフレーバーオイルが作れますよ」(中村さん)
フレーバーオイルで下腹部などをマッサージすると、保湿効果やリラックス効果があるとのことだ。
■目新しいオリーブオイルの使い方
果物であるオリーブから作られるオリーブオイルは、野菜と相性がよいとか。
「ニンジンやサツマイモを皮ごと1.5cmの厚さに輪切りし、弱火で大さじ1.5~2杯程のオリーブオイルを加え、弱火でじっくりと焼いてください。素材が甘くなり、オリーブオイルの香りでニンジンの青臭さも消えます」(中村さん)
チャーハンや和食に加えると、さまざまな効果が引き出されるというから興味深い。
「オリーブオイルでチャーハンを炒め、仕上げに少量のごま油を回しかければ、ごま油の香ばしい香りが豊かに広がります。冷凍していた切身の塩鮭を焼くのであれば、小さじ1/3ほどのオリーブオイルをかけると臭みが和らぎますよ。味噌汁にも、オリーブオイルを小さじ1杯程加えると、油揚げを加えたようなコクが出ます。加熱するとオリーブオイルの香りは和らぎますが、普段の料理に合う香りという目線でオリーブオイルを選ぶと、より使いやすいでしょう」(中村さん)
オリーブオイルをイタリア料理だけに使うのはもったいない……。
まもなく搾りたてのオリーブオイルが市場に出回る時期である。今秋は高品質なオリーブオイルを入手し、さまざまな楽しみ方にチャレンジしてはいかがだろう。
●専門家プロフィール:中村 裕美
オリーブオイル・エンジョイ・プランナー。JOOP国際オリーブオイルコンテスト審査員。イタリア家庭料理研究家。イタリアの家庭で食べたシンプルな料理が引き立つオリーブオイルに感動しオリーブオイル専門家に。HP内の「1分間!オリーブオイル診断」がオイル探しに便利と好評。オンライン料理教室「くちーなHIROイタリア料理教室」も人気。著書3冊を出版。
画像提供:ピクスタ