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No.3ベストアンサー
- 回答日時:
質問者さんの補足欄、
>そう言う単純なことを聞いているのではないのですが………。
に賛成です。
青空文庫という便利なものがあるので、それで「K」をマーキングして行動を追ってみましょう。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/773_1 …
まず、Kは浄土真宗の僧侶の息子であること、それが医者になるために養子にもらわれた子であること、さらに母親には早くに死に別れ、継母との間もうまくいっていないらしいことが記されます。
Kも先生同様、大変に孤独な存在でした。
大学が進むに連れて、Kは次第に心身の調子を崩していきます。
「彼の焦慮り方はまた普通に比べると遥かに甚しかったのです」(22)
Kは何を焦っていたのか。
「Kは中学にいた頃から、宗教とか哲学とかいうむずかしい問題で、私を困らせました」(19)
あるいはまた、郷里にも帰らず、寺に一人籠もって、聖書なども読みふけっていた。
「Kはただ学問が自分の目的ではないと主張するのです。意志の力を養って強い人になるのが自分の考えだというのです。それにはなるべく窮屈な境遇にいなくてはならないと結論するのです」(22)
Kは学問の道に進むつもりはなかった。
ならば自分はどう生きていくのか。
信仰の道に入っていくのか。
それが明確にならないゆえの焦りだったのではないでしょうか。
そうしたKにたいして、先生は
「私は仕方がないから、彼に向って至極同感であるような様子を見せました。自分もそういう点に向って、人生を進むつもりだったとついには明言しました」(22)という態度を取ったのです。
房総半島に旅行に行った時も、お嬢さんのことで頭が一杯の先生に対し、
「Kはしきりに日蓮の事を聞いていたようです。日蓮は草日蓮といわれるくらいで、草書が大変上手であったと坊さんがいった時、字の拙いKは、何だ下らないという顔をしたのを私はまだ覚えています。Kはそんな事よりも、もっと深い意味の日蓮が知りたかったのでしょう」(30)
と、下宿に暮らすようになっても、むしろ信仰の問題が重要で、誕生寺に行ったのも答えを求めての行動だったことがわかります。
次第にKとお嬢さんは親しくなっていきます。
お嬢さんの行動は、先生を半ば無意識のうちに煽っているようにも読めます。
ところがKも先生もまったくお嬢さんのかけひきには気がつかない。
先生はお嬢さんの思惑通りKに対して嫉妬をつのらせますが、Kの側は単純にお嬢さんに傾斜していき、ある日、自分の思いを先生に打ち明けます。
打ち明けられた先生の思いを綴った37は、よく読むと不思議な章です。
出てくる言葉も「逆襲」、「手抜かり」、「打ち勝つ」、「不意打ち」……。
ここには先生のお嬢さんに対する思慕の情はまったく描かれておらず、先生の意識の中で問題は、K対先生になっているのです。
「同時にこれからさき彼を相手にするのが変に気味が悪かったのです」
恋愛の対象であるお嬢さんよりも、先生にとってはKの方がはるかに大きな問題だった。
「Kは昔から精進という言葉が好きでした。私はその言葉の中に、禁欲という意味も籠っているのだろうと解釈していました。しかし後で実際を聞いて見ると、それよりもまだ厳重な意味が含まれているので、私は驚きました。道のためにはすべてを犠牲にすべきものだというのが彼の第一信条なのですから、摂欲や禁欲は無論、たとい欲を離れた恋そのものでも道の妨害になるのです」(41)
こうした思想を持つKにとって、恋愛はことのほか苦しいものだった。
敵であるKの弱点を、先生は正確に突きます。
「すると彼は卒然「覚悟?」と聞きました。そうして私がまだ何とも答えない先に「覚悟、――覚悟ならない事もない」と付け加えました。彼の調子は独言のようでした。また夢の中の言葉のようでした」(42)
ここでKの内に、すでに自殺に対する意志が芽生えていたのが見て取ることができます。
ただ先生にはKの真意をまったく誤解してしまい、出し抜こうとして、奥さんに対してお嬢さんを嫁にほしい、と申し入れます。
そうして一週間ほどたったのち、Kは自殺します。
>Kは何のために自殺をしたか
まずこの点に関して、これはよくわからない。
少なくとも、先生にお嬢さんを取られたからではないことは確かです。
相当早い段階から、Kの中には死への傾斜があったことが見て取れるからです(房総半島の旅行の中にもそれを思わせるシーンがあります)。
むしろ、そうした死への衝動に抗しつつ、自分を生に繋ぎとめてくれるものを信仰の中に見出そうとしていたのではないか。
そうして、同様な境遇にあり、同じような気持ちだ、と言ってくれる先生をこの世で唯一の理解者として、命綱のように思っていた側面もあったのではなかったでしょうか。
Kにとってお嬢さんはどのような存在だったのでしょう。
驚くべきことに、『こころ』の中にはそれにふれた記述が一切ないのです。
先生の遺書の中で、先生の口を借りて、Kの側に恋愛感情があり、それゆえに苦しんでいたことはわかるのだけれど、Kは具体的にお嬢さんのことをどう言ったのか、どう思っていたのか、明らかにはなっていないのです。
これはきわめて重要な点であり、同時にさまざまな解釈が可能な点だと思います。
質問者さんはKにとってお嬢さんはどのような存在だったと思われますか?
>Kが自殺をする直接の原因となったこと
これだけ長い回答を書いておいてこう書くのも心苦しいのですが、やはりこれも断定はできません。
まず何を持って「直接の原因」とするかという問題があるにしても、とにかく「覚悟」という言葉をKが使っている時点を考えなければいけないと思います。
あくまでもひとつの解釈ですが、厳しく「精進」しようとする自分が、信仰にみずからを委ねてしまうこともできず、一方で恋愛感情(肉欲)に引き裂かれる、
「自分は薄志弱行で到底行先の望みがないから、自殺するというだけなのです」
という遺書にあった文言は、まさにKの嘘偽りのない気持ちだったのではないか、と私には思えてなりません。
遺書の末尾
「もっと早く死ぬべきだのになぜ今まで生きていたのだろう」
という部分は、覚悟を決めたのにずるずると日延べをしていたがために、見る必要のないことを見、知る必要のないことを知ってしまった、つまり、先生の行動から、先生が自分の理解者でもなければ、自分と志を同じくする存在でもないことを決定的に知ってしまったことに対する後悔であったように読むこともできるのです。
解釈というのは、決して一通りしかないものではないし、どれが正解ということもありません。
読む人ひとりひとりの解釈があるものだと思います。
ひとつの読み方として、参考になれば、と思います。
No.2
- 回答日時:
♯1の方がおっしゃってる通り、先生に彼女を取られて自殺しました。
簡単にあらすじを書いておきますので参考に・・・。
親戚に裏切られた先生は軍人の遺族の家に泊まることになります。そこにいたお嬢さんが先生とKの好きな人です。
先生がKその家に泊めさせるようにしたことから始まります。
しばらく一緒に住んでいくうちに、Kもお嬢さんを好きになります。そのことを、Kは先生に相談してしまいます。先生は、何とかKを言葉でやりこみます。
そして、先にその家の奥さんに「お嬢さんを私にください」と言ってしまいます。
そのことを知ったKは自殺してしまいます。
遺書には、「自分は薄志弱行で到底行く先の望みがないから自殺する」とかいてありました。
最後に「もっと早く死ぬべきだったのに何故今まで生きていたのだろう」という意味の句も書いてありました。
先生はその事件依頼、すっかり変わってしまったのです。
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