小説などの物語作品において、「共感」や「感情移入」できることは良いことだとされています。
少なくとも現代日本では、テーマに共感しやすい、登場人物に感情移入しやすいといった作品は、そうでない作品に比べて高く評価されやすい傾向にあるように思えます。
そこで質問ですが、このような傾向は、最近(例えばここ100年程度)に限った話なのでしょうか。
それとも、古今東西普遍的なものなのでしょうか。
例えば、古代ギリシアや諸子百家時代の中国、中世アラビアやルネサンス期のヨーロッパなどでも、現代でいう「共感」ができるかどうかは、物語作品を評価する上で重要な基準の1つだったのでしょうか。
1.現代と同程度に、重要であった
2.現代以上に、重要であった。
3.現代ほど重要ではなかった。
4.現代とは逆に、評価を下げる基準であった。
5.物語と共感は分けて考えられていた。
6.現代の共感に近い概念は、まだなかった。
思いつく限りでは、上記の6つのパターンが考えられますが、実際はどうだったのでしょう。
時代・地域を問わず1や2であったのでしょうか?
それとも3や4や5のような傾向も無視できないほど多く存在していたのでしょうか?
A 回答 (2件)
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No.2
- 回答日時:
まず、結論から申し上げますと1~6のどれとも断言できないということになります。
1.現代と同様に重要であった、と言えないのは何故か。それには、国の成り立ちが大いに関わっていると思います。
平和な世の中は大衆文化が繁栄しますが、ギリシャ等の時代は、戦争ばかりで、民衆の文化というより、権力者の文化だったと思います。権力者が気に入らないものは、いくら民衆が支持しても禁じられます。そういう時代にも少しくらいは流行などはあったと思いますが、今の時代から想像できるような自由さはなかったと思います。
ですから、2.現代以上に、重要であったは当然なくなり、3.現代ほど重要ではなかったというのも、重要と位置づけることが民衆にはできなかったのだから、ありえないということになると思います。
4.現代とは逆に、評価を下げる基準であったというのは、ある意味正しいことだと思います。西洋にしても、中東にしても、古来から巨大な宗教が政権を握り、国を支配していたようです。
教義=法律のような世の中で、教えに反するような物語(たとえば、不倫の恋の物語、殺人を犯したものが幸せになる物語、近松の心中物など)を民衆に薦めることは、出来なかったと思います。共感を受けやすい大衆的なものは、統治者からすれば評価を下げるものであり、ひょっとすると、権力者の命令で燃やされてしまった名作本も、多くあったかもしれません。
ここまでの時代では、6.現代の共感に近い概念は、まだなかったというのが、ぴったりあてはまります。
しかし、ルネッサンスまで時代が流れてくるとまた、様子が変わります。政権が多少安定して、国が富み、人口が増え、やっと民衆の生活が潤ったのだと思います。宗教が腐敗し力を弱め、大衆文化が発展し始め、この時期に創り出されたものは、多く残っているようです。初めて、自由に共感して物語などを読める時代が来たのだと思います。
ただ、その時代の自由な共感が、今まで残っている理由のすべてというのは、無理があるように思います。圧迫された時代が長かったため、ルネッサンスの人々は、自由な言論にとても飢えていたと思います。反動が大きすぎて、一過的なお祭り騒ぎみたいな共感を得ていた作品も少なくないはずです。
その作品が書かれた当時は、大衆的な共感だけがクローズアップされ、流行っているから皆読むというような風潮があった作品でも、時代を経るとともに、当時の人が気がつかなかった魅力が発見されて、今はその新たな魅力に惹かれて読み継がれているという場合もあると思うのです。むしろ、それがほとんどだと思います。
その新たな魅力というのは、さまざまです。現代人の心の病を数百年前に言い当てていたからとか、現代の社会問題を先取りして描いていたからとかだと思います。
ですので、一つの共感が時代を超えて変わらずに続いているとは、いえないということだと思います。
この回答への補足
社会レベルの評価についてはわかりました。
ただ、個人レベルの評価で少々不明瞭な点があったため、質問を補足させて頂きます。
古代・中世においては、政治・宗教上の理由で、共感できる作品はかえって圧迫の対象となっていた。
それゆえ、ルネサンス以降、反動が大きすぎて、一過的なお祭り騒ぎみたいな共感を得ていた作品も少なくないほどであった。
ということですが、「反動」があったということは、個人レベル、つまり一人の人間がその内面、心のうちで作品を評価する分においては、当時の人々も共感できる作品を求めていたということでしょうか?
また「自由な共感」とおっしゃいましたが、それはつまり共感は自由であるべきものだと当時の人々は考えていた。
言い換えれば、共感を肯定的なものとして受け止めていた、ということでしょうか?
つまり、
「ストーリーのすばらしさと共感と、一体何の関係のあるというのか」
「共感は物語を台無しにする」
などと個人レベルで考える人は、当時も現代のように少数派であった。
現代人が、物語において「共感できる」という要素を肯定的に受け入れているのは、ここ100年200年程度の流行思想ではなく、政治・宗教上の理由で圧迫を受けた時代もあるにせよ、個人レベルにおいては古今東西共通のものである、ということでしょうか?
No.1
- 回答日時:
面白い疑問だなあと思って、気になっていました。
答えではなくて、アシストになれればみたいな意見ですが。
(あまり僕は専門的な詳しさがなく、自信もないので、諸兄の助言もいただきたいのですが。)
一つ考えたのは、残っている作品は、なぜ残ったんだろうか、という点です。共感されたからその作品は残ったのか。多くの人からでは無くても、少数の熱烈なファンが残したのかというてんです。少なくとも、あまたの作品は忘れ去られているので。
ギリシャ、についてあげられていたので、ギリシャの古典もので残っているのは、哲学の作品か、戯曲ですよね。(違ってたら教えて下さい)
戯曲は、大衆に熱烈に歓迎されていたから残って来た。哲学は、少数の人たちの助けにより残って来た。実際、アリストテレスの著作の多くは、残されておらず、断片的なものである。
現代でも残っている古い作品は、いったいなぜ生き残ることができたのか。
そこに当時も共感が評価基準として存在した証拠があるのではないか、というご指摘は大変興味深いものです。
私が考えていたのは、当時の書評や日記のような文献資料に、現代の共感に近い概念が書かれていないか、といったものでした。
回答の範囲を限定したくなかったので質問文には書きませんでしたが、それで正解だったようです。
もちろん、評価された=共感された、とは限りません。
当時の人々が何を基準に評価していたのかがわからない以上、そこに共感が含まれているとは断言できないからです。
したがって、現代まで残されたからといって即共感があったという根拠にはなりませんが、他の材料と組み合わせることで、役に立つかもしれません。
古代ギリシアについては、私もほとんど知りません。
現代でも日本でもない、異なる価値観の文化として例示させていただきました。
おっしゃる通り、共感の対象は文学でなくとも、哲学でも戯曲でも構いません。
ただ古くから広域に渡って存在し、現代でも広く親しまれている作品ジャンルとして、文学が最も適当であると判断しただけです。
戯曲と哲学の違いは面白く読ませていただきました。
もし評価の分布が、身長や体重のように正規分布で近似できると仮定すれば、戯曲は平均が高く、哲学は分散が大きかったのかもしれません。
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