
No.8ベストアンサー
- 回答日時:
>芥川賞が文学界の中でもっとも権威ある賞
この認識がすでに間違っています。以下をごらんください。
芥川賞および直木賞は、「文藝春秋」の創始者菊池寛が友人の芥川龍之介と直木三十五を記念して作った文学賞で対象は新人の小説作品です。当時(昭和初期)はひどい不況時代で新人作家はほとんど衣食の道がなく、また文壇に出てくるには同人誌に小説を発表してそれが批評家の目にとまるのを待つしかないというような時代でした(もっともこのころの同人誌というのは今よりかなり格の高いものもあって、なかば商業誌のように売れるものもありましたが)。アイデアマンだった菊池は、新人賞によって、(1)新しい才能を継続的・定期的に発掘する、(2)原稿料による収入を確保する(賞を受賞すると注文が増える)、(3)雑誌が売れないとされる二、八月に賞を出すことで売上げ増を目指す(芥川賞受賞作は「文春」に、直木賞は系列の「オール読物」に掲載される)、という一石三鳥の効果を狙ったと言われていますが、それはともかくとして、こういういきさつで作られた賞ですから、審査の対象がもともと新人の作品に限定されている。ですから村上春樹とか大江健三郎とかが今年どんなに優れた小説を書いても芥川賞はもらえないわけです。大家や中堅の作家の作品が審査の対象になることはありませんし(実際「○○さんはすでに中堅作家だから」という理由で落選したり、候補に入らなかった候補が何人かいます)、新人賞というのは基本的に新しい才能を見出すのが目的ですから一生に一度が基本です。イチローのように二度もらったりすることはありえない。
ただし「完全な新人賞」、つまりこれまでまったく無名だった作家を一夜にしてシンデレラ・ガールにするという賞でもないんです。というのは芥川賞は(直木賞については後述)新人賞としてもっとも格の高いものという扱いですので、所謂文学誌に定期的に作品を出しているような作家、あるいは文学界新人賞や文藝新人賞のような新人賞をすでに受賞している作家、作品も対象になります。要するに新人としての総仕上げの賞というのが正確な把握なのではないでしょうか。これをさらに徹底しているのが直木賞の選考基準で、今では芥川賞と直木賞ならば直木賞のほうが受賞がむつかしいというのが現状です。直木賞はご存じのように大衆小説が対象ですから、選考委員にも受賞者にも「筆で喰っていく」という意識がつよいんですね。したがって「新人としての総仕上げ」というのも芥川賞よりややレベルが高く、原稿料と印税だけで食べてゆける(直木賞系統は芥川賞系統より原稿料がかなり安いので、定期的に大量の原稿を書いてゆかなければならない)だけの技術と実績、そして雑誌からの注文が保障されていることが必要になります。受賞者一覧をご覧になればわかるかと思いますが、芥川賞は「この人は今……」という人がけっこういるのですが、直木賞にはそれがほとんどありません。作品主体の選考ではなくて作家主体の選考が傾向としてつよいので所謂一発屋という人が出ないんです。その代り、一時期、芥川賞には「もう遅い」が連発され(目の利かない選考委員のときに新人だった作家が中堅になってしまっているので今さら芥川賞が出しにくい)、直木賞には「まだ早い」が決り文句になっていた時代がありますが、直木賞のどちらかといえば慎重主義的な態度はどうしても受賞者の年齢を押しあげます。今さらこの人? というような受賞者が最近連続しているのはこのためです(まあ、直木賞は探偵もの、時代小説、SF、現代もの、風俗小説、とジャンルが広くて候補者が多くなるせいもあるのでしょうが)。
まあ、今のところの印象としては、芥川賞は「新人の総仕上げ」、直木賞は「中堅の入口」というのが正直なところでしょうかね。個人的には直木賞は人数を増やしてもいいからもう少し基準をゆるくしてもいいんじゃないかと思うなあ。
ちなみに、どうして「日本でいちばんすごい文学賞」という誤解があるのか? これは簡単です。芥川賞と直木賞は「日本でいちばんメディアが注目している文学賞」だから。要するに今の社会はメディアがすべてなんですね。内容よりも視線が大事な時代。もともと文学関係者だけが注目していた地味な賞だったのが、いつからこれほどメディアの視線を集めるようになったのは石原慎太郎の『太陽の季節』による最年少受賞がきっかけなのですが……、まったくこの人、政治どころか文
とても詳しく書いていただいて、大変勉強になりました(ただ、改行をもう少し増やしていただければ助かりました(笑))。
>芥川賞は「この人は今……」という人がけっこういるのですが
ああ確かにいますね!キャンペーンに使われた後、自分の作品を映画化の際、一度自らが監督しただけでどこかに行ってしまった女流作家さんもいましたね。
芥川が純文学=権威ある、と勝手に思い込んでいたようです。その思い込みがあるから確かに今まで、なぜこんな権威ある人が芥川賞をとってないのだろう?と思いました。また直木賞も探偵小説家の作品がよく取っているのを聞くにおよんで、探偵小説という「大衆文学」も賞を取ることもあるのだという思い込み、それも純文学が賞に値する、という思い込みのせいでした。
つまり芥川賞は「才能への期待で賞」、直木賞は「職人芸で賞」という性格でしょうか。
また芥川賞と直木賞は、毎年新聞やテレビなどで報道されます。そのたびにずいぶん年齢層が下がっているなあと感じるのですが。また「海を感じるとき」という作品は卒論として提出したもので、結局群像新人賞を取ったようですね。
確かに太宰治賞や平林たい子賞など賞はたくさんあります。権威というとそのふたつ、と思い込むのはメディアの力のせいでもあるかもしれませんね。
ありがとうございました。
No.9
- 回答日時:
>太宰がほしがった時代の「権威」は
ちなみにいいますと、太宰が佐藤春夫に芥川賞を懇望した時期においては、芥川賞にはなんの権威もありません。太宰の『逆行』『道化の華』が候補になったのは第一回芥川賞。まだ賞自体が海のものとも山のものともつかない時期です。
太宰が芥川賞にあそこまでこだわったのは、当時の彼が非常に貧乏で賞金がほしかったこと(一時的に原稿の以来が増えることも見越されるため)と、作品の質ではなく生活態度を理由としてほぼ当確と信じていた賞を逃してしまったことがその大きな理由です。
どんなに権威のある賞でも、それは初回からそうであったわけではありません(ノーベル賞のように賞金が巨額である場合は別ですが)。伝統を重ね、いい作品を発掘してゆくことで、賞自体の権威が育てられるわけです。
お礼が遅くなってすみません。
なるほど、確かに賞というものは、積み重ねて権威ができるものですよね。最初はどのような事情で、○○賞ができたとしても、その質を決めるのは賞に選ばれし作品でしょう。でも最近の文学は、あくまでも私個人の感想ですが、あきらかに純文学と呼ばれるものはなく、行間の多い、テーマ性に欠けたものが簡単に賞をとれるような気がします。しかしそれを選考したのも過去の受賞者たち、なんですよね。
ありがとうございました。
No.7
- 回答日時:
太宰がほしがった時代の「権威」は
今の両賞にはないですよ。
昔は、受賞作が、世相を変えるくらいの「権威」がありましたが、、、。
文春が本を売りたいがために選考している感じですね。
お礼が遅くなってすみません。
芥川や太宰、三島などの古き良き時代の日本文学を愛する者のひとりとして、最近の○○賞と旗を傍に立てて平積みされている小説に対する貢献はしておりません(笑)。行間の多い文学はまず読む気もしません。今の文学界は音楽界にも似ていると思います。つまり売れればよいという一点張りで、アイドルさえよい歌を提供されていた80年代や、そのまた昔のフォークやニューミュージックに見られたような良さがない。つまり使い捨てです。これはもう資源のムダでしょうね。
ありがとうございました。
No.6
- 回答日時:
もともと文芸春秋社長の菊池寛が、友人の芥川龍之介と直木三十五を偲んで設立した賞なので、どちらが権威的に上ということはありません。
芥川が純文学、直木が歴史ものなど一般向けの作品で活躍したことが、それぞれの賞にも反映されています。
どちらかを受賞した場合、もう一つを受賞する事は出来ません。また規定に定められた一部の賞を受賞した作家も、作品が候補に挙がらなくなります。
ただしかつては北川荘平「水の壁」のように、一つの作品で同時に両賞の候補になった例もあります。(1958年、第33回下半期)したがって当時は両賞同時受賞の可能性もあったのかもしれません。もっともどちらかを受賞した時点で、もう一方は候補からはずされるルールだったかもしれませんが。
お礼が遅くなってすみません。
どちらか一方を取れると他のものは取れないというのは、歌手の新人賞のようなものでしょうね。つまり一度きりのものでしょう。しかし純文学と大衆文学という違いがはっきりしているのですから、それもおかしいというか面白いというか…。
ありがとうございました。
No.5
- 回答日時:
芥川賞と直木賞を同じ土俵に乗せて比較するのが間違いです
それぞれのターゲットが違います
みかんの品評会にリンゴを出展するようなものです
違う物をどちらが上か下かを論じることすら無意味です
オリンピックのマラソン勝者と水泳勝者のどちらが上と言っているのと
同じです
お礼が遅くなってすみません。
みかんとリンゴのたとえでイメージがつきました。
そうですね、私も相手も勘違いしていたようです。
ありがとうございました。
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