
海外メディアの歴代ピアニストランキングを見ますと、
どれもセルゲイ・ラフマニノフが1位となっています。
彼はそのほかのピアニストと比べ、
どういった点で優れているのでしょうか?
Best Classical Pianists Of All Time: Top 25(udiscovermusic 2023)
https://www.udiscovermusic.com/classical-feature …
The 10 greatest classical pianists of all time(Higher Hz 2023)
https://higherhz.com/greatest-pianists-of-all-ti …
The 20 Greatest Pianists of all time(BBC Music Magazine 2022)
https://www.classical-music.com/features/artists …
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
ちょっと長くなってしまうかもしれませんが…
だれがどういう方法でランキングをまとめたかによって、多少の順位の入れ替わりはあるとは思うのですが、やはり1位だと思います。個人的にも異論はありませんし、これはもうどうしようもないかなとさえ思います。
この種のランキングで上位に入るピアニストの顔触れは大体同じで、「殿堂入り」のピアニストたちです。最近のクラシックファンなどの投票ではなく、録音技術ができたあと、まとまった録音が残せるようになって以降のピアノ演奏史の中で定まった評価です。ラフマニノフは、特にプロのピアニストやピアノ演奏史専門の研究者、評論家などからの支持に絶大なものがあると思います。
2位、3位に入ることが多いホロヴィッツとルビンシュタインは対照的なピアニストで、技巧か、音楽性か、という点で支持者が二分されるようなところがありましたが、ホロヴィッツにとってラフマニノフは雲の上のような存在でした。ラフマニノフ宅に出入りしていましたが、ラフマニノフの前では緊張が解けずかしこまっていた、と同行していたヴァイオリニスト、ミルシテインは回想しています。一方のルビンシュタインもラフマニノフの演奏に関して、心の底から出てくる黄金のような生き生きとした音だった、と言っています。あまりの指の速さとやや過剰なテンポルバートに不安を感じそうになる時でも、まねのできない音の美しさゆえにそれも忘れ、抗えない魅力があった、と語っています。技術と音楽性の両方で比類なかったので、タイプの異なるピアニストたちからも同時に支持されたのです。
作曲家としての知名度はもちろんありますし、あまり知られていませんが、指揮者としての業績もかなりあった人です。しかし、ピアニストのランキングはあくまでもピアニストとしての評価によるものです。
過去にいろいろな大ピアニストがいて、それぞれが何らかの魅力、美質を持っています。ほかのピアニストにはないがこのピアニストにはある、という特徴もいろいろあると思いますが、ラフマニノフは一人でそうした魅力をたくさん持っています。どんな難曲でも弾き通すタフさ、声楽のようにピアノを歌わせる技術、情熱、誠実さ、踊るような生き生きとしたリズム、分析的な解釈による構成力、強靭な打鍵と柔らかい打鍵による音色の幅の広さ、ペダルの技術、等々。
ラフマニノフの時代には、技巧をひけらかしたりセンチメンタルに弾いたりなどの小細工をするピアニストがまだまだたくさんいましたが、ラフマニノフはそういうことをしなかったので、現代的なピアニストの走りと評価する人もいます。
作曲家としての評価は無関係と書きましたが、作曲家だからこその演奏という点は重要です。これは自作曲を演奏するときのことではなく、ほかの作曲家の作品についてですが、ラフマニノフ自身が「演奏には創造的本能のようなものが必要です。あなたが作曲家なら、ほかの作曲家に共感し、彼らの問題や理想を知ることによってそのイマジネーションに触れることができます」と語っています。
ラフマニノフ自身の作品は音符の数が多く難しいので、普通のピアニストはすべての音を拾うだけでも大変で、ペダルにも頼らざるを得なくなります。その結果分厚い響きになってしまいがちですが、ラフマニノフ自身は指の力だけで弾けてしまうため、ペダルは控えめで、演奏が重くなることはありません。
これ以上言葉で書いても伝わらないので、あとはYouTubeに頼ることにします。小品のみに絞りますが、最初はヘンゼルト作曲の『もしも私が小鳥なら』。ピアニストのレスリー・ハワードは、ラフマニノフがこの曲をあまりにも軽々と弾いてしまっているので、「洒落たサロン風小品にしか聞こえないが、いざ自分で弾こうとピアノに向かってみれば、この演奏が恐怖でしかない(absolute terror)ことがわかるはずだ」と言っています。ペダルをほとんど使っていないというのも驚異的です。
メンデルスゾーン『練習曲』(指のテクニック、正確さ、持久力)
https://www.youtube.com/watch?v=_Z2MaVFYck0
ラフマニノフ『前奏曲作品32の3』(強靭な打鍵、躍動的なリズム)
この曲では、左手が2オクターブ近い音域のアルペッジョを弾いている箇所で、特定の音だけにアクセントをつけて意表を突くリズムの効果を出しています(楽譜には書いていません)。
https://www.youtube.com/watch?v=fZnajCrPuys
ラフマニノフ『前奏曲作品23の10』(ピアノがどれだけ「歌える楽器」であるかの手本のひとつ)
https://www.youtube.com/watch?v=e3lyVHKmmow&list …
シューベルト(リスト編曲)『セレナード』
これも「歌うピアノ」です。今の時代から見ると多少センチメンタルに聞こえるかもしれませんが、技術的な完璧さや清潔さが優先される現代のピアノ演奏には、こういう情感がもう少しあってもよいかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=5EfibBrIt68&list …
ベートーヴェン『32の変奏曲』(構成力、厳格さ)
https://www.youtube.com/watch?v=ceJ1K_9Lvy0&list …
ドビュッシー『ゴリウォーグのケークウォーク』(リズム、ユーモア、弱音の美しさ)
https://www.youtube.com/watch?v=TvJ35-zZa-I&list …
ラフマニノフ『W.R.のポルカ』(洒脱さ)
https://www.youtube.com/watch?v=-L6ODG1hoYE&list …
きりがないのでこの辺で終わります。ラフマニノフのピアノ演奏、自作自演(オーケストラ曲の指揮や、ヴァイオリニスト、クライスラーとの共演の貴重な録音も含む)は下にたくさんあります。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLZQkzaJCC …
No.5
- 回答日時:
(蛇足的投稿)
ラフマニノフの手の大きさはどれくらい?
https://mythology.website/archives/8764
ショパンの手・ラフマニノフの手
https://kuromitsu-kinakochan.hatenablog.com/entr …
(大きいがゆえに、ラヴェルは弾き難そう…)
No.3
- 回答日時:
No.1 です。
#2さん>ピアニストという蛮族がいる
中村紘子さんの本ですね。
↓
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%8 …
その中に「6フィート半のしかめっ面」という章があり(「6フィート半」の大男はもちろんラフマニノフ)、「最も手の大きかったピアニストは文句なくラフマニノフと言い切れる」と書いています。
No.1
- 回答日時:
もちろん「ピアノが上手かった」ということもあるでしょうが、同時に「偉大な音楽家であった」ということなのでしょう。
ピアノ曲だけでなく、様々なジャンルの曲を作曲するという「音楽家」でしたから。
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