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私は、現在刑法総論を勉強中の法学部生です。
今回質問させてもらうのは、刑法総論の特に違法性阻却のあたりに関する問題です。今この分野を勉強しているのですが、具体的に事例に当てはめるとどのようになるのかがいまいちよくわからないので質問をさせてもらいます。


無人の車が坂道を蛇行しながら高スピードでXに向かってきた。
慌てたXは、よけることができず、そばにあった暴力団組長B別荘のドアからその庭に飛び込んだところ、偶然ドア付近にいたBが跳ね飛ばされ頭を強く打って全治一ヶ月のけがを負った。
それを見た組員Cが襲撃と勘違いし、日本刀でXに切りかかってきたため、Xは持ち合わせていたステッキで反撃し、Cを殴り肋骨を骨折させCの攻撃を止めた。
その後、Bは病院に運ばれ治療を受け相当回復していたが、医者から禁止されていた酒を飲むために病院を抜け出し相当量飲酒したため、容態が急変し死亡した。
この場合のXの罪責について述べよ。


以上の事例に対して、とりあえず自分なりに考えてみたのですが、このような場合、XのBへの緊急避難やCへの正当防衛について論じればよいのでしょうか?その上で、これらは成立すると考えてよいのでしょうか?
また、この他に記述するべき論点はあるのでしょうか?


実は、まだ刑法の試験向けの答案を書いたことがないので、どのように書いていけばいいのかといった点もアドバイスをいただけると助かります。

A 回答 (1件)

1 刑法の答案作成に当たって検討する順番


(1)構成要件,(2)違法性,(3)責任,(4)処罰阻却事由
○上記について,行為者ごと,被害者ごと,成立する犯罪ごと,に検討。(※検討の順番を絶対に間違わないこと。順番を間違えたら,それだけで「不可」となるでしょう。)
○上記の順番で検討して,いずれかが欠いた段階で,犯罪は不成立としてよい。
○基本的には,上記すべてを検討するべきだが,争いのある事項までの検討でも足りる。(本件の場合,責任阻却事由や処罰阻却事由の有無は問題にならず,違法性の検討後,犯罪成立の有無の結論を述べてもよい。)


2 本件の検討(例)

●Bに対する罪責
◎住居侵入について
(1)刑法(以下同じ。)130条前半の構成要件満たす。
(2)緊急避難(37条)成立するか?

◎傷害致死罪について
(1)205条の構成要件満たすか?
 行為後に被害者の行為が介在しており,因果関係が認められるか?
→最高裁平成16年2月17日決定を参考にして,因果関係ありとする。
(2)緊急避難成立するか?(住居侵入に同じ。)

◎過失致死について(Bに対する罪責は,傷害致死罪なのか過失致死罪なのか微妙)
(1)210条の構成要件満たす。
(2)過失による緊急避難の可否
ア 過失の体系論上の地位→新過失論:過失行為(結果回避義務違反)あり
イ 避難意思の内容→侵害を意識し,避けようとする単純な意思で足りる。
ウ 結果回避義務の存在の有無と補充性の原則との関係→前者は構成要件,後者は違法性の問題(別問題)
ア~ウ →緊急避難成立

●Cに対する罪責
・傷害罪について
(1)204条の構成要件満たす。
(2)違法性阻却事由は,正当防衛(36条)か,緊急避難か?
→Cの行為の適法性→誤想防衛の法的性格→事実の錯誤による責任故意の阻却(通説)→Cの行為は違法→正当防衛検討→正当防衛成立

※刑法の答案作成上では,1で述べたこと以外にも,踏まえるべき重要な原則がいくつかありますが,ここでは割愛します。
※犯罪成立の有無についての上記の結論は,単なる一例です。示された事情を分析して,ご自分で判断してください。
(ちなみに,司法試験では,上記の論点について長々述べることより,具体的判断についての説得的な論述が求められます。)
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