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ドラマ「霧の旗」を見ました。
今まで何度も映像化されているようですが、今まで興味が湧かず見た事がありませんでした。
小説の方も、何故か読まずに今まで来てしまいました。

そこで質問なのですが、先日のドラマだと、桐子さんがあそこまでの行動に走るのはどうも納得がいきませんでした。
確かに必死の思いでお願いしたにも関わらず、弁護してもらえなかったわけですが、弁護士の方が、ああいう話を全部聞いていられないのはしかたない事だとしか思えませんでした。
むしろ、桐子さんの逆恨みのようにすら感じられました。
原作だと、もう少し納得できるような理由が語られるのでしょうか?

A 回答 (1件)

 原作でも納得のいくような説明は一切されません。

ラストにも何の救いもなく、弁護士は破滅して全てを失い、無実で罪で投獄された愛人もそのままで、無事に復讐を遂げた桐子が東京から姿を消して物語が終わります。そのため、結局の所、事件の真相が何だったのかは明らかにされないまま終わってしまいます。

 はっきり言えばかなり異様な作品であり、どう考えても桐子の行動はただの逆恨みでしかないです。逆に言うならこの理不尽さがこの作品の持ち味と言えるでしょう。桐子はこの物語の主人公ではなく、むしろ悪役です。何も悪いことをしていないにもかかわらず、狂気のストーカー女にまとわりつかれ、破滅してしまった一人の人間の悲劇を描いたのが『霧の旗』でしょう。
 原作では大塚には全くと言っていいほど落ち度はありません。決して悪人に描かれているわけではなく、弁護の依頼を断ったことも詳細に理由が説明されており、十分に納得できます。やましいことは全くないです。にもかかわらず、最終的に破滅させられるわけで、誰でも落ち度がないにもかかわらず、いきなり理不尽な理由で破滅してしまうことがあるんだという恐怖を描いた作品とも言えます。
 ただ、実際に読むと何か大塚が弁護を断ったのは悪いことで、不思議に桐子にも一抹の理があるようにに感じられてしまうあたりが、清張の筆力でしょうか。悪女物を多く書いている清張の中でも『霧の旗』の桐子は「清純派悪女」とでも言うべき一風変わったキャラクターとして異彩を放っています。

 しかし、映像化すると桐子は悪女ではなくヒロインとして位置づけますし、実在の役者が桐子を演じると生々しくなってしまい、どうしても桐子の偏執狂的異常さ、理不尽さ、冷酷さが目に付いてしまいます。そのため、例えば大塚を復讐されても仕方のないような悪徳弁護士に仕立て上げるなど、原作を改変することが多いです。今回のドラマではラストで真相を明らかにして大塚と愛人を救っています。そうでもしないと、同情されるべきは大塚であり、桐子はサイコっぷりのみが印象に残って、大変に後味が悪くなってしまったと思いますが、それが故に作品バランスがおかしくなってしまったことは否めません。

 とにかく清張としてもかなりの異色作であり、異様な作品であり、大変に奇妙な作品なのは間違いありません (^^;)。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。
なるほど!桐子さんの位置づけは、悲劇のヒロインではなく悪役だったのですね。
読書は好きなのですが、何故か松本清張さんの作品は「点と線」くらいしか読んだことが無く、「砂の器」すら読んでいないのです。
それで勝手な想像で、今の今まで「霧の旗」は桐子さんという可哀相な女性の復讐劇だとばかり思っていました。
そういう先入観でドラマを見たので、違和感ばかりが残る結果となってしまいました。

大変分かりやすく説明していただき、ありがとうございました。
謎が解けました。機会があったら小説も読んでみたいと思います。

お礼日時:2010/03/19 21:04

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