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- 回答日時:
『葵上』は『野宮』と並び六条御息所の恋の妄執を描いた四番目物の名曲ですね。
『葵上』を題材に御息所の情念を描いた上村松園の『焔』は、圧倒的な表現力をもって観る人に業の深さというものを感じさせますね。
『葵上』という曲名にも拘わらず、葵上を小袖で簡単に表現した理由は以下の様に考えられます。
(1)本説の明示により曲内容を表す意図
『六条御息所』としても良さそうな感じもしますが、『葵上』としたのは本説が源氏物語の葵巻であり、曲の内容がイメージし易いものとする意図が作者にあったのではないかと思います。源氏物語の他に、平家物語、伊勢物語なども同様だと思いますが、物語文学を本節とした場合は物語のどの場面かを曲の名前に示すことで、鑑賞する人に場面の設定を分かり易く伝え、イマジネーションを抱かせようとしているのではないかと考えられます。
(2)能の登場人物としては葵上を登場させ難いこと
仮に葵上を能に登場させようとしても、病臥して苦しんでいる葵上は舞台でも横臥した状態にせざるを得ず、動きを伴う役割ができません。このため、多くの登場人物を出演させることができない能の舞台芸術としての特質から小袖で葵上を表現しているのだと思います。
『葵上』では病臥している葵上を小袖で表し、ツレに照日の巫女、ワキに横川の子聖と本説には見られない人物を登場させて能『葵上』として独自の世界を創り出すのに成功していると思います。
『葵上』は私も好きな曲です。後シテの装束や前シテの泥顔・後シテの般若の面は数ある曲の中でも面の見事さにおいても白眉ですね。
「水暗き沢辺の蛍の影よりも光る君とぞ契らん」の詞章の一節は、御息所と同様に終生恋の妄執に悩んだ和泉式部の歌「もの思へば沢の蛍もわが身より あくがれ出ずる魂かとぞ見る」と「暗きより暗き道にぞ入りぬべき 遙かに照らせ山の端の月」を思い起こさせ、曲に深い味わいを与えていると思います。
この回答へのお礼
お礼日時:2008/10/28 12:50
なるほど。そういった理由があったんですね。
まだまだ、能を見始めたばかりなので、これからもっと勉強していきたいと思います。
とても、助かりました。
ありがとうございました。
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