
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
少し補足した方がよさそうですね。
どういう女性かに言及されていないので「貴婦人」という訳は無理、というのは少し違うと思います。ブルグミュラーは19世紀の作曲家で、現代とは時代背景が違います。下の「ピティナ・ピアノ曲辞典にも「原題 La chevaleresque には、実は貴婦人も令嬢も登場せず」と書いてあるのですが、本当にそう言い切れるでしょうか。
https://enc.piano.or.jp/musics/24000
この曲集全体を見ると、当時パリで上流階級の女性にピアノを教えていたブルグミュラーが、これらの曲をそうした女性向けに書いていたことは間違いないでしょう。「La gracieuse」「L'harmonie des anges」「La petite réunion」「Tendre fleur」「Consolation」「La candeur」「Innocence」などは、明らかに女性向けのタイトルです。そして「La babillarde」というタイトルとの類似で考えると、「La chevaleresque」が女性を指すこともたぶん間違いないと思います。そしてこの時代、乗馬は上流階級の特権です。上流階級の女性にとっても乗馬は嗜みのひとつでした。一般市民に乗馬が広まるのは19世紀後半になってからなので、ブルグミュラーの作曲当時(1851年)で乗馬をする女性と言ったら、それはおのずと上流階級の女性に限定されるのです。
では「騎士風」という言葉との関連はどうなるか。今の我々が「貴婦人の乗馬」というタイトルを読むと、優雅なドレスを着た貴婦人が従者を連れて散策しているようなイメージを持つかもしれません。しかしそういうイメージは、バロック時代の西洋絵画などにはあるかもしれませんが、19世紀はそうではありません。18世紀末から20世紀初頭ごろまで上流階級の女性の間で流行した乗馬服というのは男性的なもので、フランスではギリシャ神話の女性戦士部族になぞらえて「amazone」と呼ばれていました。
https://fr.wikipedia.org/wiki/Amazone_%28v%C3%AA …
https://www.kci.or.jp/archives/digital_archives/ …
こうした事情を考えれば、20世紀初頭にドイツで出た楽譜に「貴婦人の乗馬」を意味する独訳や英訳が付されたこと自体は必ずしも飛躍とはいえないでしょう。むしろ、単に「乗馬」とか「騎士風」と訳す方が、ブルグミュラーが作曲時にイメージしたものから離れてしまう可能性もあります。ただ、「貴婦人の乗馬」というタイトルから当時の風習を想像できる人はもういないので、わかりにくくなってしまったということはあります。「騎士風の婦人」とでもすれば語学的にはより正確かもしれませんが、音楽作品のタイトルは正しいだけではだめですし、あちらを立てればこちらが立たずで正解はありません。
No.1
- 回答日時:
確かにフランス語の用法としては「貴婦人の乗馬」にはなりません。
これに関して、女性定冠詞のLaがついているのでそういう和名が付けられたのではないかと書いている書物もありますが、これは違うと思います。https://books.google.co.jp/books?id=g5ZCEAAAQBAJ …
曲集全体でlaという定冠詞が付いたタイトルが多いことについては、作曲当時ブルグミュラーがパリで富裕層の女性や名家の子供にピアノを教えていたからではないかと書いている人もいます。日本での訳題は複数存在したらしく、「乗馬」「シュバレスク」などのタイトルも含まれます。
ブルグミュラー再考(170ページ)
https://core.ac.uk/download/pdf/235102881.pdf
しかし、1903年ごろにドイツのペータース社から出版された楽譜には、「La chevaleresque」というタイトルの下に、「貴婦人の乗馬」を意味する「Des Edelfräuleins Ritt」というドイツ語と「My lady’s ride」という英語の訳題がすでに付されています。
https://books.google.co.jp/books?id=rDUUAwAAQBAJ …
日本で広く使われているのは全音の楽譜だと思いますが、ペータース版を参照した可能性はあります。もし誤訳、超訳だとしても、日本の訳者によるものではないでしょう。2010年に新しく出たウィーン原典版の楽譜では、ドイツ語の訳題は「Im Trab」、英語の訳題は「Trotting」に変わっていました。
https://www.universaledition.com/en/Burgmueller- …
ブルグミュラーは、日本では使われ続けていますが、海外ではかなり忘れられた存在で、長い間新しい楽譜が出ることもありませんでした。旧来の題名もそのまま慣習的に使われ続けただけでしょう。
詳しいご説明ありがとうございます。
確かに、形容詞chevaleresqueに女性定冠詞laが付いているところから、これは女性を表していると考えられなくもなく、そう解釈するのも間違いではありません。もし「乗馬」をもっと明確にしたいならタイトルはL'Equitationになるからです。だから女性が乗馬しているという解釈は無理はありません。ただそのノリで「貴婦人」などと訳してしまうのは越権行為ですね。どういう女性かなどは言及していない。あえて言えばこのchavaleresqueの定義的な意味である「騎士道精神」というものと対応させてのことでしょうが、「貴婦人」まで行くのは無理があります。
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