お世話になります。
大学生のとき、卒論で芥川を扱いました。
そのときに、先行論文やら専門書をかなり読んだのですが、現在は文学とは無縁の生活を送っており、残念ながら全く記憶に残っておらず質問させて頂きます。
芥川自身、日本文学、古典、中国文学、西洋文学などありとあらゆる文学に精通した大変な読書家であったと記憶しています。
そして、そこで培われた知識が、新現実主義とか芸術至上主義とか評される文学を作り上げていったのだといわれていると思います。
その際、彼の作品執筆における姿勢を「人生は一行のボードレールにも若かない」といった彼自身の言葉で表すこともありますよね。
日々生活していて、大げさですけども”人生”いう単語をたまたま思い浮かべたとき、この芥川の「人生」という文字を思い出したのです。そして、執筆面では↑というような流れ(?)を思い出すことができました。
が、書くのではなく読書家芥川という側面でも、確か何かを見かけたなぁと思ったのですが、どこで見かけたものやら思い出せません…。
それは次のような内容です。
芥川は、あまりに沢山の本を読み、あまりに沢山の知識を本から得た。そのため、人生を本から学んでしまった。よって人と交われず、窮屈な人生を送り、結果自殺してしまった。
もし、もっと外に目を向けたら生の体験を様々にでき、対処能力もできて死ぬことはなかったのではないか。
この内容のまま、とは限らないのですが、おおよそこんな感じだったと思うのです。少なくとも「本から学びすぎた。それがなければなぁ…」といった内容ではあったような…。
この意見が、どういったもの(論文、本など)に載っているかを知りたいのです。
もしかしたら一般的意見過ぎて、あちこちで見られるものなのかもしれませんが、そうであれば、そのうちの一つでも構いません。
もう一度芥川に触れる足がかりにしたいと思っています。
お詳しい方いらっしゃいましたら、よろしくお願い致します。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
書斎の人だったため、実生活での「対処能力」を欠いたという見方は読んだことがないので回答できませんが、本から人生を学んだことと、芥川文学の〔物足りなさ〕とを結びつける批評はよく見られます。
例えば中村真一郎『芥川龍之介の世界』(角川書店)。
文学生活に入るまえの、いわゆる世間的の苦労の経験は彼にはなかった。大学を出て就いた職業も語学の教官という、静かな知的職業であり、それも二年でやめると、彼は全く書斎の人となった。
従って彼の作品には、広い社会的展望を持ったもの、多様な人生図、深刻な生活の闘争などはほとんど見られない。その代わり、異常なほどの多読家であった彼は、ほとんどもっぱら書物に題材を求め、その書物も古今東西にわたっていた・・・(P178)
なお中村は芥川文学の〔物足りなさ〕を認めつつも、作家それぞれの持ち味の違いとして肯定的に見ています。
「本から人生を学んだ」ということにつては、本人も自伝的作品(『大道寺信輔の半生』)の中で語っています。
こう言う信輔は当然又あらゆるものを本の中に学んだ。少なくとも本に負う所の全然ないものは一つもなかった。実際彼は人生を知る為に街頭の行人を眺めなかった。寧ろ行人を眺める為に本の中の人生を知ろうとした。それは或は人生を知るには迂遠の策だったのかも知れなかった。
ちなみに「彼は源氏物語を一晩で読破できた」というのを何かの本で読んだ記憶があるのですが(彼ではなかったかもしれません)検索しても見つかりませんでした。ですが、多くの多読家がそうであるように、やはり速読家だったようです。
http://www.srs21.com/sokudoku/about/003akutagawa …
cryfortyさま、ご回答有難うございます。
中村先生のお名前、凄く懐かしいです。タイトルを見て思い出しましたが、『芥川龍之介の世界』も「大道寺…」も思いっきり読んだと思います…;覚えてなくて情けない…。
彼自身の作品にもそういえばそういった趣旨のことが出てきますよね。もしかしたら、該当作品の先行論文に当たってみるのも良いかもしれない…と、cryfortyさまのご回答を見てひらめきました。
お世話になりました。
No.1
- 回答日時:
芥川は読書家であったかどうか走りませんが、あの時代の
知識や知識階級は今と比べれば数も少なく世界も狭いもの
です。35歳で死んだ芥川がどれほど読書三昧をしたとこ
ろでたかが知れています。ただし、日本の古典や英国の
一部インテリの知識には触れていたでしょう。しかし、そ
の権威と言うほどの知識があったかどうか怪しいものです。
漱石はある時期洋書ばかり読んでいたと自分でも言ってい
ますが、その能力がいかほどかはロンドンに行って周りの
人間が何を話しているのか分からずノイローゼになったこ
とからすればたいしたこともなかったといえるでしょう。
しょせんは時代の知識人です。あの時代はいまのような
情報氾濫の時代とはまったく違うことに注意すべきでしょう。
ecoshopQさまご回答有難うございました。
研究には、対象への愛情も必要でしょうが、冷静な判断も非常に大事だと思っています。
これから、芥川について少しずつ考えていけたらいいなぁと感じているところですが、その際にも多角的で客観的な視点も持つように心がけようとecoshopQさまのお答えを拝読して思いました。
お世話になりました。
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