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このカテゴリーで良いかわからないのですが・・・

昔、「製版所」と名前のついた会社は、
通常は何を事業内容としていたのでしょうか?

印刷する前に編集・デザインだけか、印刷の活版(金属)
を作っていたのか、それとも印刷自体もしていたのでしょうか。

現在「製版所」と名前のつく企業さんは、ネットでみると
上記どれもするところとしないところがあるみたい
なのですが。

一般的に、昔(パソコンの普及前)はどうだったのか
ご存知の方がいらっしゃったら、教えて下さい。

よろしくお願いします。

A 回答 (1件)

もう「昔」なんですね~。

ほんの10数年前だったのが・・・。
印刷会社のデザイナーとして勤務していた時代がありますので
分かる範囲で説明します。

現在のデジタル入稿の事はご存知として話を進めていきますね。

昔はデザイン・レイアウトも、全て紙に書いていました。
もちろん「切ったり貼ったり」もしましたけど、それも含めて「手作業」でした。
そのデザインが完成した時点で「版下」の制作に移ります。
台紙に罫を引いて写植(知ってるかな?)を貼って、
完成デザインとまったく同じものを2度作っていたんです。ノンキな時代でした。
例えデザインがカラーであっても、その版下は白黒2値で作りますから、
それに何らかの方法(人によって様々です)で色指定をして
そこに使用する写真やイラスト、図版などを添付して「製版」に入稿します。

ここからが「製版部門(或いは製版所)」の仕事です。

写真原稿(カラーフィルムやプリントなど)は色分解作業に入ります。
「分解、網かけ」にカラースキャナが導入されて30年近くなりますが
それ以前は(これは、当時聞いた話ですが)原稿となるカラーフィルムに
RGBの色フィルターをかけて色分解をして
CMY(RGBの補色です)+Kの4色に分解された
「セパレーションネガ」と呼ばれる連続階調のネガフィルムを作っていました。
この「セパネガ」の段階で、フィルムの濃度を部分的に薬品で増減させて色調整をして
最後に「コンタクトスクリーン」を通して撮影することで
「網点」状になった白黒2値のCMYKの分色フィルムを作ります。

※余談です。
「線数」を語る時に今でも133線、150線、175線が登場するのは当時の名残りです。
コンタクトスクリーンには133線用、150線用などといった規定のものしかありませんでしたので
その数値が今でも慣用として使われているのです。
もちろん現在は網点生成にコンタクトスクリーンを使用しませんので
125線だとか157.3線などという適当な線数でも出力できますが、
上記のような理由で当時はそれが不可能でした。
※余談終わり。

同時に、「版下」は製版用の大型カメラ(時代によってはスキャナ)で
白黒2値のネガフィルムに撮影されます。
この1枚のフィルムを元に、マスクなどのテクニックを駆使して
CMYKに色分けされた製版フィルムが作られます。
その際に、カラー写真などは前述の「網点状の分色フィルム」を
暗室作業で1枚のフィルムに多重露光して合成します。
(この一連の作業は文章での説明が困難ですので省略します)

とまあ、デザイン内容によって仕事の度に作業手順を試行錯誤するような
(これが製版者のセンスです。なので当時は製版者を指名することもありました)
なんとも苦しくも楽しい仕事の末に、CMYK4色の製版フィルムが完成します(拍手!)。
ここからが「色校正」です。

完成した製版フィルムをアルミの印刷版に焼き付けて、
その版に印刷インクを、ヘラとゴムローラーで手作業で塗り付けて
言ってみれば「版画」の要領でCMYK4色を次々に紙に転写して
色校正紙が完成します。

色校正がOK(校了と言います)になったら、本番用の「印刷版」を作ります。
印刷は四六判のような大きな紙に「面付け」をして刷りますが
製版フィルムは1組しかありませんので、
チラシなどの場合は同じフィルムを何度もズラして焼き付け、
ページ物の場合は製本行程にあわせてページを組み合わせて焼き付けるなどの
混み入った作業を、CMYK4色分、寸分の狂いもなく行わなければいけません。
今思うと、当時の人達はこの細かな作業をボールペンのアタリ付けだけでやっていましたから
スゴい人達だったと思います。

以上、ここまでが私のいた印刷会社での「製版部門」の仕事でした。
「製版所」も同様の事業内容だと思います。
実際はここで書いたような簡単なものではありません。けっこう端折りました。
私も入社当時の研修で、それぞれの部門を3ヶ月単位で回らされましたが
中でも製版は面白かったです。印刷会社内では「エリート部門」でした。
でも、今はその作業のほとんど全てがPC作業に変わってしまい
その知識も技術も過去の遺物になってしまいました。ちょっと寂しいですね。

※分からない内容や用語があれば補足します。
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この回答へのお礼

御丁寧な回答ありがとうございました。

すごい専門用語で圧倒されてしまいました。
でも、昔の人はすごかったなぁー、というのが
よく分かりました。

小さな印刷屋さんだと、上記の作業を全部やった上に
印刷も自分でしてたなんて、すごいですね。いや、感嘆に
値しますね~。

どうもありがとうございました。

お礼日時:2003/08/21 17:50

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