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今年の夏に剣岳に登ってみようと思いますが、映画の上映もあり一般道はかなりの混雑が予想されます(蟹のタテバイあたりでかなり待たされるとか)。  
そこで剣沢にテントをはって、翌朝から源次郎尾根から頂上を目指そうと思っているのですが、I峰からII峰へと登っていくと、II峰の最後はザイルを使用しての懸垂下降が必要であると、どこかの大学の山岳部のHPに載っていました。
やはり源次郎尾根からの登頂は最後はザイルが必要なのでしょうか? どこかに抜け道はないのでしょうか?(無ければ久しぶりに懸垂下降の練習をしなければならないので)

剣岳ははじめてですが、穂高から槍は何回か往復しており、大キレットや北穂からカラ沢、奥穂、前穂までの縦走も何度か経験しています。

A 回答 (1件)

 登山歴30年で学生時代(もう20年ほど前ですが)には山岳部に所属し、毎年夏山合宿は剱岳で行っていました。


 剱岳での夏山合宿は、真砂沢にベースキャンプを張って入山翌日は長治郎雪渓上部で雪上訓練、その翌日に足慣らしで源治郎尾根から剱岳に登り、4日目から本格的にあちこちの岩場に行く、というのが毎年のパターンでした。

 というわけで源治郎尾根は残雪期も含めてかなりの回数、登っています。といっても最後に登ったのが20年近く前ですから、多少状況に変化もあるとは思いますが。

 ご質問のとおり、II峰からの下りは垂壁になっているので懸垂下降が必要です。それも壁の高さは35mあるので、40mあるいは50mロープ1本では足りません。2本をダブルにして使用しないと下降することはできません。

 ちなみにIとII峰の間のコルからII峰コルまで平蔵谷側を巻くルートは存在します。ただしこれはII峰フェースにいくつかあるクライミングルートへの取り付くための踏み跡なので、道標などがないのはもちろんですがフェース基部(つまり取り付き)に辿り着く踏み跡がいくつも分岐しています。また、全体的に傾斜が強く、巻き道のすぐ下にはS字雪渓(平蔵谷から分岐する急傾斜の雪渓)上部の脆い岩壁が立っているので、巻き道全体を通して、落ちればまず絶対に助かりません。
 実際に身の危険を感じるほどの場所があるかどうかは、なんせクライマーが付けた踏み跡程度の道なので頻繁に状況が変わるでしょうからなんとも言えませんが、少なくともそれを自分で判断して必要な安全確保ができる人でないと非常に危険なルートでしょう。

 なお、この巻き道は源治郎のII峰フェースを登攀するクライマーか、あるいは悪天候時のエスケープルートにしか利用されない道なので、現在も明瞭な踏み跡が残っているかは判りません。II峰フェースはマイナーなのであまり登攀する人もいませんし、剱岳がクライマーで賑わっていた20年前でも岩壁を独占できたくらいです(八ツ峰の六峰フェースなんかは順番待ちでしたが・・)。
 踏み跡が明瞭であろうとなかろうと、岩壁と急傾斜の草付きの隙間の「ここしか通れない」バンドを巻いているので、力量がある人は問題なく通過できるでしょうけど・・・

 ちなみに源治郎尾根は、I峰手前の稜線に出る前にいくつかルートが存在し、登山者の力量によってはロープの確保が必要になる場所がおそらくどのルートにも存在します。合宿では経験が浅い下級生を連れて登るので、いつでもI峰に着くまでに2回はロープを出していた記憶があります。

 源治郎尾根は、剱岳のバリエーションルートとしては技術的に最も易しいルートではありますが、それでも"バリエーションルート"です。I~II峰間の稜線などは一般縦走路かと思うくらいに明瞭な道ができていたりもしますが、それでもバリエーションルートなのです。
 大キレットや奥穂、前穂程度の一般縦走路の経験しかない人の手に負えるルートではありません。

 懸垂下降さえできれば源治郎尾根に登れる、というものではありません。
 例えば、II峰コルを超えてから天候が悪化した、体調が悪くなった、予想以上に時間がかかってしまった、等の理由で退却が必要になった場合の「退路」はきちんと把握できていますか?一般ルートとは違い、「来た道を引き返す」ことはできない場合があるのがバリエーションルートです。懸垂下降してきた35mの垂壁は登れるはずもないし、I~II峰コルへの巻き道は上に述べたようにけっこうヤバいです。

 この場合の正解はII峰コルから平蔵谷に下る"道"があるのですが、これもバリエーションルートの例によってクライマーが退路や登路に使った「どこに連れて行かれるか判らない」道です。
 つまり平蔵谷のどこに降りるかは雪の状態によって違うので、下部になると踏み跡が縦横無尽に付けられていて、それらから自分の降りたい地点に辿り着く踏み跡を"選択"しなければならないわけです。年によっても違いますし、同じ年でも合宿の前半と後半ではルートが違いましたから。
 今年のような雪が少ない年にS字雪渓上部に降りてしまったら、多分生きて帰ることはできないでしょう・・・
 仮に平蔵谷雪渓に無事に辿り着いても、このあたりはまだかなり傾斜が急です。まあ平蔵や長治郎の最上部ほど急傾斜ではないですが、それでも白馬の雪渓などとは比べものにならない傾斜です。
 その雪渓を無事に降りて帰ることができますでしょうか?

 ま、剱岳は一般ルートでも同じような危険を孕んだ山なのですが(だから一般ルートとしては非常に事故が多い)、バリエーションルートはさらに難しいというわけです。
 とりあえず、一般ルートとバリエーションルートの最も基本的かつ大きな違いは、「どんなにしっかりした道があっても、バリエーションルートでは"どこに連れて行かれる道"か判らない」という点です。
 質問者さんが通過する前日に、たまたま3人のパーティーがII峰フェースを登攀に来ていたら、II峰のコルに向かう道はほとんど消えているのに、フェース取り付きに向かう道は明瞭についていたりするものなのです。それを辿ってしまうと飛んでもないところに連れて行かれます。

 今年は映画の影響で剱岳への入山者数は増えることが予想され、従って事故が増えることも懸念されています。
 でも、一般ルートが混むだろうからと安易にバリエーションルートに入る人が増えると、本当に事故が激増するでしょうね・・・

 というわけで、カニの縦バイで順番待ちすることをお薦めします。

この回答への補足

ご丁寧な説明、それも詳細でありながらたいへんわかりやすい文章をかいていただきありがとうございました(見事な文章だと思います。)

これだけの回答文を書かれるのに要した時間を考えてみますと、本当に頭のさがる思いで一杯です。Jagar39さんの山を愛する気持ちが文章からもとても強く感じられます。

安易な質問をしたと後悔しています。文章の内容からも私の技術では無理だと痛感させられました。 今年は一般ルートから登ってみます。
それでも剣岳へいくのはやはり楽しみです。
岳人の人達で剣岳が大好きだとおっしゃる方は本当に多いです。
それだけ魅力的な山なのだと思います。

個人的に申し上げると、登山を始めたのは大学を卒業してからです。
大学時代に中の良かった友人が山岳部に所属しており、一年を通じて
北アルプスや北岳や八ヶ岳や谷川岳に登っていました。卒業時には本気で富山県警か長野県警にでも就職しようかなと言っていたくらいです。山を薦められたのも彼の影響ですが、その彼も海外登山で帰らぬ人となりました。曲名は忘れましたが「山が命と笑ったあいつ・・・」の歌に出てくるような人間でした。今でもこの曲を聴くたびに涙がでます。

補足日時:2009/07/12 11:47
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この回答へのお礼

在学中も何度も山を甘く見るなと言っていたし、彼が遭難してから余計に彼の言葉が身につまされるのか、今でも夏山(主に北アルプス)にいくために、早朝や夜中に一日10キロ以上のランニングと筋力トレーニングを行っています。
 
また冬山に誘われる時は、自宅でできるだけ暖房を使わずに、薄着でシュラフの中で寝るなどの耐寒訓練らしきこともするようにしています。

自分の安易な行動で他人に迷惑をかけてしまいますから、そういうことだけはしたくないので、せめて体力だけでもと練習しています。
(質問の書き方ではホント、安易に考えていますよね。すいません。)
天気図の書き方も覚えましたし、低気圧や寒気の流れ込みに関しては、人一倍敏感になっています。

ひとつ後悔があるのは、時間的な余裕のある大学時代に本格的なロッククライミングとかの練習をしておけばよかったのですが。 社会人になるといろんな制約があって、時間的にもなかなか難しいですね。

北アルプスは、行けば行くほどその魅力のとりこになりますね。
Jagar39さんはきっと八ツ峰やチンネ左稜線(中央チムニーや左下カンテなど)もいかれているのでしょうね。
今年は一般ルートをのぼった後、来年以降はベテランの人と一緒に源次郎尾根や八ツ峰に挑戦するか・・・本当に迷いそうです。でもそのためには練習を積まなければいけません。  頑張ってみようかなと思います。
ご回答に対して良ポイントのつけ方がわかりませんので、文章にて感謝の意にかえさせていただきます。

お礼日時:2009/07/12 11:50

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