二月四日ごろと言えば、まだ寒いさかりである。寒いさかりに立春だと言って、春の到来を感じ取るということは、これからの若い人たちには、もうすでに困難になってきたかもしれない。私たちでも、小学読本で「三月、四月、五月を春という」と習っていたし、温暖の季節を春というのだとすれば、それはそのとおりに違いないのである。はじめて歳時記を読んだとき、立春から春だという約束は、ずいぶん日本人らしい気の早さだと思ったものだ。だが寒いさなかを春だと言って気持ちをやすめることを、私は今では納得したい気持ちである。冬という季節が長すぎるのは、どうにもやりきれないのである
質問(1) 「立春から春だという約束は、ずいぶん日本人らしい気の早さだと思ったものだ。」このセンテンスの意味は私にとってちょっと難しくて理解しにくいです。ご存知の日本人に詳しく説明してほしいです。
質問(2) 「だが寒いさなかを春だと言って気持ちをやすめることを、私は今では納得したい気持ちである。」というセンテンスの意味は詳しく説明してくださいませんか。よろしくお願いいたします。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
外国の方でしょうか?
(1)
前後の文章に理由があるのかもしれませんが、この文の書き手はどうやら『日本人は気が早い』という認識を持っているようです
『気が早い』というのは、『物事を急いで実行しようとしがちな性格だ』という意味です
『立春から春だという約束』というのは日本の伝統的な定型詩の『俳句』のルールのひとつのことです
『歳時記』というのは俳句で使える季語のリストです
俳句では季節ごとに使える季語が決まっていて、それぞれの季節の始まる日が、立春、立夏、立秋、立冬と定められているのです
日本では130年ほど前までは太陰暦(旧暦)を採用していて、一年は立春から始まっていました
年の変わり目に季節も変わるわけですから、それなりに合理的だったわけですが、
太陽暦が採用された現代では欧米圏の慣習に合わせたのか、3月から5月を春と呼ぶのが日本でも一般化していますので、その視点から見ると『2月(旧暦の正月)から春』とする歳時記は『気が早い』ということになるわけです
(2)
書き手はどうやら冬が嫌いになったようです
当初は歳時記の『気の早さ』の理由を日本人の性質によるものだと思っていたのが、自分が冬嫌いになってみると、昔の人たちも言葉の上だけでも冬を早く終わらせたくて春を早く始めることにしたのではないかと思うようになった(そしてその昔の人たちの判断に自分も賛成したい)、ということだと思います
No.3
- 回答日時:
こんにちは。
文章を理解することは心や感覚を理解することと思いましたので、学術的なことではなく、感覚的、情緒的な視点から回答を考えてみました。
(1)「立春から春だという約束は、ずいぶん日本人らしい気の早さだと思ったものだ。」
作者は、日本人にとっての「春」の定義を興味深く思ったのではないでしょうか。
「春」とは、感覚的には、「温かくなってきたら」感じるものであるところを、日本人は、「立春」という、暦=カレンダーによって区切ろうとする。
その真面目さ、様式にこだわる様子を「日本人らしい」といい、また、昔から、農耕を生業(生活するために農業をするということです)としてきており、四季を愛することを「粋(cool、ということです)」としてきた日本人の背景から、彼らが春を待ち遠しく、早く春を感じようとしているであろうことを想像してこう書いたのではないかと思います。
(2)「だが寒いさなかを春だと言って気持ちをやすめることを、私は今では納得したい気持ちである。」
おそらくは世界中の人が同じように考えるでしょうが、「春」がくるのは嬉しいものです。
だから、暦の上だけでも早く春をこさせて、嬉しい気持ちになろうとするのは納得できることである、作者はいいたいのではないでしょうか。
農耕をする人には、「冬」は厳しい季節です。
だから、心がやすまらないのでしょう。
「春」の区切りをはやくすることで、「もうすぐ暖かくなるのだ」という実感を得て、安心したいのでしょう。
すこしでも、お役にたてれば幸いです。
No.2
- 回答日時:
この質問は、歳時記についてでしょうか。
暦に付いてでしょうか。最初の人が歳時記について回答していらっしゃるので、わたしは暦について回答しましょう。明治政府は1872年(明5)それまでの旧暦を廃して12月3日を1873年1月1日としました。我が国における太陽暦の始まりです。もっとも旧暦は太陰暦というより、太陰太陽暦で、立春は太陽暦によるもので現在の立春とほぼ同じ日でした。だから、「古今和歌集」の春の部上にある第1番の歌
旧年に春立ちける日、よめる 在原元方
年の内に春はきにけりひとゝせを去年とやいはむ今年とやいはん
とあるように、旧暦12月中に「立春」がきたこともあるのです。旧暦は大の月(30日)小の月(29日)併せて12か月、354日が一年でした。すると現実の季節感とは11日づつずれてしまいます。3年で約1月の差がでます。農耕中心の社会では大変なズレです。そこで一年13か月という年を作り、閏○月(たとえば閏3月)として調整します。
歳時記などに出てくる季語は、かなりの部分江戸時代に成立したので、現代の季節感とのずれは当然出てきます。だから昔風に言えば、春は1,2,3月。夏は4,5,6月。秋は7,8,9月。冬は10,11,12月となり、仲秋の名月は8月15夜、年賀状に賀春など書くのはこの名残りです。それでも早すぎるという感じは確かにあります。日本人は季節に敏感だというのが結論でしょうか。
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