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夏目漱石、芥川龍之介、中島敦、谷崎潤一郎、三島由紀夫、幸田露伴といった、難読漢字や慣用句をばんばん駆使する大正から昭和までの、なるべくならメジャーでない小説家がいれば教えてください。

A 回答 (3件)

青空文庫もいいですよ。




「かくれんぼ」text by 斎藤緑雨
 秀吉金冠を戴きたりといえども五右衛門四天を着けたりといえども猿か友市生れた時は同じ乳呑児なり太閤たると大盗たると聾が聞かば音は異るまじきも変るは塵の世の虫けらどもが栄枯窮達一度が末代とは阿房陀羅経もまたこれを説けり
 お噺は山村俊雄と申すふところ育ち団十菊五を島原に見た帰り途 飯だけの突合いととある二階へ連れ込まれたがそもそもの端緒 一向だね一ツ献じようとさされたる猪口を イエどうも私はと一言を三言に分けて迷惑ゆえの辞退を、酒席の憲法恥をかかすべからずと強いられて やっと受ける手頭の わけもなく顫え 半ば吸物椀の上へ篠を束ねて降る驟雨 酌する女がオヤ失礼と軽く出るに俊雄はただもじもじと箸も取らずお銚子の代り目と出て行く後影を見澄まし 洗濯はこの間と怪しげなる薄鼠色の栗のきんとんを一ツ頬張ったるが関の山、梯子段を登り来る足音の早いに驚いてあわてて嚥み下し物平を得ざれば胃の腑の必ず鳴るをこらえるもおかしく 同伴の男ははや十二分に参りて元からが不等辺三角形の眼をたるませどうだ山村の好男子 美しいところを御覧に供しようかねと撃て放せと向けたる筒口 俊雄はこのごろ喫み覚えた煙草の煙に紛らかしにっこりと受けたまま返辞なければ往復端書も駄目のことと同伴の男はもどかしがり さてこの土地の奇麗のと言えば、あるある島田には間があれど小春は尤物 介添えは大吉婆呼びにやれと命ずるを まだ来ぬ先から俊雄は卒業証書授与式以来の胸躍らせもしも伽羅の香の間から扇を挙げて麾かるることもあらば返すに駒なきわれは何と答えんかと予審廷へ出る心構え わざと燭台を遠退けて顔を見られぬが一の手と逆茂木製造のほどもなくさらさらと衣の音、それ来たと俊雄はまた顫えて天にも地にも頼みとするは後なる床柱これへ凭れて腕組みするを


いやー、勝手にスペースを補ったんですが、それでもキツいですね。斎藤緑雨の文章は講談調というか落語調というかお経調というか蓮實重彦調というか、「点はあってもマルがないままどこまでも続く」感じ。


「ベースボール」text by 正岡子規
 競漕競馬競走のごときはその方法甚だ簡単にして勝敗は遅速の二に過ぎず。故に傍観者には興少し。球戯はその方法複雑にして変化多きをもって傍観者にも面白く感ぜらる。かつ所作の活溌にして生気あるはこの遊技の特色なり、観者をして覚えず喝采せしむる事多し。但しこの遊びは遊技者に取りても傍観者に取りても多少の危険を免れず。傍観者は攫者の左右または後方にあるを好しとす。
 ベースボールいまだかつて訳語あらず、今ここに掲げたる訳語はわれの創意に係る。訳語妥当ならざるは自らこれを知るといえども匆卒の際改竄するに由なし。君子幸に正を賜え。


文字数にまだ余裕あるらしいので、もうひとつ。


「艶書」text by 泉鏡花
「あゝもし、一寸。」
「は、私……でございますか。」
 電車を赤十字病院下で下りて、向うへ大溝について、岬なりに路を畝つて、あれから病院へ行くのに坂がある。あの坂の上り口の所で、上から來た男が、上つて行く中年増の媚かしいのと行違つて、上と下へ五六歩離れた所で、男が聲を掛けると、其の媚かしいのは直ぐに聞取つて、嬌娜に振返つた。
 兩方の間には、袖を結んで絡ひつくやうに、ほんのりと得ならぬ薫が漾ふ。……をんなは、薄色縮緬の紋着の單羽織を、細り、痩ぎすな撫肩にすらりと着た、肱に掛けて、濃い桔梗色の風呂敷包を一ツ持つた。其の四ツの端を柔かに結んだ中から、大輪の杜若の花の覗くも風情で、緋牡丹も、白百合も、透きつる色を競うて映る。……盛花の籠らしい。いづれ病院へ見舞の品であらう。路をしたうて來た蝶は居ないが、誘ふ袂に色香が時めく。……
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この回答へのお礼

ぱっと読んだだけでも心が奮い立つものばかりですね。とりわけ『かくれんぼ』はまた私好みの文体でいやが上にも勇み立ってきます。さっそく青空文庫に赴きたいと思います。ありがとうございました。

お礼日時:2011/10/03 01:29

明治は対象外なんですか? 回答になってませんが、図書館で明治文学全集とか大正文学全集とかを眺めることをおすすめします。

宝の山に、よだれが出ますよ。
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この回答へのお礼

迂闊でした。明治から昭和の誤りです。

なるほど時代時代の全集ですか。手当たり次第にあたってみれば思わぬ出会いがありそうで面白そうですね。ありがとうございました。

お礼日時:2011/10/02 17:53

小説じゃないですけど、團伊玖磨さんの「パイプのけむり」というエッセイシリーズは難読漢字が多いですよ。


ひらがなで書くと言うことをよしとしていなかった方なので外国地名などもほぼ漢字でした。
文庫だともしかしたら仮名書きになっているかもしれません。
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この回答へのお礼

読書欲がそそられる素敵なタイトルですね。小説に限らず私はエッセイも好きなのでぜひとも読んでみたいと思います。ありがとうございました。

お礼日時:2011/10/02 17:48

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