No.3ベストアンサー
- 回答日時:
No.1 です。
私自身勉強中の問題で、判例・学説ともにかなり複雑な状況だとは思いますが、私には明確な整理ができていない状態です。
複製権と同一性保持権の関係でいえば、東京高判H12.4.25判時1724-124が参考になるかもしれません。この事案では、複製権侵害に関して、適法な引用(著作32条)にあたるから複製権侵害ではない旨判示した上で、その引用に当たって、引用した漫画のコマの配置が原作と異なる点で同一性保持権を侵害するとしています。(つまり、引用に当たらなければ複製権侵害にもなる。)
また、東京地判H11.3.26では、写真の無断複製と、氏名表示権・同一性保持権の侵害が争われ、いずれについても侵害が肯定されています。
したがって、複製権侵害かつ同一性保持権侵害という状況はあり得るものと考えられます。複製権は著作者の財産的権利であり、同一性保持権は人格的権利であるという前提に立てば、それぞれ別個に侵害の成否を判断するべきであるという結論になります。(著作権と著作者人格権を一元的にとらえる学説もありますが。)
次に、複製権と翻案権ですが、翻案とは、一般に、もととなる著作物に新たな創作性を付加することと解されています。したがって、創作性の有無がこれらを切り分けるポイントになります。新たな創作性が付加された態様での利用は翻案権でカバーされ、新たな創作性が付与されるにいたらない変更のみであれば複製権でカバーされるわけです。
翻案権と同一性保持権ですが、一般的には、同一性保持権の要件である「改変」はあらゆる変更を指し、翻案は上記のとおり新たな創作性を付加する変更であるとされます。
一般論というか、考え方としてはおおむね以上のとおりかと思います。
ただし、ご質問の設定では、何権の侵害とは判断できないでしょう。
「他人の作品をパクって」というのが、アイデアの部分に当たるのか、表現の部分に当たるのかは、ケースバイケースでの判断となります。たとえば、最一小判H13.6.28民集55-4-837では、作品のうちどの部分がアイデアで、どこからが表現であるのかが争われています。
「ほんのちょっとだけ表現を変えて」というのも、それが作品の本質的部分であれば翻案に当たる場合もあるかもしれませんし、そうでなくとも同一性保持権の侵害に当たる場合はあり得ます。たとえば東京高判H3.12.19知財集23-3-823など。
「自分の作品として発表したら」という点については、むしろ氏名表示権の問題かと思います。もちろん、複製権・翻案権・同一性保持権に関しては、別途判断されることになるでしょう。
>>「自分の作品として発表したら、複製権侵害にはなっても、同一性保持権侵害にはならない」//
ということはありません。著作物について著作者が有する著作権・著作者人格権は、それぞれが競合的な権利ではないからです。複製権を行使したからといって同一性保持権が行使できなくなるわけではありません。(上で少し触れたように、著作権と著作者人格権を一元的に理解すると、それぞれの権利について、一部分競合するところも出てくるかもしれません。)
長くなりましたが、結論的には、「体系的に理解するのは非常に困難で、ケースバイケースという感が強い」ということになるでしょうか。
再度のご回答ありがとうございます。
粗雑な質問に対し、たいへんていねいな回答をいただき、心から感謝します。たいへん勉強になり、役に立ちました。
No.4
- 回答日時:
#2です。
#3を読んで自分の結論付けの安直さに恥じ入ってしまいました。決して感覚だけで回答した訳ではないのですが、Yorkminsterさんの論の展開を見て感服しました。 再度の書き込みありがとうございます。
#3に感服したのは#2さんだけではなく「私も」ですが、「#2があったからこそ#3が生まれた」ということも考えられます。いずれにせよ、お世話になりました。
No.2
- 回答日時:
複製権侵害だと思います。
「自分の作品として発表」ということは、自分が著作者であるというこを主張している訳ですから、「他人の作品」と並んで2つの著作物が存在することになり、そのうちの1つの著作物がもう一方の著作物を複製し(パクっ)ているため複製権侵害となると思います。同一性保持権侵害は、1つの著作物の利用形態について、著作者が意図していない変更等がなされて利用された場合に起こることですので、「自分の作品として発表」する事は出来ず、その時の著作者名はあくまで元の「他人」である必要があると思います。
ご回答ありがとうございます。
ご回答をまとめると、
同じ行為でも
自分の作品として発表→複製権侵害
元の「他人」の作品として発表→同一性保持権侵害
ということでしょうか。
いいかえれば、「自分の作品として発表したら、複製権侵害にはなっても、同一性保持権侵害にはならない」ということでしょうか。
No.1
- 回答日時:
複製権に関して、まったく同一のものを再製しなければ当たらないとする考えがある反面、完全に同一のものでなくても、その本質的な部分が同一であれば「複製」に含めるとする考え方もあります。
また、同一性保持権についても、その要件の1つである「改変」に関して、実質的な同一性を損なわない変更は当たらないとする考え方がある反面、何らかの違いがあればすべて当たるとする考え方もあります。
なお、翻案権の問題もあります。これに関しては、複製か翻案か、あるいは同一性を損ねたか翻案か、という線引き問題があります。このあたりは、かなりケースバイケースである感がありますので、一概に何権の侵害とは言い切れないと思います。
さっそくのご回答ありがとうございます。
ご回答の初め2段落でいくつかの考え方を示していただきましたが、これらはすべて学説でしょうか。1つでも2つでも判例があるのでしょうか。もしあれば、事件番号などをお教えいただければ幸いです。
翻案については、「元の著作者名の表記がない状況で、次の3つの可能性がある」ということでよろしいでしょうか。
複製
同一性を保った翻案
同一性を損ねた翻案
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