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ムハンマドの行動と、イスラム教の発展については色々読んだのですが、
その中間、コーラン編纂時期の社会状況と編者たちの人物像が分かりません。
集めた「ムハンマドの言葉」の取捨選択経緯などを知りたいのですが、
それは残っているのでしょうか?歴史好きな方、お教えください。

A 回答 (1件)

イスラーム世界の伝承では、コーラン編纂は2回あり、1回目は初代カリフ、アブー=バクルの時代、2回目は第3代カリフ、オスマーン(在位644-656)の時代とされています。

第2回目が本格的なもので、このウスマーン版以外の異本は焼かれ、ウスマーン版が現在のコーランのテキストになったと言われています。当時、ムハンマドの言葉を直接聞いて記憶していた人たち(クッラー)が多く世を去り、各地で伝わるコーラン(といってもまだ一つの「正典」にまとまっていない伝承の段階でしょう)の写本や読み方に違いが目立ったため、カリフのウスマーンが、ザイド・イブン=オスマーンという人物(ムハンマドの元記録係の一人)にコーラン結集をさせたということです。ザイドの協力者とされる3人の名前も伝わっているようです。この定説(伝承)は、中村廣治郎『イスラム教入門』(岩波書店、1998)のpp62.-65に比較的詳しく解説されています。

しかしこれはあくまで伝承であって、歴史学的・客観的に証明されたとまでは言えないようです。『イスラーム研究ハンドブック』(三浦徹・東長靖・黒木英充・編、栄光教育文化研究所、1995)では、編纂時期を9世紀と推定する学者の説にも言及しています。また、同書(『ハンドブック』)のコーラン研究の解説箇所(小田淑子、p18)では、「ウスマーンの治世に編纂されたことはほぼ定説となっているが、その作業(章立て、章題、配列)を誰が行ったかは明確でない」と記して、上述の編集人物の伝承から距離を置いた立場に立っているようです。

また、ウスマーン版以降にも細々とですが、一部に異本は残りました。上にあげた2つの本とも、ウスマーン以降の異本の存在について触れています。

ウスマーンの結集について、あくまで伝承であるという留保をつけず、証明済みの事実であるかのように断言している本もたくさんあり、そういう本の多くはイスラームの教義・伝承をそのまま書いている傾向がありますね。そういう著者は、たいてい、ウスマーン以降は異本は一切存在しないと単純に書いています。我々としては、伝承なのか、歴史的事実として証明されていることなのか、区別して書いて欲しいですよね。これを区別せず、イスラームの教義や伝承の正しさを前提として書いてある著者の本は、その点を承知した上で読むべきです。日本人のイスラーム研究者にも多いんですよ、そういう書き方をする人。

それから「ムハンマドの言葉の取捨選択経緯」ですが、コーランの場合、宗教的な規制から、新約聖書研究のように護教論から離れた文献批判の研究がほとんどまったく進んでおらず、取捨選択経緯(や「作られていく」「変わっていく」経緯)はよくわかっていません。
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この回答へのお礼

とても丁寧な解説、ありがとうございます。
まだまだこれからの研究に期待、ということですね☆
やはり「章立て、章題、配列」「取捨選択経緯」部分は穴だったのですか…。でもそこがコーラン書の核の部分だと思いますのでやはり知りたいですね(--;
その部分の推論(?)など詳しくされている本で、けっこう合ってそう、とか思うものがあったらまた教えていただけると嬉しいです☆fountainofsさんのお薦めのものがありませんでしたらいいのですが(^^
ありがとうございました!

お礼日時:2004/12/22 02:29

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