先日、観ました。けれど、評判とは裏腹で私は、「え?これでアカデミー賞?」って感じでした。
戦争前夜という時代背景や父の偉大さに比べ兄の不甲斐なさ、なりたくなど無かった国王の地位、そして何より子供の頃から吃音という最大のプレッシャー。
それらは分かります。次男でありながら望まぬ王位の継承と言葉の障害。そして、それまでは数々の王室お抱え医から今度は町の無資格療法士に委ねることに。確かに斬新かつ様々な療法を試みるシーンは面白かったですが。
が、しかし、最後のクライマックスシーンでこれから参戦していく自国民に対しラジオ放送で声明を発表して終わりというのが何とも尻きりとんぼ的です。
それに、そもそも王室のブルジョア生活があまりにも庶民とはかけ離れており、切迫している戦争に対して政治家達(一応チャーチルなども出てきますが)とイデオロギー的なことを真剣に考える前に必死に自身の言葉の障害を克服し何とか立派にスピーチすることばかりが浮き出ている感じです。
まあ、そもそも題名がそうなのですから仕方ないのでしょうが・・・
うーん、やはり国王とはどこの国でも国民の象徴であることが最重要なのでしょうか。
それに、クライマックスで流れる音楽は全て敵国ドイツの音楽ばかり・・・(勿論、ベートーヴェンの音楽は普遍的で全てを超越するとは思いますが、この場合いかにも大げさに感じられました・・・むしろ自国のエルガーなどの方がよかったのでは?)
俳優はジョージ6世役と言語療法士役はまあまあとしても、后役はちょっといただけませんね。
皆さんはどうご覧になりましたか?
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
こんにちは。
「英国王のスピーチ」は封切り当時、映画館で観ました。
わたしはなかなか良かったと思ってます。
アカデミー賞云々ということは、正直わかりません。
これまでの受賞作品も観ていないものが多いですし、
観ても「おもしろくなかった」と言う作品もあります。
この作品に対して、もしわたしの点が甘いとしたら、
わたし自身子供の頃吃音だったということも
関係するかもしれません。
わたしの場合は大人になるにつれて自然と治っています。
(子供の吃音の80%は自然治癒すると言われています)
イデオロギーとか難しいことはさっぱりわかりませんが、
(イデオロギーの意味すらわからない)
吃音の上に、なりたくなかった国王の地位を押し付けられた主人公が、
国王として長い年月職務に耐えられるかどうか、
あのスピーチの成功にかかっていたのではないかと思います。
吃音であるということは、大きな劣等感を本人に植え付けます。
たとえ、ブルジョアであろうが、高い地位についていようが
それは関係ないことです。
国王であるがゆえに吃音である事の苦悩は
大きかったのではないかと思います。
国民生活や眼前に迫ってくる戦争のことを考えず、
自分が恥をかかないように必死になっているというふうにも映ります。
でもスピーチの失敗は国民を落胆させるということは
本人もまわりも承知していたでしょう。
恥をかくこと以上にそれを恐れていた。
戦争を前に、
国民が信じてついていこうと思える国王であることを
どうしてもスピーチで示す必要があったのだと思います。
吃音である主人公が
スピーチの成功にすべてを賭けるくらいの心持であったとしても
おかしくはないのでは。
わたしは映画を見るまで、
吃音の英国王がいたことは知りませんでした。
大きな歴史の流れの中では
そんなことは取るに足らないことなのかもしれません。
映画はどんな歴史的な人物にも、個人的な苦悩や喜びがあったということを
描きたかったのではと思います。
政治を描いた映画ではないと思えば、
あの終わり方で十分だったのではないかと感じます。
后役・・ヘレナ・ボナム=カーターですね。
なんだか貫録のある中年になったなぁと。
あまり気品がある・・という感じではなかったですが、
綺麗綺麗な女優さんよりかえって良かったかなと思います。
吃音だったわたしからみると、
コリン・ファースの吃音の演技にそれほど不自然さはなく
(わたしは英語は出来ないので断言は出来ませんが)
よく出来ていたと思います。
ちなみに映画を一緒に観た人は
「ぜんぜんおもしろくなかった」と言っていました。
文章が上手くないので読みにくい文章で申し訳ありません。
長文失礼しました。
ご回答ありがとうございます。
回答者様は過去に吃音で辛い経験がおありなのですね。その気持ちよく分かります。
>吃音の上に、なりたくなかった国王の地位を押し付けられた主人公が、
国王として長い年月職務に耐えられるかどうか、
あのスピーチの成功にかかっていたのではないかと思います。
この箇所を読み、私自身この映画の真意を理解していなかったことに気付きました。
回答者様の素直で無垢な心が文章に表れていて、こちらまで心が洗われる気持ちになりました。感謝します。
No.3
- 回答日時:
僕はこの作品に自らを重ね合わせて観ました。
正直、現在でも吃音の傾向があります。周り(殊に実際の親)は「口を大きく開けろ」だの「腹から息を出せ」だの勝手なことを口にするので疎ましく縁を切りたいとすら思った事もこれまでどれほどあったか。
吃音の人間は決して意識して言葉を発しようとしてないのではありません。言葉を発しようとして必死になるけれど中々言葉としてでてこない事に苛立ちやもどかしさを感じもがき続けている。そして周囲に伝えようとすればするほど周囲が何か異常なモノを見るような視線に変化していき、本人は孤独感に苛まれ俯きになってしまう悪循環に陥っていきます。本当に孤独です。
この作品には「たった一人の理解者」が即かず離れずの形で登場しますが、彼がジョージ6世に行った?治療の本音は「君は決して一人ではない」事を如何に知らせるか、だったと思われます。
音楽家のベートーベンが音楽家でありながら音を失ったことを想起するなら、ベートーベンとジョージ6世の孤独には互いに共鳴し合うモノがあると思われます。音を失った音楽家がその後も数々の楽曲を残し得たのは音楽が持つ懐の深さ、音が単に空気の物理的な振動としての音の羅列ではなく、楽曲の持つ絵画的な表現やらメッセージ性にあると思われます。言葉と音そしてそこに込められた人間の想いが凝縮された作品と僕は感じました。もし質問者様がもう一度この作品を観る機会がありましたら、「もし私が彼と同じ立場だったらどうだろう」と考えながら観ると、違う感想が生まれると思われます。
ご回答ありがとうございます。
吃音の方は本当は喋りたい言葉があるのにどもるためにあえて即座に言い易い言葉に変えたり、タイミングをみて勢いで話したり、この映画の様にメロディーに乗せて喋ったり(音楽の力)、その苦労はなかなか普通の人には分かりません。その苦しい思い、十分に分かります。その分、文章など他の自己表現に長けた人が多いですね。
どうぞ、決してご自分を孤独とは思わないで下さい。
なるほど、音楽家にとって致命的である「音」を失ったベートーヴェンとジョージ6世には共に孤独という共通性があるのも確かにうなずけます。
私はこう思いました。映画の最初ではBGMにモーツァルト(クラリネット協奏曲)が流れています。そして結びではベートーヴェンに変ります。それも「不滅のアレグレット」として過去数々の映画のBGMに登場した交響曲第7番第二楽章。この曲は最初に単調なリズムに始まりやがて各パートに受け継がれ変奏され盛り上がり再び静かに終わります。あたかも音楽の「言葉」のようです。音楽・・・それまでモーツァルトまでは教会や王侯貴族達、特権階級だけのものだったのがベートーヴェンによってはじめて市民階級に降りました。確かにベートーヴェンの音楽はサロン的ブルジョア的ではなく、極めて人間的であり生命感に溢れ苦悩から勝利に向って進みます。この映画もそのあたりを十分理解しBGMとして使ったかと。そうであれば敵国ドイツの音楽云々などと浅はかに言った自分を今更ながら恥じています。
尚、最後の最後でベートーヴェンのピアノ協奏曲「皇帝」とは、さすがに出来すぎ?とまでは言わないけれどイギリス人ならではの粋なはからい?とは思いましたが・・・笑。
No.2
- 回答日時:
この映画を見たとき、「炎のランナー」の再来だと思いましたよ。
で、アカデミー賞を取ったことも納得できたのです。アメリカ人(アカデミー協会のお歴々)はこういう映画が大好きですからねえ。というか、こういう「ノブレス・オブリージュ」を主題にした映画に憧れてさえいるんですよ。ナノで、点が甘くなってしまうのです。
こういう映画というのは、実はハリウッドが逆立ちしても作れない種類の映画です。何せ、アメリカは王室や貴族社会を持った歴史がありませんから、王というものを本質的には理解できないんです。こういうのを作らせたら、英国人の右に出る者はいないでしょう。
ご回答ありがとうございます。
仰るとおり歴史が浅く、王室を持たないアメリカはそもそもルーツであるイギリスに強い憧れを持っているのでしょうね。
「炎のランナー」是非観たいと思いました。
ところで本題からそれますが、私はS・キューブリックの作品が大好きなのですね。
確かにハリウッド映画などでは絶対につくれない独特の映像美と深さ。あと、作品が様々なジャンルにわたり、かつ、全てが非常に凝っているのも驚きです。
調べたら彼はアメリカ生まれで後イギリスに移住とあります。英国の風土や習慣、さらに歴史的背景等が彼の感性にうまく融合し一連の傑作を誕生させたとも思います。
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