No.3ベストアンサー
- 回答日時:
>この「同主短調であるA-moll(A minor)や、」はe-moll (E minor) ということでしょうか?
申し訳ありません。書き間違いです。
この部分はどういう風に解説をまとめたらわかりやすくなるだろうかと思って書き直している間に、自分が混乱しました。「同主短調であるE-mollからのIV度和音の借用や、シャープの少ないG-durへの転調が頻繁に起きるので・・・」と書くべきところでした。なぜ間違えてA-mollと書いたかというと、「E-durのI → E-mollのIVの借用」という和声進行は、場所によってはむしろ「A-mollのV → I」のように聞こえるからです。たとえば11小節目の1、2拍目です。その少し前、7小節目から8小節目前半にかけては明らかにA-durへの転調という形になっているので、その流れで聞くと、11小節目の1、2拍目はA-mollのカデンツに聞こえます。それ以外の部分のA-C-Eの和音も、E-mollのIVの借用と明確に判定できるわけではなく、どちらとも取れる曖昧な状態にあります。そんなことを考えている間に、いつの間にか両方が混同された書き方になってしまいました。もっと誤解のない書き方に直すとすれば、「A-C-Eの和音 ― これは同主短調E-mollのIVの借用とも下属調の同主短調A-mollへの転調ともとれるが ― の頻出で第三音C#がしばしば半音下がったり、シャープの少ないG-durへの転調が頻繁に起きたりするので、E-durの調号でシャープを四つ書くと、頻繁にナチュラル記号を書かなければならなくなる」ということになるでしょうか。
>>「E-durのI → E-mollのIVの借用」という和声進行は、場所によってはむしろ「A-mollのV → I」のように聞こえるからです。たとえば11小節目の1、2拍目です。その少し前、7小節目から8小節目前半にかけては明らかにA-durへの転調という形になっているので、その流れで聞くと、11小節目の1、2拍目はA-mollのカデンツに聞こえます。
たしかに。11小節目1-2拍目は、E-Aと強進行しており、あえてA-mollっぽくしておいて...しかしすぐにB(Eの属和音)-EMの進行を出して、「いや実はここではA-mollではないんだ」、といい意味で期待を裏切られる感じがします。
大変納得できました。何度もおつきあいいただきありがとうございました。すごく勉強になりました。
一応これで、ベストアンサーとさせていただきます。
P.S
甘えついでといっては難ですが、最近、サミュエル・バーバー、デロ・ジョイオなど、わりと新しいアメリカの作曲家の和声にも興味があります。お手すきの時にでもお知恵を拝借できればと思います。その折りよろしくお願いします。
No.2
- 回答日時:
補足質問の内容を受けながら、もう一度見直してみました。
昨日は、一応曲全体を一度だけ通して聞いたのですが、ほとんど冒頭の部分のみを見ての考察でしたし、時間が遅かったので、考えがまとめきれませんでした。今日あらためて楽譜も全曲通して見てみたので、改めて書き直します。まず、ピカルディのIの従来の意味から言うと、短調の曲の最後が長三和音で終止する場合に限られるので、それを多少拡大解釈して、まとまったフレーズの締めくくりに出てきた場合についても適用することは不可能ではないかもしれませんが、曲の冒頭の最初の和音だけではまだ調性が何なのかもわからないわけですから、ピカルディのIから曲が開始する、という説明は不可能だと思います。そして、6小節目と12小節目も、フレーズの終わりということで、多少無理をしてそう解釈できないこともないという程度の意味で書きました。正直言ってこれは、教会旋法が使われているという解釈を可能にすることができるとすればどのような方法によってできるか、という、結論を先に設定した場合の「つじつま合わせ」のようなものでした。
今日あらためて全曲チェックしましたが、調号がシャープ一つであるにもかかわらず、E-moll(E minor)の主和音、E-G-Bが一か所も出てきません。E-mollと確定できるところがないとなると、E-G#-Bの和音をピカルディのIと解釈するのはさすがに無理といわなければなりません。この曲の主調は、結局のところE-dur(E major)とするのが妥当ではないかというのが私の結論です。調号がシャープ一つなのは、全体的に長調か短調かはっきりしない性格だからという理由もあるかもしれませんが、記譜の便宜上のことにすぎない可能性も高いと思います。同主短調であるA-moll(A minor)や、シャープの少ないG-dur(G major、これは「三度近親調」といって、主調の主音と3度の関係にある音を主音とする調を近親調の一つと見なすのですが)への転調が頻繁に起きるので、E-durの調号でシャープを四つ書くと、頻繁にナチュラル記号を書かなければならなくなります。
主調をE-durと解釈し、ピカルディのIという無理な解釈をやめて、その代わりに、2小節目をはじめ曲中に何度も出てくるA-C-Eという短三和音を、同主短調E-mollのIVの和音の借用と考える方が自然だと思います。それと、細かな転調がたくさんあるのですが、古典派の音楽にはあまり使われない転調の方法、先ほどちょっと書いた「三度近親」という考え方による転調や和音の交替が多いため、普通の「全音階」のイメージがややぼやけているところはあります。リストがよく使った技法ですが、発想自体はベートーヴェンやシューベルトにもすでに出てきています。ロマン派以降はごく普通の技法になっていきます。
以上のような理由から、教会旋法と解釈するのは基本的には無理だと思いますが、何か旋法が使われているかのように聞こえるのはわかります。主和音が常に長三和音で、IV度には短三和音の借用が多いので、全体の響きからの残像として、E-F#-G#-A-B-C-D-Eという「音階」が浮かび上がります。これに一致する教会旋法はありませんが、「ミクソリディア旋法」と一音違いです。リストがこういう音階をあらかじめ意識して書いたということはないでしょうが、結果的に教会旋法風の雰囲気が漂うことになったということはあると思います。
少し難しい話になってしまったと思いますが、よろしいでしょうか。いずれにしても、分析のしかたに複数の解釈の余地は残ると思います。
再度の回答ありがとうございます!
E-dur を基礎となる調性としつつ、準固有和音のⅣや、三度近親調の多様、といった解釈に物凄く納得できました。
すいません、一点だけ確認なのですが、
>>結局のところE-dur(E major)とするのが妥当ではないかというのが私の結論です。調号がシャープ一つなのは、全体的に長調か短調かはっきりしない性格だからという理由もあるかもしれませんが、記譜の便宜上のことにすぎない可能性も高いと思います。同主短調であるA-moll(A minor)や、
この「同主短調であるA-moll(A minor)や、」はe-moll (E minor) ということでしょうか?
No.1
- 回答日時:
むずかしい質問です。
教会旋法を読み取ることが不可能とは言い切れませんが、和声の上での転調が短い区間で行われていて、広い音域に渡る旋律線が成立していないので、耳で聞いただけですぐに認識できるほど教会旋法の特徴が出ているとは言えないと思います。
ピカルディのIという和音の名称を御存じでしょうか。短調の曲で、最後の小節だけ同主長調のIを使うことです。この曲の調号はシャープ一つなので、作曲者の認識としてはE-moll(E minor、ホ短調)で、6小節目と12小節目のE-G#-BはピカルディのIと解釈することはできると思います。そのように見た場合、4~6小節と10~12小節は、E-F#-G-A-B-C-D-Eというエオリア旋法(自然短音階と同じ)と読み取ることもできますが、耳で聞いた場合は単なる転調の結果生じた旋律線としか感じられないと思います。1~3小節に関しては、教会旋法とは言えませんが、むしろ2小節目の旋律のD#→Bの下行は、リストの曲によく出てくるハンガリーの民族音階を連想します。8小節目後半から9小節目にかけてをミクソリディア旋法ととることも考えてみましたが、これはさすがにこじつけで、常識的には7~8小節目をA-dur(A major)、9小節目のみが転調してH-moll(B minor)のVの和音ととるべきと思います。
基本的には、通常の全音階の単純な和音を使いつつ、ルネッサンス時代の音楽にときおりみられる転調効果を模した偽古典的な手法と考えた方がよいと思います。
こちらでも解答いただきました、ありがとうございます!!! なるほど、教会旋法を意図的に使用したと考える積極的な理由は見出し難いということですね。
>>作曲者の認識としてはE-moll(E minor、ホ短調)で、6小節目と12小節目のE-G#-BはピカルディのIと解釈することはできると思います。
>>ピカルディのIという和音の名称を御存じでしょうか。短調の曲で、最後の小節だけ同主長調のIを使うことです。
はい、知識として知っています。またバッハの作品なんかでもよく耳にします。
ところで、この動画では聞き取りずらい(しかも楽譜もみずらい)ですが、冒頭は E-G#-B(Emajor)で始まっています。冒頭からいきなり ピカルディのIが用いられているケースと理解してよろしいでしょうか?
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