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社員Aは事務職の中途募集に応じて紹介会社を通じて入社した(紹介会社よりの書面に事務職希望と明記してある。契約書はない。)が、Aをやめさせるため、事務職より生鮮品の加工へ配置転換した。過去、同様の異動はない。Aは予想通りやめたが、会社都合であると主張している。自己都合退職にすることができるでしょうか。

A 回答 (2件)

>Aをやめさせるため、事務職より生鮮品の加工へ配置転換した。



 当該事象を【使用者(会社側)の権限濫用】証明できれば、当然当配転は妥当性に欠き会社は現状回復(事務職への復帰)への責任が有ります。

>Aは予想通りやめたが、会社都合であると主張している。
>自己都合退職にすることができるでしょうか。

 既に「退職願い」を提出し会社に受理されていれば会社都合退職にするのは出来ません。まず、配転が無効であり当該配転により精神的苦痛を相応受けたため万止むを得ず「退職願い」を提出に追い込まれたので、当該「退職願い」は無効であるとの手順により、現状回復(事務職への復帰)が妥当性があると思います。

 人事異動に関する一般的判例には次のようなものが有ります。
 
 「一般に労働契約は、労働者がその労働力の使用を包括的に使用者に委ねることを内容とするものであり、個々の具体的労働を直接約定するものではないから、使用者は労働者が給付すべき労働の種類、態様、場所等について、これを決定する権限を有するものであり、従って使用者が業務上の必要から労働者に配置転換なり、転勤を命ずることは原則として許される」(昭和42年7月12日熊本地裁八代支部判決、三楽オーシャン事件)

 人事異動に関して就業規則上の明示がなくとも、黙示的、包括的に使用者にこのような権限が付与されていると考えられるが、就業規則に「業務上の都合で転勤、配置転換を命ずることがある」と謳われていればより明確です(昭和50年5月7日東京地裁判決、日本コロンビア事件)。

 したがって、“私はこういう事情で転勤できません” “この仕事に従事します”という限定的な特約のない限り労働者は使用者の転勤や配転等の人事異動命令に従わなければなりません。尚、前述のように限定的な特約をした場合にはその特約に拘束され一方的命令によって異動はさせられません(昭和43年4月23日東京高裁判決、日野自動車事件)。しかしながら限定特約があっても「雇用契約締結時当初に成立した職種の合意も」諸般の事情で「既に効力を失う」判決もあります(平成4年2月27日東京高裁判決、エア・インディア事件)。

 次に【使用者(会社側)の権限乱用】について考察してみましょう。

 最高裁は「当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の乱用になるものではないというべきである。右の業務上の必要性についても、当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである。」(昭和61年7月14日最高裁第二小法廷判決、東西ペイント事件)と判事し、この考え方が裁判上の基本となってます。

 当該判例より「Aさんを辞めさせるための配転」の証明が必要になります。

 さきに述べたとおり「配転・転勤」は会社に包括的に委ねられた権限の行使ですが、それだからといって無制限に会社の配転・転勤命令が許されるわけでは有りません。その命令が合理性がなく権利の乱用にあたるときは無効となります。次の7つが代表的な権利の乱用例とされています。

(1)業務上の必要性のないもの
 業務上の必要性によらない配転等は労働契約上の法的根拠を欠くので無効となります。たとえば社員の単なる私生活上の問題や会社と社員との労働関係外の問題などを理由とする転勤命令がこれにあたります。判例でも、例えば配転命令の業務上の必要が不明確で、経営に批判的な立場にある労働者を遠ざけ、配転拒否による退職を期待するなど不当な動機・目的を有する場合については権利濫用とされてます(平成7年3月31日東京地裁 マリンクロットメディカル事件)。Aさんのケースはこのケースを参考に使用者の権利濫用を『証明』できればよいでしょう。

(2)労働条件が著しく低下するもの
 労働者の日常生活に影響を及ぼす賃金の相当な減収となるものなどは配転命令権の乱用とされてます(昭和34年3月1日和歌山地裁 和歌山パイル織物事件)。

(3)職種・勤務場所について合理的な予想範囲を著しくこえるもの
 当該労働契約締結の際の事情、従来の慣行、当該配転における新旧職務間の差等を総合的に判断して、合理的であると考えられる範囲をこえる著しい職務内容の変更等は一方的命令によってはないえないとしてます(昭和48年12月18日大阪地裁 名村造船事件)。

(4)不当労働行為に該当するもの
 労働組合の組合員や組合活動家、役員であることを理由とする不利益扱い、組合活動に打撃を与え弱体化を意図するなど組合の運営への支配・介入に該当するものは無効です(労組法第7条1号・3号)。

(5)思想・信条その他差別待遇にあたるもの
 使用者が、労働者の国籍、信条または社会的身分を理由とする差別扱いをすることは禁止されているので、これに該当する配転等も違法です(労基法第3条)

(6)技術・技能等の著しい低下となるもの
 特に技術系統の社員については、技術、技能等は人格財産を形成するので、その能力の維持ないし発展を著しく阻害するような職種の変更等は配転権の乱用になります(昭和47年10月23日名古屋地裁 三井東圧化学事件)。しかし、セールスエンジニア等については本人の技術、技能にむしろプラスであるということなどで正当な配転と認められる判決もあり(昭和46年7月27日前橋地裁 新潟鉄工所事件)ケース・バイ・ケースで判断されてます。

(7)私生活に著しい不利益を生ずるもの
 私生活については本来使用者の関与できないものであるから、私生活上の不便ないし不利益を理由とするものは原則として正当理由となりませんが、それが一般労働者が通常予想されるような損害、苦痛をこえて、きわめて著しい場合には労働者の正当な拒否理由となります。これは、重病人をかかえていたりする労働者家族の生命、身体の危険に係わる場合(昭和43年8月31日東京地裁 日本電気事件)。他の理由によるものはほとんど認められていません。

 【退職願い】の取り消しに関しては小生が次のところで回答してますので参考にしてください。

http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=582746
 

参考URL:http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=582746
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この回答へのお礼

有難うございます。Aの異動は性格の合わない上司のかえてほしいという強い希望によるもの。退職届はAが会社都合と書き込んだため、破棄した。異動に際し、応じない場合は懲戒免職にするむね通告し、Aは勤務時間が9時から18時までなら応ずるむね、返答があったが、3時より24時までのシフト制にするよう命じ、要望を拒絶した。またAはアレルギー等体質の問題で生鮮品を扱えないと主張している。

お礼日時:2003/07/23 09:56

基本的には、本人からの希望退職という形ですから、自己都合になります。


ただし、本人が職安で、退職に追い込むための配置転換であったと主張した場合、職安で、実態を調査した上で判断することになると思います。

なお、このような合理的に理由のない配置転換は、労基法では問題があります。

この回答への補足

離職理由の異議は実際あまり認められることがないようです。

補足日時:2003/07/23 09:43
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