No.1
- 回答日時:
インド仏教において妻帯はともかく肉食は禁止されてはいません。
積極的に動物を殺して食べる行為はNGですが、残り物や布施された肉を食べるのは戒律違反ではありません。お釈迦様も布施された肉は食べたといわれています。妻帯については国家が許すとか許さないとかいう問題ではなく本質的にNGのはすですが、日本的な変質と考えるべきかもしれません。(日本の仏教は大乗のさらに大乗ともいわれます。)
> インド仏教において妻帯はともかく肉食は禁止されてはいません。
日蓮、空海、最澄などを開祖とする日本での仏教でも同様でしょうか?それなりの抜け道はあったんでしょうが、肉食を禁ずる思想の根底に何があるのか?知りたかったのです。
>妻帯については国家が許すとか許さないとかいう問題ではなく本質的にNGのはす
太政官布告以前は戒律を破れば、破戒僧として重罪人となったとか。これは明治以前は、戒律と法律が一致していて問題なかったものが、それ以降は国家が戒律の解釈を変えた→日本の仏教が外圧に屈した とならないか疑問に感じた訳です。
質問の立て方が、おかしかったですね。
ご回答ありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
仏教はインドから始まっていますが、日本に伝わる間に
大きく変質しています。
これについて詳しく説明すると、一冊の本が書けてしまう
ほどです。
この件については、『逆説の日本史』の記述がよくまと
まっていると思うのですが、本来はとても厳しい仏教の
戒律が、日本では非常に緩やかになってしまいました。
(No.1の方の「日本の仏教は大乗のさらに大乗」とは、
このことを指すかと思われます)
肉食については、日本に牧畜文化がなかったこともあり、
仏教界にまで根付きませんでしたが、妻帯については
そうではありませんでした。
僧侶の妻帯については、既に中世においてなし崩し状態と
なっています。
宗派でそれを認めたのは浄土真宗だけですが(これも
いい加減な理由ではなく、それなりの背景があります)
明治新政府の太政官布告で、妻帯が他の宗派に広まった
のも、それを受け入れる要素が、日本の仏教界にあった
ことは事実かと思われます。
>日本に牧畜文化がなかったこともあり、
>仏教界にまで根付きませんでしたが
前近代の日本において、一般レベルでそもそも肉食習慣があまり無かった=肉食を断じても、一般人と摂取量の差は現代社会程ではなかったということですね。
ご回答ありがとうございます。
No.3
- 回答日時:
曹洞宗の僧侶です。
何をもって「原典の教義」と言うかはわかりませんが、釈迦在世当時の戒律を伝えるパーリ戒経は肉食を禁じていません。いつ頃から、どういう事情で肉食が禁じられたかについては、細かい議論があるようですが、大まかに言って、中国に伝わり道教の影響を受けてからと考えていいのではないでしょうか。
それでも一切の肉食を禁じているのではなく、「自ら殺したもの」「自らのために殺されたもの」「自らのために殺された疑いのあるもの」の三種の不浄肉でなければ食べられる、とするものもあります。
植物の生命を断つ事は当然殺生戒にあたります。そこで、パーリ戒経では草木を伐採したり土を掘る事は禁じられています。
蛇足ながら、肉食妻帯を太政官布告によって規制緩和された日本のみのケースと思っている方が多いのですが、実際には各国の仏教徒も肉食していたり、妻帯していたりというケースはそれほど珍しくはありません。
インターネットで各国の仏教事情を検索すると、わりと簡単に調べることができます。
>三種の不浄肉でなければ食べられる
この考え方は、現代社会でも通用しそうですね。無駄な殺生はしない、に行き着きますので。
法事などで、和尚様に「仏教では肉食・・・」と聞くのに抵抗がありましたが、私どもの食肉を提供したんであれば、問題ないと解釈します。
私の疑問の出発点は、「他の生命を断つことなくして己の生命維持出来ず」といった前提のもと、なぜ仏教では肉食を禁ずるのか?食物連鎖のヒエラルキーの頂点に位置しながら、動物を食すことを重視するのか?だったんですが少しずつ答えが見えてきた気がします。
ご回答ありがとうございました。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
とりあえず肉食についてだけ、少し書かせてもらいます。
まずインド仏教の原則としては、基本的に与えられたものは何でも食べるが、しかし肉類については特に注意が必要だった、と言えるでしょう。
お釈迦さんの時代、肉は必ずしも禁じられていたわけではありません。#3のご回答にもあるように、ほとんどの部派の律では「三種(不)浄肉」などといって、「わざわざ自分のために殺された動物、あるいはその疑いのある肉」についてはこれを食べないこととする規定があったにすぎません。
しかし、基本的には、殺生はあまり好ましいものとは思われていなかったために、いわゆる「お呼ばれ」のように比丘が施主の招きを受けて食事に応じる場合などは、絶対に肉食は許されませんでした。これは、仏教への信仰心による布施が、好ましくない殺生を助長してしまうことになるのを防ぐためです。
それから、たとえ残り物であっても口にしてはいけない肉がありました。これもまた多くの部派の律(四分律、摩訶僧祇律など)に(あまり大きな扱いではありませんが)記載があって、十種肉禁などと言われますが、「人、象、馬、犬、蛇、獅子、虎、豹、熊、ハイエナ」が食肉禁忌の対象とされています。
したがって実際のところ、原始教団では、「在家者の食事の残りである牛肉、豚肉、鳥肉など」についてはこれを食べていた、というのが実情ではないでしょうか。
このような現実をとりあげて、お釈迦さん在世の時代について、「本当は肉を食べていた」と声高にいう論調があります。それは間違いではありませんが、仔細に見ると、そう喜んで(?)食べていたわけでもないのです。
特に考慮しないといけないのは、教団の立場です。比丘という存在は、律によって生産も蓄財も許されず、基本的に他人の余り物をもらうことによってしか生きられないわけです。従って、教団にとって最も重要なのは社会との軋轢を避けることで(実際、律の多くの規定はそのためのものです)、食べ物についても原則として一般人の食べるものを食べる(しかし、自分のための殺生は拒否する)、というスタイルをとらざるを得なかったことは知っておく必要があります。
再度書きますが、原始仏教教団は、現代の感覚とは異なるにせよ、根本的には殺生を好ましく思わなかったのです。草木を大事にしたことは#3のご回答にあるとおりですし、律蔵には「虫を殺さないように」という理由を付した規範も多くあります。
例えば、比丘は遠出する時など、水を濾すための布(大きさによってパリッサーヴァナとかダンマカラカなどと呼びます)を携行して、水中の水を飲み込んで殺すことがないように気を使っていたのです(これは主として衛生上の観点からしたことであって虫の生命は方便だ、という見方もあるのですが、方便であれ律の中にそのように記載されている事実が、不殺生を是とする建前が教団に存在したことの証明です)。
さて、肉食忌避の広がりについて。
上のような肉食が、やがて全面的に忌避されることになっていくのは、基本的に大乗仏教の唱導の影響を見逃すわけにはいきません。大乗は基本的に原始仏教の教えを観念的に精緻化していきましたから、肉食についてもかつてのサンガの現実的立場から離れて、理念的になっていったわけです。
大乗のいくつかの経典で肉食禁止は説かれますが、最も有名なのは大乗の『涅槃経』でしょう。この経典は、一切衆生に仏性がある、ということを説いた重要かつ広く影響力のあった経典で、その中心思想である「仏性」との関係から、肉食の全面禁止を打ち出したのです。
如来性品という部分から少し引用しますと:
「夫(それ)肉を食するものは、大慈の種を断ず。・・・我(注:お釈迦さんのこと)今日より諸の弟子を制す。復(また)一切の肉を食することを得ざれ」
「一切の現肉は悉く食すべからず。食する者は罪を得ん。我今是の断肉の制を唱う」
涅槃経にはこの他にも、今までは三種の浄肉などと許していたが、今からはこれを許さない、雑肉の施しを受けたら水で洗って肉を取り分けよ、などと説かれています。
何であれ肉食は生命を傷つける行為として肉食を観念的にタブー視する論調が、大乗と共に起こり、副次的にいろいろな歴史的・社会的要件とあいまって、特に中国や日本で大きな力を持ったことは重要なことです。
日本でも、この言説が流布しただけで肉食が忌避された、という単純な歴史ではないのですが、それでも教義の底流として一定の力を持ったとは言えると思います。(長くなりましたので詳説は避けさせてもらいます・・・)
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