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ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番「月光」についてです。

グレン・グールドの録音は、テンポが速すぎるということで賛否両論だと思います。

CDトラックタイムは以下の通りでした。
第1楽章4:10 第2楽章1:39 第3楽章5:06

それ以前の時代の演奏はどうだったのかとヒストリカル音源を聞いていたところ、ベートーヴェン演奏の第一人者とされたフレデリック・ラモンドによる1922年の演奏は、グールドのそれより第1・3楽章において短いタイムでした。

第1楽章3:58 第2楽章1:57 第3楽章5:01

グールドのタイムで批判があるなら、ラモンドの演奏が批判されなかったのは矛盾しているのではと思いましたが、ラモンドのタイムはSP盤の収録時間のためやむなく速く弾いたとの説がありました。

しかしながら、この録音のSP盤への割り付けについて調べても情報がなく、その説について検討できません。第1楽章の3:58はもしかしたら片面に入ったかもしれませんが、第3楽章の5:01は片面には収まらないと思います。であれば、第3楽章は無理に速く弾く理由はないと思います。

どなたかこの録音がSP盤にどう割り付けられていたのかご存じの方がいらっしゃれば、また上記の説に対する考察があれば、伺えますと幸いです。よろしくお願いいたします。

A 回答 (9件)

レコードの話で盛り上がってしまっているので書きにくいですが、ラモンドの演奏テンポはレコードの収録時間の制限とは全く無関係です。

本来ラモンドやグールドのテンポの方が正しく、多くのピアニストは遅く弾きすぎです。速すぎるとか収録時間の都合ではないかとかのネット上の情報はかなり安易です。

まず第1楽章の速度標語はアダージョですが、ベートーヴェンの拍子の表記は4分の4拍子(C)ではなく2分の2拍子(アラ・ブレーヴェ;Cを縦線で分割した記号)です。つまり1拍の単位は2分音符なので、4分の4拍子のアダージョの2倍の速さと読むべきなのです。ただ、今は原典版の楽譜を使うのが当たり前ですが、昔はピアニストたちが演奏上のアドバイスを書き込んだ実用版の楽譜がたくさん作られており、その多くで第1楽章の拍子が4分の4拍子に書き換えられてしまっていました。これも誤解の元ですが、もう一つ原因があります。それは「月光」というニックネーム。これはベートーヴェン自身によるものではなく、詩人のレルシュタープという人が付けたものです。この「月光」というロマンティックなニックネームのイメージに引きずられたのも演奏テンポの誤認の原因のひとつです。ピアニストのアンドラーシュ・シフは、ウィーン楽友協会のライブラリーでベートーヴェンのスケッチを見せられたとき、ベートーヴェンがモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』のある個所を書き写しているのを見つけたと話しています。『ドン・ジョヴァンニ』のその個所では、オーケストラの伴奏がベートーヴェンの第1楽章と非常によく似ています。拍子も同じアラ・ブレーヴェで書かれています。それは「月光」などというロマンティックな場面ではなく不穏な場面。ベートーヴェンはこれを意識していたのではないかと言います。

これまで多くのピアニストが遅く弾いてきた結果、多くの人がそれに慣れてしまい、遅いのが当たり前だと思い込むようになっただけです。グールドのテンポが速すぎるという批判は録音当時からありますが、そういう批判も同様のレベルでした。グールドはそれに対して、確かに速いけど、シュナーベルだって速く弾いてるよ、と言いました。アルトゥール・シュナーベルはベートーヴェンの第一人者として知られ、世界で初めてソナタの全曲録音をしたピアニストです。グールドは子供のころからシュナーベルの演奏を聴いて育ち、アイドルのような存在でした。シュナーベルもラモンドも、それぞれベートーヴェンのソナタの楽譜の独自の版を出していますが、第3楽章のテンポはどちらも2分音符=88となっています。このソナタの作曲当時はまだメトロノームがなく、ベートーヴェン自身によるメトロノーム表記はありませんが、速度標語はプレスト・アジタートなので、アレグロよりはかなり早くなければいけません。昔出ていた実用版の楽譜の多くは88のテンポを採用しており、中にはもっと早い92とか92~96としている楽譜もあります。これは妥当な数値です。これを考えれば、グールドのテンポが極端に異常だとはいえません。

第3楽章の提示部は繰り返しになっていますが、昔はこれを省略する演奏が多く、グールドもラモンドも繰り返していません。2分音符=88で演奏した場合、提示部の演奏時間は約1分半です。下の方の回答にあるリシッツァの演奏は6:48と表示されていますが、繰り返しをしています。提示部はやはり1分半で弾ききっているので、その分を差し引くと5:18、グールドやラモンドとそれほど大きな差があるわけではありません。シュナーベルの録音もSPですが、繰り返しをしているので全体は6:32ほどで、2面に分割されています。提示部はやはり1分半、これを差し引いて計算するとグールドやラモンドと同じ演奏時間です。ルビンシュタインの1962年の録音も同じくらい速いです(第1楽章は6分以上かかっていて、遅すぎの印象はぬぐえません)。

シュナーベルの録音では、第1楽章の演奏時間は5分ほどです。グールドやラモンドよりは遅いですが、多くの著名ピアニストが6分から7分かけて弾いているのと比べると、かなり速いことがわかります。アンドラーシュ・シフは4:20ほどで弾ききっているのでかなり早いです。グールド、ラモンド、シュナーベルはみな作曲家でもあり、周囲の演奏習慣に流されるのではなく、楽譜をテキストとしてちゃんと読んでいます。本来はこれが正しい解釈で、アップデートされなければいけません。

シュナーベル(1933)


アンドラーシュ・シフのレクチャー(3:40あたりから第1楽章のテンポについて説明)
https://www.youtube.com/watch?v=H6u9Ocp039Y
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この回答へのお礼

詳細な解説ありがとうございます。大変勉強になりました。たしかに、リピート有無がありますのでタイムだけでは比べられませんね。交響曲では近年速いテンポの録音が多いですが、それらと同じような話ですね。1楽章は早い演奏も見受けれられますが、3楽章はグールド並みのテンポはほかでは見られませんね。ラモンドがその時代に原典に忠実な演奏を採用していたのも当時としては奇異だったのではないでしょうか。一方近年のピリオド演奏の録音がそこまでハイテンポではなかったりするのも不思議です。

お礼日時:2024/10/20 21:42

戸愚呂妹様はいつも興味深いご質問をされます。



今回もG-20様のようなご造詣の深い方の解説で、私も知識を増やすことができました。これというのも、戸愚呂妹様の質問がきっかけです。ありがとうございました。

G-20様も遠慮がちに書かれていますが、とんでもない。どうもありがとうございました。
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この回答へのお礼

はい、大変深い見識の回答をいただくことができありがたく思っております。みなさんありがとうございます。

お礼日時:2024/10/20 21:45

ところで、「無理に速く弾く必要もないが高速演奏になった」に関する考察ですが、



1922年というと、まだ機械録音(マイクで増幅はするがラッカー盤へのカッティングは直に行う)の時代ですよね。

当時、録音するのは、演奏家にとってはすごいストレスだっただろうなあと思います。

失敗の許されない機械録音だからこその、緊張感というか集中力というか、それゆえの高速演奏だったのかもしれませんね。

1発勝負ゆえ、機械録音時代のものは名演奏が多いとか言っている人も多いですね(亡父がそうでした)。
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この回答へのお礼

1発勝負ゆえというのはあったことなのだろうなと思います。電気録音になっても1発勝負ではあったようですが……

お礼日時:2024/10/20 21:32

No.5様へ



No.1です。
そうなんですね。第3楽章なしみたいですね。
さらに、第1楽章がPART1とPART2に分かれているということですね?

Discogsを見て私も理解できました。てっきり1枚に収まっていると思いました。


ところで、Discogsは時々利用するのですが、なんで海外ってあんなに送料が高いのでしょう。日本が異常に安いのでしょうか。
Amazonで350円。Towerなんて200円ですもんね。

e-Bayは売主と交渉できるので、よくプラケース無しで送ってもらいます。するとクリスマスカードと同じ送料になります。昔のCD-Baby方式ですね。

あと、
・昔のCD-Babyって、日本人が丁寧に梱包しています的なことが書いてありましたね。
・今のAmazonでは、昔のCD-Babyがレーベル扱いになっていますね。多くのCDが幻盤になっています。買っておいて良かったというものが多数あります。
・近頃、そういうサイトが全てサブスク化する傾向にあり、コレクターとしては寂しい限りです。
・ご質問者の戸愚呂妹様は1万枚超のコレクターだそうですね。別質問で知りました。

取り留めのない話ですみません。
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この回答へのお礼

3楽章は別なディスクだったのでしょうね。当初は同販売されていたのか気になります。

お礼日時:2024/10/20 21:30

No.4です。



No.1さんのe-Bayのリンクですが
ラベルが大きく写っている写真
最初のリンクは (Moonlight)のした
2番目のリンクは Sonata in C sharp minor のしたに
その面になにが入っているかの記載があります。
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この回答へのお礼

解説ありがとうございます。

お礼日時:2024/10/20 21:29

Discogs には2種類出ています。


1枚は録音年度が不明で1923年発売
もう1枚は1926年6月20日録音で1927年発売。
いずれも Presto Agitato が分割されています。

1923年発売
https://www.discogs.com/release/28043193-Frederi …

1927年発売
>The first disc contains the two first movements
>of the Sonata (Adagio sostenuto and Allegretto),
>as well as the first part of the third movement
> (Presto agitato)
>The second disc contains the second and last part
>of the third movement (Presto agitato)
https://www.discogs.com/release/7292227-Frederic …

Singles & EPs
https://www.discogs.com/artist/2028255-Frederic- …

Frederic Lamond: Discography
https://web.archive.org/web/20131018010813/http: …
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この回答へのお礼

情報解析ありがとうございます。少なくとも1楽章が片面に収まっているようですね。

お礼日時:2024/10/20 21:28

もうひとつ。

考察ではないですが、

SPの片面収録時間は、10インチ盤(歌謡曲など)は約4分ですが、12インチ盤は5分入ったと思います。

だから、5:01という演奏時間は、12インチ盤の片面に収まりますね。たぶん。

収録時間はウィキでも確認しました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/SP%E3%83%AC%E3%82% …
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この回答へのお礼

片面5分入るのだとすれば、第1楽章はそんなに早く弾かなくてもよかったとなってしまいます。2楽章が短いから、それと合わせたのでしょうか。謎は深まります。

お礼日時:2024/10/20 21:27

グールドの速さは、私も違和感を感じます。

LP時代だから収録時間は関係ないですよね。全体でも、普通は15分くらいだから余裕でLPの片面に入りますよね。

トスカニーニの運命が28分だったのは、ラジオの30分番組のCMを除いた時間が28分だから、と亡父から聞いた記憶があります。真偽は不明です。

グールドはもう一曲添えて30分番組に入れようとした?
それは勝手な想像で、グールドが速いのは止むなく速いというのでは無さそうです。

リシッツァさん↓くらいが良いかも。




ところで、今、SPって高値で売られているのですね?
父親の残した大量のSPを、置き場に困って処分したのは惜しかったです。
ガリ・クルチなんかをよく聴かせてくれました。
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この回答へのお礼

トスカニーニの運命はたくさんありますが、いくつかは高速ですね。なるほど、そのような理由があったのだとすると感慨深いですね。

お礼日時:2024/10/20 21:25

ラモンドの月光の78回転SPがe-Bayに2種類出品されていました↓。



いずれも1枚に収まっているようですが、ただ、レーベル面を見てもどんな割り付けになっているのか、私には分かりません。

ご判断付きますか?

https://www.ebay.com/itm/364916840247?_skw=frede …

https://www.ebay.com/itm/235586982215?_skw=frede …
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この回答へのお礼

e-Bayの情報ありがとうございます。実物の写真は最も信憑性がありますね。判別は他の方がしてくださっていました。

お礼日時:2024/10/20 21:22

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