一回も披露したことのない豆知識

文中に出てくる 「笹の隈にだにあらねばにや、…」について質問です。
この古今和歌集の笹の隈の和歌を引用することで六条御息所が表現したかった気持ちとはなんですか?
好きな人(光源氏)に自分のところで立ち止まって欲しいということですか?
回答よろしくお願いします。

A 回答 (1件)

こちらの解説に詳しいですが、


「古今集に、 『笹の隈檜隈川に駒とめて しばし水かへ 影をだに見ん』
という歌があり、それを引いた歌(引歌)である。意味は、
 「笹の生い茂っている奥深いところを流れる檜隈川(ひのくま川 奈良県にある)で、どうか馬を止めて水を飲ませてあげてください。馬に水を飲ませている間に、私はあなたの姿だけでも見ていたいと思いますから」
ということである。恐らく昨夜、男としっぽり時を過ごしていた女が、別れに当たって、もっとお姿を見ていたいという心情を、「馬に水を飲ませる」ことを口実にして男を引き留めようとしたものであろう。

六条御息所も、本当なら光源氏に向かって
 「私の前で駒を止めてください。その間に少しでもあなたのお姿を拝見していたいと思いますので」
と呼びかけたいのだ。ところが、残念ながらここは笹の隈の檜隈川ではない。それどころか、「ひとだまひ」の奥なのである。葵上には完璧に圧倒されてしまったし、彼女の置かれた場所も心も、まさに笹の生い茂った「隈」の状態なのである。古今集の歌は、その底に女の甘やかな歓びの響きがあるのだが、御息所の心は、全てが真っ暗闇の隅である。「何に来つらん」と絶望的になるのも当然である。
 そのため、ここで「笹の隈」や「檜隈川」が意味を持ってくるのだ。「隈」をダブらせることによって、御息所の置かれた状況の深刻さ、暗さをよりクローズアップさせた。本の歌の主旨(男の駒をとどめて、しばらくでもその姿を見ていたい)を生かすのは当然のことながら、序詞に過ぎなかった「笹の隈」やあまり意味を持たなかった「檜隈川」をも見事に生かしたのである。」
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