No.2
- 回答日時:
ドビュッシー(1862~1918)は、ちょうど100年前の1918年に亡くなって、今年が没後100周年。
日本でいえば、明治から大正時代に生きたフランスの作曲家です。ヨーロッパの音楽は、19世紀中に「ドレミ」の音階や「ドミソ、ドファラ、シレソ」の主要3和音に基づく音楽はほぼ完成してしまって、ドビュッシーが主に作曲活動を行った19世紀末から20世紀初めには、それで作曲するのは「あたりまえ」過ぎて行き詰っていました。
そんな中で、「ド・レ・ミ・♯ファ・♯ソ・♯ラ・ド」のような音階(古い人には「鉄腕アトム音階」)や、ちょっと変わった和音を使った「新しい響き」を求めて作曲した人です。
当時フランスに流行していた「ジャポニズム」(日本趣味)やインドネシアの「ガムラン音楽」などに触発されているところもあります。ピアノ曲「金色の魚」(「映像」第2集の中の曲)は、漆塗りのお盆に金粉で描かれた錦鯉にインスピレーションを得て作曲されたそうです。交響組曲「海」の楽譜の表紙には、葛飾北斎の有名な「冨嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」が使われていますし。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7_(%E3%83% …
「無調」や「奇怪な不協和音」といった「不快な音」を使って作曲する人も現れましたが、ドビュッシーはあくまで「ここちよい」どちらかというと「浮遊感」や「ぽわ~ん」といった響きが多いですね。「月の光」はちょっと「冷たい透明感」かな。
プライベートには、ちょっと「女ったらし」のところがあって、婚約するものの愛人の存在がばれて破談になったり、最初の奥さんが「自殺」を図ったり、人の奥さんをぶんどって結婚しちゃったりしました。
概略はこんなところで。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD …
詳しく知りたければ、下記の本が面白いです。
ピアニストの青柳いづみこさんが書いたドビュッシーの本
「ドビュッシー―想念のエクトプラズム」 (中公文庫)
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%89%E3%83%93%E3%8 …
「ドビュッシーとの散歩」 (中公文庫)
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%89%E3%83%93%E3%8 …
一般向けのドビュッシーの本
松橋 麻利 (著)「ドビュッシー (作曲家・人と作品シリーズ)」
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%89%E3%83%93%E3%8 …
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
ドビュッシー大好きで書籍を読みあさったので、大体のイメージは掴めていると思います。
ドビュッシーをまず一言で説明するなら割と簡単で、「西洋音楽における、近・現代化」の象徴的存在です。
(印象主義は忘れてください。実際本人がこの括りに否定的だったことと、彼の多くの作品の題材・傾向から、今はむしろ象徴主義ではないかと言われています。)
西洋では様々な芸術分野で新しいムーブメントが起こっていた時代で、音楽の近代化を担っていた若い作曲家は同時代にたくさんいましたが、数々の新しい理論を用いた作品を真っ先に世に送り出した人は彼より以前には見られないので、実質近代化の「パイオニア」と言ってもいいと思います。
で、この「音楽の近代化」って何なのかというと。
例えばあなたが「クラシック」と聞くと、まずベートーベンやモーツァルトといった明らかに現代の音楽とは違う、硬く古めかしい、いかにも「クラシック」な趣の音楽を思い浮かべるかもしれません。これは実は「クラシック音楽だから」ではなく「名曲はそんな感じだから」でもなく、明確な現代の音楽との理論的違いがあります。古典・ロマンの時代は調性主義(長短調)とか機能和声とか形式(この辺は興味があれば調べてみてください)といった厳格な縛りの中で音楽が作られていました。仕方なくというよりも、それが音楽の当たり前だったと考えた方がいいです。
ところが、ヨーロッパで音楽が一大花形業界となったことで、当然ながら次第に表現が煮詰まってきて、ワーグナーがブイブイ言わせていたロマン派後期にそれまでの音楽語法が崩壊し始めるのです。
そこに現れたのが時代の寵児ドビュッシー。彼は音楽学校の若い時代から既に古く凝り固まった西洋音楽に反抗的で、しばしばアカデミックな学校権力と衝突していたと言います。ですが幸いなことに時代と聴衆が彼を後押しし、彼は生前かなり人気の最先端作曲家の1人となりました。教会旋法、五音音階のようなグローバルな音階、全音音階・・といった長短調以外の各種音階・旋法(これらはじきに出てくる無調音楽に繋がる語法と言っていいです)。機能和声の縛りから一気に拡大した近代的で色彩感ある和声。律動(拍子感)の無い音楽・・・ドビュッシーが先立って積極的に用いたこれらの語法は古典・ロマンの時代にはほぼ見られなかったもので、現代の私達の音楽・・ジャズ、ロック、ポップ、サウンドトラック、現代音楽等・・・の基盤と言えるものです。実際、ベートーベンやモーツァルトのような時代の音楽を作る人は今やいないですが、ドビュッシー中期以降の作品の多くは現代の音楽と殆ど変わらない点からも、その数十年の間に西洋音楽に大きな革命があったことは伺えると思います。
(ちなみに、革新者ドビュッシーの本領は中期からで、「月の光」や「アラベスク」はごく若い作品でこれに含まれません。本当のドビュッシーを知りたいなら中期以降の作品を。でなきゃドビュッシーは始まりません。)
代表曲「牧神の午後への前奏曲」は、現代では「近代化の扉を開いた」記念碑的・先駆的作品としてしばしば取り上げられますね。
で、ここからはまた別の観点。ドビュッシーの人間性。
非常に性格悪い・・・いやいや、デリケートで気難しく頑固で社交性皆無。そのせいもあるのか、子供の頃からひとり妄想にふけって自分の世界に閉じこもるような人だったそうです。まぁ偉大なクリエイターとはそんなものでしょうが。
私生活はかなり乱れている印象を世間的に持たれていると思います。彼の浮気が原因で生涯2人の女性を自殺に追いやった(ただしどちらも未遂)とか。晩年パートナーだったエンマとの略奪婚(唯一子供も出来た)は「地位・財産目当て」等と長らく言われてきましたが、近年ドビュッシーの新たな書簡が見つかり、フランス国内では「浮気でも地位目当てでもなく、本気だったのなら仕方無い」という見方に変わってきているそうです。エンマは資産家の気品ある奥様で、しかもパリで活躍していた歌手ですから、音楽家フォーレとドビュッシーが人妻である彼女に求婚したという経緯も、そう不思議はないでしょう。
そんなだらしないドビュッシーですが、それでもユーロ導入前のフランス紙幣の肖像に採用されていました。芸術で世界をリードしてきたフランスにおいて、同国を代表する偉大な芸術家・革新者として評価されていることが、ここからも伺えると思います。
大好きで読みあさったと仰るだけある、ドビュッシーへのとっかかりとして私にも分かりやすいのに、もっと知りたくなるようなこんなに素晴らしい回答をくださり感激しております。
本当のドビュッシーを知りたいなら中期以降 でなきゃドビュッシーは始まらない
とのことなので、まずとりあえずそこから聴いてみてます。
時代の革新者だったということでまた違った角度から興味が、更に湧きました!
一字一句が、これから知るきっかけになります。 こちらをスマホにブックマークしておきます。
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みなさま! 素晴らしすぎます......
いまくださった回答を読み込んでおります