2006年に指揮者の西本智美さんが指揮したことで、日本でも話題になったチャイコフスキーの
未完の交響曲「ジーズニ」について知りたいのですが・・・。
チャイコフスキーはこの交響曲の第一楽章だけを作曲して、曲を放棄し未完に終わっています。
そののちに1950年代にセミヨン・ボガティリョフという人によって、補筆、完成されているのですが、また新たに2000年代に、ピョートル・クリモフという人が補筆して完成したと何かで読みました。
このように、異なる年代に全く別の人が補筆して、楽曲の整合性に問題が生じたりしないのでしょうか? それとも、その二人が補筆したものはそれぞれ別のバージョン・・ということになるのですか? だとすると、補筆する人の数だけ曲が存在するということになってしまうと思うのですが・・。
また、第2楽章以降は、ピアノ協奏曲第3番の第3楽章などに使われるはずであったモチーフを
使っていると何かで読んだのですが、ピアノ協奏曲のために使おうと思っていたものであれば、
「ジーズニ」に使われることはなかったのでは? という疑問が生じてしまいます。
このような補筆を大作曲家の曲などにするということは、別に珍しいことではないのでしょうか?
(たとえばシューベルトなどは未完のままです。)
また、補筆というものは、どの程度まで許されるものですか?
「ジーズニ」について詳しい方、作曲などをなさる方、回答お願いします。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
専門家ではありませんが、ANo.1さんに続いて個人的な意見を参考までに述べさせていただきたいと思います。
おせっかいだとは思いますが・・・(^^ゞ
>>2006年に指揮者の西本智美さんが指揮したことで、日本でも話題になった・・・
その模様がDVDになって発売されるようですね。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/4952268
商品紹介にも若干この曲のことについてふれられていますね。「ロシアが国家的プロジェクト」と
書かれていますから、今後はクリモフ氏が補筆した版が「公式な作品」ということになるのでしょうね。
>>異なる年代に全く別の人が補筆して、楽曲の整合性に問題が生じたりしないのでしょうか?
それとも、その二人が補筆したものはそれぞれ別のバージョン・・ということになるのですか?
emlleismanさんの推測通り、そういうことになると思います。どちらが「正しい」ということは
ありません。選択は演奏する側(主に指揮者だとは思いますが)委ねられます。
>>だとすると、補筆する人の数だけ曲が存在するということになってしまうと思うのですが・・
これもそのお考え通りです。今後も「オレはこう思う!」というチャレンジャー精神に溢れる人が
現れれば、新たな解釈の楽譜が作成され、世に問われることになると思います。
このような未完成作品の補完、補筆についてはクラシック音楽において有名な作品がいくつか
存在します。まず代表的な作品が
ANo.1さんも挙げられている19世紀末から20世紀初頭に活躍した作曲家グスタフ・マーラーの
最期の交響曲「第10番」です。
この曲は最初の第1楽章しか作曲家自身が残していません。そのあとの楽章は本人の構想や
スケッチの断片から他者が補筆、完成させています。
あえて公式なもの(?)となるのは「クック版」という楽譜ですが、この他にも何人もの学者が
自分なりの解釈で補筆させているものがあります。
マゼッティ版、ホイーラー版、クルシュネク版、カーペンター版、サマーレ&マッツーカ補筆版、
バルシャイ版が存在しほぼ全てCD化されています。
それぞれの曲の違いは大きく隔たりがあるものではありません。曲想やテンポ、使用する楽器と
それぞれ受け持つパートや演奏法に若干解釈が異なる程度なので、専門家でもなければ相違点を
細かく指摘出来ないでしょう。
これも同様にモーツァルトの遺作とされる有名な「レクイエム K.626」も、作曲家死去のため
「未完」となっている作品です。
ですが、現在では曲は完成されています。理由は弟子や学者が(勝手に?)補筆しているため
です。この曲も主なもので4つくらい補筆バージョンがあります。これもCD化されています。
某有名レコード店で店員さんに「置いてますか?」と尋ねたら、「全部ありますよ。」と言われた
ので、思わず買ってしまいました。
また、例として挙げられていたシューベルトの「未完成」も補筆されたものがあるんですよ!
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3835470
( どこかのオーケストラ、生演奏してくれないかなぁ~ )
最後にベートーヴェンの交響曲第10番なんてのもCD化されてますよ~
「もう、キミいい加減に しなさいっ!」ってツッコミたくなりません?
以上が私の回答です。失礼しました。(^ ^)
交響曲などの音楽の楽曲にも、シェイクスピア作品みたいにいろんなバージョン
があるものがあるんですね。まだ、どんどん増えるんじゃないでしょうか・・・。
マーラーの交響曲第10番も第一楽章しか作曲されていない、ということは残りの
すべての楽章が補筆だということですが、そうなると補筆の部分のほうが作曲者自身
が作曲した部分より多くなっているわけです。
チャイコフスキーの楽曲もそうですが、そうなってくるともう大作曲家のオリジナリティが
ほとんどないといってもいいのでは・・・。
特に、チャイコフスキーは第一楽章でさえほかの楽曲にしようとしていたことから、
第一楽章を作り替えようとしていた可能性があります。だとすると、交響曲の主題ですら
決まっていなかったという事になり、この楽曲に関しては、曲の構想そのものが
まるで五里霧中・・なのではないでしょうか?
いずれにせよ、いろんな人がそれぞれいろんなバージョンを作曲したがるのがわかるような気がします。
No.1
- 回答日時:
こんにちは。
私は一般のクラシック音楽愛好家で,実際に「ジーズニ」を聴いたことはありませんし,作曲もしませんので,あまりご参考にはならないかもしれませんが。
チャイコフスキーは,交響曲「ジーズニ」の作曲を始めたものの,それを交響曲として完成させることを断念し,ピアノ協奏曲第3番に形を変えて作曲を続けた,というのがジーズニとピアノ協奏曲第3番の関係だったと思います。(結局,ピアノ協奏曲第3番も未完ですが)
その辺から考えると,ジーズニの補筆にピアノ協奏曲第3番の素材を使う,というのは,一応すじは通っているかもしれません。また,違う補筆者が完成させた今回の「ジーズニ」は,これまでのものとは別の作品として扱われることになると思います。例えば,モーツアルトのレクイエムには,あまり一般的ではないですが複数の補筆者による完成版もあり,そのような特殊な版を使っているものは,別作品として分けて扱うケースが多いと思います。
補筆部分の正統性・整合性・納得性,等々をどう考えるかは,難しい問題と思います。
オリジナルがどこまで残されているか,作曲家自身に完成させる気があったのかどうか,実際の補筆の出来映えがどうか,等々により,作品の正統性は総合的に(あるいはなんとなく?)印象づけられているのかな,と漠然と感じています。
*実際には,誰かが正統性についてちゃんと判定・権威付けしているのかもしれませんが,私はその辺は存じ上げません。申し訳ありません。
私の勝手なイメージではありますが,他者の補筆版が元の作曲家の作品としてほぼ定着しているのは,上記モーツアルトのレクイエムの他,プッチーニ「トゥーランドット」やシェーンベルク「ルル」などがあるかな,と思います。
未完成のまま演奏されている例としては,やはりまずは質問者さまも挙げておられるシューベルトの未完成ですね。完成している分だけで十分に鑑賞できるのと,残りの部分について大した手がかりがない,というか,シューベルト自身にこれ以上作曲を進める気がなくなっていたのが幸い?したのかもしれません。
また,ブルックナーの交響曲第9番は,作曲家に完成させる気はあったけれども,音楽としては本人が完成させた第3楽章までで見事に完結しているように聴こえるので,そのままで演奏されるケースがほとんどです。一応,第4楽章の補筆はありますが一般的ではありません。
補筆そのものがクローズアップされやすい作品としては,マーラーの交響曲第10番が思い浮かびます。マーラーはこの作品の作曲をかなりのところまで進めていたので断片はかなり残っており,いくつかの補筆版が存在しますね。(残された断片素材の素晴らしさがそうさせる,あるいは,下世話な見方をすれば,商業的な理由もないことはないと思いますが・・・)
ただ,現時点存在する補筆や,今後も出てくるであろうその他の補筆も,「マーラーの作品」として定着することはないだろうな,と思います。
私はこの曲自体は嫌いではないので,補筆版はたまに聴くのですが,個人的な印象として,音楽の素材や骨組みは素晴らしいと思うけれども,「曲を完成させる」という点でマーラーの創造性が発揮されていないことろに,不満がないことはないです。
「ジーズニ」については,最初に申し上げた通り聴いた事がないので,勝手なことは申し上げない方がよいのかもしれませんが,私の知る限りでは,完成させるだけの材料が不足しているような感じですし,作曲家の死などのやむを得ない事情で未完になったというよりはチャイコフスキー自身が完成を断念していたという経緯もあり,どのような補筆版であれ,それが正統なチャイコフスキー作品とは一般的にはみなされないかもしれませんね。
以上,まとまりのない乱文で失礼いたしました。
やはり、補筆というものはそれなりに難しいものなのですね。
大作曲家のオリジナルの部分に比べて、不満の残る個所があって当然かもしれません。
「ジーズニ」を少しだけ聞いた限りでは、とてもまとまっている曲のようにも思えますが
やっぱり第3楽章なんかは、交響曲としては軽い感じがしますし(そこで使われているモチーフは
素晴らしいと思いますが)同じ主題が何度も繰り返し反復しているところが気になりました。
どちらにせよ、聴いている側はどうしても補筆だということを意識して聴いてしまいます。
それでも大作曲家の作品を完全な形で聞いてみたい、というクラシックファンの要求は
仕方のない事でしょうね。
ずいぶんと長い回答ありがとうございます。
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