No.10ベストアンサー
- 回答日時:
3報目です。
1,2報の内容をまとめます。技術分野で使われる「公差」はある部品要素の対称となる測定値の上下の限界値を示し、
A±a、a は「公差」、 の様に表される。
ある部品がこの部品要素の集合体として形成されその公差を考える場合、該部品の示す
「最終公差」を、例えば該部品が部品要素A±a,B±b,C±cより成る場合、
±(a + b + c) と表すことができる。
上の「最終公差」は、許容される最大限界値であり、一般的には大きすぎるため、次に
定義する「集積公差」が使われている。
a) 集積公差 = ±√(a^2+b^2+c^2)
b)集積公差 = ±√(σa^2 + σb^2 + σc^2 )
ここに、σaは部品Aの誤差a の分散
ここで2乗の形式が採用されているのは、誤差の相殺効果を避けるためである。
a)の定義は、a + b + c≧√(a^2 + b^2+ c^2)の関係を使い、最大限界値では大きく
成りすぎるという難点を解消するための便法である。
b)の定義は、形式的にはa)のa,b,cをσa,σb,σcで置換えたものであるが、理論的には
a,b,cのそれぞれが正規分布に従い、かつ独立であるとして導出することができる
(第2報参照)。(a^2,b^2,^2cの期待値を個別に計算したのが第1報。)
したがって、「集積公差」として定義a),b)が混在して使われているが、理論的裏付けが
有り、分散データと関連付けされた定義b)の方が望ましい。
「公差」とσと3σに付いての、考察。
納入仕様書で「公差a,b,c」の取決めが行われる。a,b,cの決定は部品要素の実際の
測定データに基づき行われ。その際にデータの分散σから3σを「公差」と定める
ことが多い。例えば、部品Aに付いてσaが得られたら公差a =3σa である。
正規分布を仮定した場合、3σaでの誤差出現確率0.26%以下は小さな確率では無い。
しかし、これが広く使われている理由は、多くの場合部品寸法誤差等の分布は
裾に尾を引く西洋釣鐘形では無く、裾の無い日本釣鐘形になり、それに対して求められた
σaに対して3σaなら0.1%以下の確率となることが多い。
シビアーなユーザ(上の点を見通しているユーザ)や精度の要求される部品では、
a=2σa を要求される事もあります。
この場合の対応法は1)日本釣鐘の形がリスク無く2σaに入るか、2)2σaと3σa
の間の2.5σaで手を打つか、3)公差を外れた際の救済策を予め取決めておく、
等です。
経験的に知られている事は、最終部品の「公差」を達成するためには各部品要素の
「公差」の精度は最終部品「公差」の精度より低くても良い場合が有ることです。
これをご質問の「3σ問題」と関連させて検討します。第2報を参照してください。
最終部品の「公差」ΔZとすると
ΔZ = 3δZ = 3√(∑σi^2)≡ √(Σσi’^2) (1)
ここでσi’は部品要素iが「集積公差」の式を満たす分散を示すとした時の、
σiに相当するいわゆる「対応」分散です。
この式の両辺を2乗すると
√(Σσi’^2)= 9(∑σi^2) (2)
これが「対応分散」σi‘と「分散」σiの関係式です。
これ以上は議論できないので、A,B,Cの絶対値から離れa,b,cは相対誤差
とし(正規分布曲線の規格化)、A,B,Cの分布曲線も同じ形とします。
この場合、(2)式は簡単化され
nσ’^2 = 9nσ^2
σ’ = 3σ (3)
驚いた事に、部品要素A,B,C・・・の分散は部品要素の数nに係わらずσで
良い事に成ります。
言い変えれば、各部品要素の相対誤差(%誤差)の分散がσなら、部品要素の
数nの如何にも係わらず、最終部品の「公差」は3δZ(3x集積公差)で与えられる。
品質保証責任者をしていたことが有り、ユーザと規格書を取り交わし承認する
立場でしたが、「公差」と「集積公差」とのこの奇妙な関係には気付きませんでした。
そもそも「集積公差」が問題となる分野では無かったからかも知れませんが。
もし当時若い技術屋が同じ質問を私にしたら、教えてGooかYahoo質問箱で
聞いておけ!こちらは忙しいんだ!で済まして居たかもしれません。
??な回答も有りますが、私の一連の回答も一つの解釈と捉えてください。
参考になれば幸いです。
No.9
- 回答日時:
No.5について、追記です。
[2]
・「集積公差」は部品を積み重ねた寸法の公差のことである。
・「公差」は「寸法公差」のことではなく、寸法の分布にかかわる言葉である。
の場合の記載をもう少し丁寧にやろうと思います。
=======================
仮に、部品Aの寸法の「公差」aが標準偏差σ[A]のK倍の値を示しているものだとします。
a = K σ[A]
すると、積み重ねたものの寸法の標準偏差σのK倍である「集積公差」は
Kσ = K √((σ[A]^2)+(σ[B]^2)+(σ[C]^2)) = √(a^2)+(a^2)+(a^2))
であるから、
> 集積公差 = ±√(a^2+b^2+c^2) …(1)
はKがいくらであっても成立ちますが、
> 集積公差 = ±√( (A部品のσ)^2 + (B部品のσ)^2 + (C部品のσ)^2 ) …(2)
が正しいのはK=1の場合に限られます。
さらに、ご質問に
> ABCは正規分布です。
とある。その場合、積み上げたものの寸法も正規分布に従い、平均はA+B+C, 標準偏差は上記のσです。
次に、
> 集積公差を外れる確率はなぜ3σなのですか
についてです。(No.5の[2]ではそこで話を打ち切ってしまいましたが、あれは不適切でした。)
上記においてもしK=3ならば、つまり、もし「標準偏差の3倍を公差と呼ぶ」というルールが決めてあったならば、積み重ねて作った品物について
(寸法が集積公差の範囲を外れる確率) = (寸法が3σを外れる確率)
である。これが
>> 集積公差を外れる確率はなぜ3σなのですか
と仰る意味なのかも知れません。もしそうなら、上記(1)式は成立つけれども(2)式は右辺をK=3倍しなくては正しくありません。また、積み上げたものの寸法が正規分布に従うので、部品の個数Nが少なくてもNo.5の[4]にある考察の後半部分にある、
>> 積み重ねて出来た品物のうち99.73%はm±3σの範囲に入る。
という結論が成立ちます。すなわち、積み上げたものの寸法が標準偏差σの3倍よりも大きく外れてしまう品物の発生確率は0.27%である。(累積正規分布表を使えば分かります。)
そこで3σを「集積公差」と決めておけば、検査ではねられる不良品の発生確率は0.27%である。これを、「許容できる程度の不良率」と見なす(かどうかはそれぞれの業界・現場によって違うでしょうが)ならば、「標準偏差の3倍を公差と呼ぶ」と決めておくというルールにはそれなりの合理性があります。
=========================
まとめますと、
●解釈(i) (No.5の[2], および上記)
・「公差」は「寸法公差」のことではなく、寸法の標準偏差の3倍のことである。
・「集積公差」は部品を積み重ねた寸法の「公差」、すなわち寸法の標準偏差σの3倍のことである。
・ 部品A, B, Cの寸法はそれぞれ正規分布に従う。
という解釈では、部品を積み重ねた寸法も正規分布に従う。そして、式(1)は正しく、式(2)は正しくない。
「公差」として寸法の標準偏差σの3倍を使うのは、不良率が適度に低くなるようにしたからである。
●解釈(ii) (No.5の[3])
・「公差」は「寸法公差」の略語である。
・「集積公差」は「公差」ではなく、部品を積み重ねた寸法の標準偏差σの3倍のことである。
・ 部品Aの寸法は最小値A-a, 最大値A+aの一様分布に従う。部品B, Cも同様。
という解釈では、Aが従う一様分布の標準偏差はσ[A] = a/√3 なので、
3σ=√(a^2+b^2+c^2)
である。従って、式(1)は正しく、式(2)は正しくない。
「集積公差」として部品を積み重ねた寸法の標準偏差σの3倍を使うのは、不良率が適度に低くなるようにしたからである。
●さらに、解釈(iii) として、
・「公差」は「寸法公差」のことではなく、寸法の標準偏差のことである。(まさかと思いますがね。)
・「集積公差」は部品を積み重ねた寸法の「公差」、すなわち寸法の標準偏差σのことである。
・ 部品A, B, Cの寸法はそれぞれ正規分布に従う。
という風に解釈すると、部品を積み重ねた寸法も正規分布に従う。そして、
式(1)、式(2)はどちらも同じことを言っていて、どちらも正しい。しかし、
> 集積公差を外れる確率はなぜ3σなのですか
は全く意味不明になる。
No.8
- 回答日時:
前回の回答がどうもスッキリしないので、もう一度整理してみました。
前の回答、今回の回答共にWebの説明に自分なりの解釈を付けたものです。
誤差の確率的な側面と、誤差の累積という面から整理しました。
ある部品の寸法Zは、その各部X1,X2,・・・・Xnの関数Z(Xi) であるとする。
さらに、寸法Zは各部分の寸法Xiの和として表されるとする。
Z = ∑Xi i = 1~n (1)
Zの微小変化⊿Zは
⊿Z = Σ∂Z/∂Xi*dXi i = 1~n (2)
(1)式から、
∂Z/∂Xi = 1 すべてのiに付いて。
したがって(2)式は
⊿Z = ∑dXi (3)
この⊿Zの2乗を集積公差δZの2乗と定義すると。
(δZ)^2 = (⊿Z)^2 = (∑dXi)^2 (4)
ここで、(δZ )^2 の期待値 <(⊿Z )^2> の計算を考える。
条件は:
1)製品の最終寸法誤差が⊿Z である確率をP(⊿Z) とする。
2)部品寸法 Xi の誤差がdXi である確率を p(dXi) とする。
3)各部品寸法の誤差は独立に発生する。
P(⊿Z) = ∏ p(dXi) 積∏はi = 1~n (5)
<(⊿Z )^2> = ∫(⊿Z )^2* P(⊿Z) *d(⊿Z)
= ∫・・∫{∑(dXi)}^2* ∏ p(dXi)*d(dXi)
= ∫・・∫{∑(dXi)^2 + 2∑dXi*dXj}* ∏ p(dXi)*d(dXi)
{ }内の和は、第一項は i = j、第二項はi ≠ j の全てについて取る。
Xi、Xj が互いに独立なら第二項の積分は0となる。
したがって
<(⊿Z )^2> = ∑∫・・∫ (dXi)^2*∏ p(dXi)*d(dXi) (6)
p(dXi) が正規分布である場合、
p(dXi) = (1/(√(2π)*σi))exp{-(dXi)^2/(2σi^2)} (7)
∫(dXi)^2*p(dXi)*d(dXi) = σi^2
∫p(dXi)*d(dXi) = 1より
<(⊿Z )^2> = ∑σi^2 i = 1~n (8)
よって、各部品の誤差が互いに独立で、誤差が正規分布に従い、最終製品の
誤差が各部品の誤差の和として表される時、(4)式で定義される集積公差は
次式で表すことができる。
δZ = √(∑σi^2) (9)
Web上ではこの様な整理は見つかりませんでした。
化学物理出身の材料・機械技術屋で品質関係もやってました。
そんな訳で、ぶらっと来た数学欄で気になって深入りしました。
参考になれば幸いです。
(1)式の形が違う場合や、誤差間に相関がある場合や、分布が正規分布で
無い場合には、原理的には上の手順で計算できますが、簡単な式になるかは
甚だ疑問です。
No.6
- 回答日時:
この関係のWeb記事を見てみると「公差」の意味が曖昧なのに
まず気付きます。
図面にA±a B±b C±cと記入して有った場合の「交差」は、それ自体では
何らの確率統計的な意味を持ちません。
当事者間の取決めですが、それを決めたベースとして統計データの裏付けが
有るか、鉛筆を舐めてエイヤ!と決めるかはその時の状況次第です。
「集積公差」は、普通は3部品をアセンブリした場合の最大交差zを意味し
z = a + b + c です。 (1)
この交差は最大値なので大きくなりすぎるきらいが有ります。
それで、2乗平均は相加平均よりも小さいこと考慮した「集積公差」z‘を
z‘ = √(a^2 + b^2 + c^2) (2)
と定義します。
アセンブリの「集積公差」の計算にはこの式がよく使われます。
2つの違いについては下記URLを見てください。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/200 …
ただし、このURLの<これに対して各部品が正規分布でバラついていると考え,
「分散の加法性」を利用して・・・>の説明にはもう1ステップ必要です。
さて数学の欄ですから、2番目の式の導出について考えてみましょう。
ある部品の寸法Zは、その各部X1,X2,・・・・Xnの関数Z(Xi)とします。
Zの微小変化⊿Zは
⊿Z = Σ∂Z/Xi*dXi (3)
和はi = 1からnまで、となります。
⊿Zは各項の変化の和なので、これをa,b,cに相当するものとして
相対誤差δZを「分散の加法性」に倣って次の様に定義します。
δZ = dZ/Z = {√(Σ∂Z/Xi*dXi)^2}/Z (4)
例として1) Z=X1+X2, 2) a) Z= X1*X2, b) Z =X1/X2を考えてみます。
1)∂Z/dX1 = ∂Z/dX2 = 1
δZ = √{(dX1)^2 + (dX2)^2}/(X1+X2)
2) a)∂Z/dX1 =X2, ∂Z/dX2 =X1, b)∂Z/dX1 =1/X2, ∂Z/dX2 =X1/(-X2^2)
a)dZ = √{(X2*dX1)^2 + (X1*dX2)^2}= X1X2√{(dX1/X1)^2 + (dX2/X2)^2}
δZ = dZ/Z = √{(dX1/X1)^2 + (dX2/X2)^2}
b)dZ = √{(dX1/X2)^2 + (X1dX2/x2^2)^2}=(X1/X2)√{(dX1/X1)^2 + (dX2/X2)^2}
δZ = dZ/Z = √{(dX1/X1)^2 + (dX2/X2)^2}
参考URL(7,8頁。相対誤差と絶対誤差の区別曖昧。)
http://www.tuat.ac.jp/~watanabe/Watanabe_Lab/Tot …
X1,X2,X3の3項を考え、Z=X1+X2+X3 とした時の、絶対誤差は
dZ = √{(dX1)^2 + (dX2)^2+(dX3)^2} (5)
さてここで、統計的な手法に移ります。
(5)式のdXを平均値Xavからの外れとみなします。
A,B,Cのデータがそれぞれ独立で、平均値Xav、分散σの正規分布
F(X) = exp{-(X-Xav)^2/2σ^2}/(√(2πσ)) に従うとします。
(5)式のX-Xav = dXですから、F(X)の式を使い(dX)^2の期待値<(dX)^2>が
求められます。
<(dX)^2>=∫(dX)^2 F(dX)d(dX) = σ^2
つまり、上下限値a,b,cではなく、誤差の式の(dXa)^2,(dXb)^2,(dXc)^2を、それらを
期待値、正規分布の分散σa,σb,σc、で置き換えたものが
<dZ> = √(σa^2 + σb^2+ σc^2) (6)
2番目の式です。
まとめると、
1番目の式は誤差の分布に関係なく公差a,b,cを使い定義された式。
2番目の式はデータの2乗のバラツキが正規分布の分散σ^2に相当
するとして得られたものです。
両者に直接の関連は無いと言えます。
多くのケースでは次の様になります。
a + b + c>√(a^2 + b^2+ c^2)>√(σa^2 + σb^2+ σc^2)
3σの質問は正直意味不明です。
正規分布では、±σの範囲には68.26%、±2σの範囲には95.22%、
±3σの範囲には99.74%のデータが入ります。
不良率が0.26%以下という意味で品質管理の目安に3σが広く使われています。
従ってこの3σの値を考慮して公差a,b,cを決めているケースが多いです。
正規分布を規格化した時A,B,Cの分布が同じとすれば、σa=σb=σc=σx。
<dZ> = √(3σx^2) = √3*σx=3σ
σx= √3σ= 1.732σの範囲(91.64%のデータが入る)に入れば集積公差は
3σに入ります。これは数字をひねっただけです。
「集積公差」は多くの技術屋さんが悩む問題の様です。
http://www.nc-net.or.jp/knowledge/morilog/detail …
No.5
- 回答日時:
ANo.4について。
どうも、「公差」という用語はJIS規格で定義されてはいないように思います。 また、「集積公差」という用語の定義もなさそうです。(似たような用語に「累積公差」なるものもあるようで、これもまた定義が見当たらない。)
ですから、もし、関係なさっている業界・職場でこれらの用語が通用しているのなら、通用させている人たちにその定義を尋ねるしかあるまい、というのが回答です。
しかしそれじゃ駄目だと仰る。ならば、以下の議論に付き合って戴くしかなさそうだな:
[1] まず手始めに、ご質問にある「公差」「集積公差」が寸法公差のことだと解釈するとどうか。
すなわち、
・本来「寸法公差」と呼ぶべきところを勝手に略して「公差」と呼んでいる
・「積み上げた物の寸法公差」を「集積公差」と呼んでいる
と考える。略語らしい言葉を解釈する際に最も普通の考え方だろうと思います。
寸法公差をA±aと示すと、これは許容する最大値A+aと最小値A-aで決まる範囲を意味します。3つの部品を積み上げたものの寸法公差を考えると、(A±a)+(B±b)+(C±c)の最小値は(A+B+C)-(a+b+c), 最大値は(A+B+C)+(a+b+c)であるから、
(A+B+C)±(a+b+c)
と表示することになる。
寸法公差は部品のはめ合いを設計する場合にこそ重要です。はめ合いがうまく行くためには、許容する最大値と最小値が必要なのであって、標準偏差など全く意味がありません。なので、寸法公差を、許容する最大値と最小値で示すのは理に適っています。
でも、この計算方法は、ご質問のふたつの式のどちらとも合わない。ということは
● ご質問にある「公差」か「集積公差」のどちらか(あるいは両方)は、「寸法公差」とは別の意味を持つ言葉である。
ということが推察されます。
[2] 次に、
・「集積公差」は部品を積み重ねた寸法の公差のことである。
・「公差」は「寸法公差」のことではなく、寸法の分布にかかわる言葉である。
と仮定するとどうか。というのは、ご質問に
> ABCは正規分布です。
とあり、これは「公差」が「寸法公差」ではあり得ないことを示しているからです。
だとすると、「公差」は部品の寸法の標準偏差かその定数倍を示していると考えられます。部品Aの寸法が従う分布の標準偏差をσ[A]とするとき、ある定数Kを使って
a = K σ[A]
と書けるのだ、と仮定する。すると、ご質問にある二つの式が共に正しくなるのはK=1の場合に限られます。
これがANo.4の回答です。
しかし、この考え方では、
> 集積公差を外れる確率はなぜ3σなのですか
は全く意味不明です。
[3] 標準偏差を±aのように書く事はあるけれども、それを「公差」と呼ぶのはいくら何でもおかしいだろう、と思います。(以下の、公差と標準偏差の関係についての議論をご覧になれば、その「おかしさ」がお分かりになるでしょう。)ならば
> ABCは正規分布です。
という部分を疑うべきじゃなかろうか。そこで、
・「公差」は「寸法公差」の略語である。
・「集積公差」は「公差」ではなく、何か寸法の分布にかかわる別の意味の言葉である。
と仮定するとどうか。
寸法公差が与えられたとき、品物の寸法の分布をどう想定するかというと、(実際の精度管理がどうあれ)最悪の状況、すなわち「作る度にデタラメな寸法のものができてしまうが、検査して、その中から最大値A+aと最小値A-aで決まる範囲に入るものだけを合格とする」というやりかたである、ということを前提に考えるのが普通です。これは、合格品の寸法xが最大値A+a, 最小値A-aの一様分布に従う、と仮定するのと同じであり、この分布の平均値はA, 標準偏差はa/(√3)。
すると、3個の部品を積み上げた時の寸法の分布は、平均が(A+B+C) 標準偏差が
√{(a/(√3))^2+(b/(√3))^2+(c/(√3))^2}
= (1/3)√(a^2+b^2+c^2)
です。また、この分布はもちろん、最小値(A+B+C)-(a+b+c)と最大値(A+B+C)+(a+b+c)の範囲外では確率が0です。
(ただしこれは一様分布ではなく、正規分布でもない。いささか複雑な式で表される確率分布です。というのは、まずA部品とB部品を積んだ品物の寸法は、 a≦b となるように名前を付け直したとき、
-a-b≦x≦a-b → (x+a+b)/(4a^2)
a-b≦x≦-a+b → 1/(2a)
-a+b≦x≦a+b → (x-a-b)/(4a^2)
それ以外→ 0
という分布に従う。いや、ここまではまだ良いのですが、C部品を加えると→の右側にはxの2次式が出てくるばかりか、a,b,cの大きさに依存して場合分けが猛烈に複雑になり、「a≦b となるように名前を付け直」すというような簡単な処方では済まない。畳み込み積分を使えば簡単に表せますが、計算公式として使えるような形に書くのは大変で、実際にa,b,cの数値を与えないと書いてみる気にもなんないようなシロモノです。)
そこで、「集積公差」は「公差」とは違って(つまり最小値と最大値の範囲を示すのではなく)、積み上げた寸法の分布の標準偏差の3倍を表示するものだったとするならば、その値は
√((a/√3)^2+(b/√3)^2+(c/√3)^2)×3 = √(a^2+b^2+c^2)
となって、ご質問にお書きの第一の式と一致します。
[4] では「ナンデ3倍??」なのか。
もし、(わずか3個の部品ではなくて)ずっと沢山の部品A[1], A[2], ..., A[N]が積み重ねられる場合、しかも、それぞれの寸法が従う分布の標準偏差σ[1], ... ,σ[N]がどの部品もだいたい同じぐらいである(だいたいでいいけれども、例外となる部品があってはならない)という条件が成立つならば、積み重ねたものの寸法は正規分布でよく近似できるようになり、その正規分布の平均mと標準偏差σは
m= ΣA[j]
σ=√{ Σ(σ[j]^2) } (Σはj = 1,2,...,Nの総和)
になります。
ご存知とは思いますが、積み重ねて出来た品物のうち99.73%はm±3σの範囲に入る。だから、積み重ねて出来た品物の寸法公差を±3σとしておけば、検査ではねられる不良品の発生確率は0.27%。
これを、「許容できる程度の不良率」と見なすかどうかはそれぞれの業界・現場によって違うでしょう。
==============================
以上まとめますと、
仮に
・「公差」とはJISで言う「寸法公差」のことである
・「集積公差」とは、品物を積み重ねた物の寸法の標準偏差σの3倍である
と考えると:
(1) 品物A[j]の公差がa[j]であるとき、品物A[j]の寸法の分布は一様分布であって、その標準偏差σ[j]は
σ[j] = a[j]/√3
である。
(2) 沢山の品物A[1], A[2], … , A[N]を積み重ねた物の寸法の集積公差は
3σ=3√{ Σ(σ[j]^2) } = 3√{ Σ((a[j]/√3)^2) } = √{ Σ(a[j]^2) }
である。
(3) Nが大きく、しかもσ[j]がどれもだいたい同じぐらいである(つまり、公差a[j]がどれもだいたい同じぐらいである)場合、積み重ねた物の寸法が集積公差をはずれる確率は0.27%程度である。
このように考えれば、ご質問にある
> 集積公差を外れる確率はなぜ3σなのですか
という意味不明の言葉の意味もなんとなく通じるように思われます。
No.4
- 回答日時:
これは数学ではなくて、言葉の定義の問題かと思います。
A部品の、寸法だか質量だか体積だか何かは分かりませんがそのナニカの値は、標準値Aを平均とし標準偏差がσ[A]である正規分布に従う。B部品のナニカの値は、標準値Bを平均とし標準偏差がσ[B]である正規分布に従う。 C部品についても、同様である。というのが前提の話ですね。
さてここで、
> A部品のσ
とお書きなのは、このσ[A]のことだろうと思われます。
さて、そういうことだとしますと、もしも
> A±a
と お書きの±の後ろに付いているaが、A部品のそのナニカの値の標準偏差であるならば、つまり
a = σ[A], b = σ[B], c = σ[C]
であるならば、ご質問にある二つの式は全く同じことを指しています。
ですから、「部品寸法 A±a」だとか「集積公差」だかおっしゃるものの数値の意味(定義)をお調べになれば、おそらく、
●「部品寸法 A±a」のaは部品のそのナニカの値の標準偏差
●「集積公差」とは部品を組み合わせたものの持つそのナニカの値の標準偏差
である、ということが確認できるだろうと予想します。
質問がわかりにくく、すみません。
丁寧なご回答ありがとうございます。
図面寸法に「A±a」「B±b」「C±c」とあり、
この時、全ての部品について最大値または最小値をとる確率は非常に低い。
そこで、3σの確率でなる組み合わせた公差を知りたいです。
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