No.4ベストアンサー
- 回答日時:
> そもそも「小説」とは何なのでしょうか?
これは、あなたが何歳で何をやっているか、何のためにこの質問をしたかによって、答えは変わってきます。
あなたが五歳なら、「小説っていうのはね、お話のことよ」と言えばすみますが、十歳だったら「物語」と「小説」のちがいについて、答えるこちらも頭を悩ませなければなりませんし、高校生だったら石原千秋の『大学受験のための小説講義』を「これに出てくる問題はちゃんと紙と鉛筆出してやるんだよ」と言いながら勧めるだろうし、文学部に入ったばかりの学生なら、ジョナサン・カラーの『文学理論』とテリー・イーグルトンの『文学とは何か』を渡して、あとは勝手にするように言えば終わります。
そうではなくて、社会人で、小説はすごくたくさん読んでいるというわけではないけれど、まあ一ヶ月に一冊くらいは読み、それなりにおもしろいと思っているんだけど世に言うブンガクというのもそれほど読んではいないし、読まなきゃいけないような気もするんだけどなんだかむずかしそうだし、最近の芥川賞とかってちっとも読む気になれないし……という方であると勝手に想定して、回答をします。学生は、こんなもん読んでないで、カラーとイーグルトンを読むように。
簡単に言うと、小説は「物語の束」です。
ひとつの小説に、いろんな物語がつまっている。
これはわたしの独創的な考え、と思ってくださってもかまいませんが、ほんとうはそうではありません。ただ、ここではなるべく専門用語を使わないで、簡単に書いてみたいと思います。
『坊ちゃん』は読んだことがたぶんおありだと思います。あれにもそれはそれはたくさんの物語が詰まっています。
単純だけれど正義感の強い主人公が、悪い奴らを懲らしめる物語、でもあるし、あるいは、正義の発露は現実の前では敗北するという物語でもある。あるいは、ひたすら坊っちゃんを信頼し、愛する清と、その清の愛に応え、自分の家の墓に入れてやる坊っちゃんの愛の物語でもある。そのほかに、地方差別の物語といってもいいし、もしかしたら、女性に対する蔑視をかぎとっちゃう人もいるかもしれないし、とにかくひとつの小説にはいろんな物語が詰まっている。それをできるだけたくさん見つけるのが、小説のおもしろさだとわたしは思います。
ただ、これにはトレーニングがいる。
物語というのはどういうことかというと、
・誰がどうした
であり
・どうしてそれをしたか(そうなったか)
ということでもあります。
これを小説の中から見つけてやらなくちゃいけない。
そうして、学校の国語の授業と設問というのは、これをひとりで見つけることができるようにする訓練ということです。
たとえば下で『山月記』をあげてらっしゃる方がいますが、『山月記』といえば、「李徴がどうして虎になったのか」の原因を探すのが定番です。
そうしてその理由を「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」に求める。
これがわからなくちゃ、やっぱり『山月記』は読んだことにはならない。
ただ漠然と読んでいただけではよくわからないままになってしまう。それだとせっかく読んだのにもったいないと思いませんか?
そんなふうに、学校では問題をたてて、その答えを見つける、という読み方の基本を教えてくれます。
ただ、わたしは『山月記』の物語はそれだけじゃないと思っています。
だって、「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」というのは、虎の描写はあまりに美しいから。特に、走っていって、虎になるところの描写なんて、読むと血がざわざわしてくるくらいです。だから、わたしはこれを「詩を作る物語」であると読みます。
なんでそう読むか、ここで書くと回答が終わらなくなっちゃうからやめますが。
そんなふうに小説は最低限読んでおかなければならない物語がまずあって、そこから「自分だけの物語」を見つけていくことが可能なんです。できるだけおもしろい物語をひとつの小説の中から見つける。それは小説読みの醍醐味と言えると思います。
それからもうひとつ。
学校というところには、もうひとつの側面があります。
子供がこの社会の一員となれるように、訓練し、仕立て上げていく、という側面です。
学校の物語は○と×をつけていきます。つまり、正解がある。そうしてその正解は、あくまで社会の規範に沿ったものです。
たとえば『走れメロス』、あれはどう考えてもホモセクシュアルのにおいが否応なくする(とわたしは思う)のですが、そんなことを学校では言っちゃいけません。あくまでも、学校の読みでは、「友情」です。
わたしたちは「どうしてメロスは殺されるとわかっているのに必死で走ったのですか」という問いに答えながら、学校という社会では、どういう答えが期待されているかを学ぶのです。そうやってわたしたちは、はっきりと名文化されているわけではない社会規範を学んでいく。ここではこういうことを言ってはいけない。ここではこういうふうに考えなくてはいけない。ここではこういうことが正しいとされる。
国語の問題が一種の道徳を問うものである、と石原千秋は『秘伝 中学入試国語読解法』のなかで指摘しています。
小説は本来ならどう読んだってかまわないのに。小説からどのような物語をみつけても、それをひとに話して納得してさえもらえれば、それは「正しい」読みなのに。
にもかかわらず、○と×がつく、ということには、子供を「規範を受け入れ、それに従う主体」へと育成する、という目的があるんです。
それが学校という場で、小説を学ぶ、もうひとつの理由です。
けっこういろんなことを雑多に書いたので、内容が薄い割にはわかりにくいかもしれません。詳しく聞きたい点とかありましたら、補足要求してください。
学生の方でしたら「物語の束」は、ジェラルド・プリンス『物語論辞典』(松柏社)を読んで、補足要求しないでください(笑)
No.3
- 回答日時:
#2です。
訂正と補足をさせてください。
安部公房の『棒になった男』は戯曲作品でした。
私が教科書で読んだ短編小説は
そのもとになった『棒』という作品のほうです。
ついでにもうひとつ思い出深い作品を。
それは中島敦の『山月記』です。
たぶん国語の教科書で出会わなければ,この作品を十代で読むことはなかったでしょう。
文学なんてものには縁遠いように見えた女性が
心に残る小説として『山月記』の名前を挙げたとき,私は彼女に惚れ直しました。
彼女も十代のとき,それを教科書で読んだのでした。
妻ですが。
No.2
- 回答日時:
小説とは何かと問われたら,
「嘘を通して真実(と感じられるもの)を描く散文形式の文学」と答えます。
国語教育における文学偏重には私も以前から疑念を抱いていました。
しかし同時に,国語教科書の中で出会った文学作品,
たとえば吉行淳之介の『童謡』とか,
安部公房の『棒になった男』といった短編小説が
その後の私の人生に少なからぬ影響を与え,
30年以上経ってもなお心に残っているという現実があります。
読書の習慣を持たない多くの児童・生徒にとって
国語教科書が文学の世界への誘惑者になる(こともある)というのもまた事実だと思います。
国語教科書を侮るなかれ,というのが私の結論です。
No.1
- 回答日時:
問題を出して解かせるためです。
右線部のそれとは何をさしているか。120字以内でまとめよ、の類。
鑑賞といってもせいぜい感想文程度でそれは作文の範疇。ま、教師に
議論してまとめるだけの能力がないだけです。
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